論証集~商法~商法総則

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論証集  商法総則

会社と誤認させる名称等の使用の禁止

何人も、不正の目的を持って、他の会社であると誤認される虞のある名称・商号を使用してはならない(8Ⅰ)。この規定に違反する名称・商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害される虞のある会社は、その侵害の停止・予防を請求することができる(8Ⅱ)。損害賠償の定めはないが、これは賠償請求を禁じる趣旨ではなく、商号不正使用によって損害を被った者は、民709条によって損害賠償請求することができる。

名板貸責任

9条(自己の称号の使用を他人に許諾した会社の責任) 自己の称号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引した者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

営業の同種性の要否

商号使用の許諾を受けた者が営む業務は商号使用を許諾した会社の業務と同種であることが必要かが問題となる。商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人、会社を表わす名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示し、その信用の標的となる機能を営むものである。かかる社会的機能に照らせば、商号を使用して営業を営むことを他人に許諾した場合に責任を負うのは、特段の事情のないかぎり、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした者の営業と同種の営業であることを要するものと解する。(最高裁s43.6.13)

類推適用の可否

9条を適用する要件は、①外観の存在、②名義使用の許諾という帰責事由の存在、③取引の相手方の誤認である。この②要件である名義使用の許諾は黙示のものでもよく、したがって、他人が自己の名義を使用して営業をしているのを知りながら、これを放置している場合には、黙示の許諾があったものとして、9条が適用ないし類推適用される。では、明示的にも黙示的にも商号自体の使用の許諾はないが、店舗の構造や営業方法について主体の誤認を生じさせた場合9条を適用ないし類推適用することはできるか。9条の趣旨は、商号使用の外観に対する信頼を保護する点にある。そうすると、商号以外の外観に対する信頼は9条の関知するところではなく、一切適用ないし類推適用できないとも思える。しかし、第三者は商号使用のみを根拠に取引主体を誤認するわけではない。そもそも、9条は究極的には取引主体の誤認に対する信頼を保護する点にその趣旨がある。とすれば、商号使用に対する信頼がなくても、取引主体の誤認が生じうる場合には、9条を類推する基礎がある。そこで、店舗の構造や営業方法等も考慮して、自己の商号使用を許諾したのと同視できる程度の外観を作出したものと認められる場合には、9条を類推適用することができると解すべきである。(最高裁H7.11.30)

「取引によって生じた債務」の意義

原則として、事実行為たる不法行為による損害賠償債務は、これに当たらず名義貸与者はこれを負担しない。もっとも、取引行為の外形を持つ不法行為については、第三者の取引安全を図る必要があり、同条の趣旨が妥当するので、上記「債務」に含まれる。

「誤認」の意義(主観的要件)

商取引の大量・迅速性に鑑み、多数生じる利害関係につき取引安全の要請の方が強く、無過失までは要求し得ない。もっとも、重過失は悪意と同視できる。したがって、善意無重過失が必要である。

主任者であることを示す名称の意義

主任者であることをしめす名称とは、社会通念あるいは取引通念により判断されるべきであり、当該営業所の最上位の地位にあることを示すものをいう(東京高裁昭29.9.30)。

「本店又は支店」の意義

ここにいう「本店又は支店」は、商法上の営業所としての実質を有していることを要するか。思うに、13条の趣旨は、本店・支店には事業の主任者を欠くことができないことから、事業の主任者としての外観を有する場合について取引の安全を図る点にある。とすれば、13条はあくまで表見支配人の制度であって表見営業所の制度ではない。また、支店という名称が付されていても、営業所にあたる実質を備えていない場合には、事業の主任者がいるとは限らないのであるから、右の趣旨は妥当しない。さらに、13条の文理上も、「当該本店又は支店に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有する」とされ、その場所が支配人を置こうと思えば置き得る営業所であることを前提としているといえる。したがって、「本店又は支店」とは、商法上の営業所としての実質を備えているもののみをさす。

営業所の実質の判断基準

事業所は、事業活動を統括するために一定の人的・物的基盤を備えた場所的中心である。そして、支店は会社に従属する存在であるから、会社から離れて一定の範囲内で独自に事業活動を決定・施行しうる組織の実体を有していれば、事業所としての実質があるといってよい。
具体的には、①専属の従業員がいること、②その長が部下への指揮権を持つこと、③帳簿が会社と別であること、④事業所名義で銀行に口座を有すること、その他諸般の事情を総合的に考慮して、一般取引通念に従って決定すべきである。

登記の効力 消極的公示原則

登記事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗できない(908Ⅰ前)。かかる効力は、登記事項である事実・法律関係の当事者が、登記事項について善意の第三者に対抗し得ないに過ぎず、第三者の側から登記当事者に対して当該事実・法律関係の存在を主張することはできる(判例)。

登記後の効力 積極的公示原則

登記の後であれば、善意の第三者に対しても、登記事項を対抗することができる(908Ⅰ前反対解釈)。

ア 354条1項との関係
イ 民法上の表見責任との関係
思うに、登記により第三者の悪意が擬制されることに鑑みれば、表見代理規定たる民112条の適用は排除されるべきである。
したがって、支配人が解任され、その旨の登記がなされた後は、表見代理成立の余地はない。

ウ 正当な事由(908Ⅰ後)
登記を知ろうとしても知ることができない客観的障害がある場合をいう。
例えば、災害による交通断絶など。
病気や長期旅行などの主観的事由は含まれない。

不実登記

効果
故意・過失によって不実登記をした者は、その事項が不実であることを持って善意の第三者に対抗できない(908Ⅱ)。権利外観法理ないしは禁反言に基づいて、登記に一種の公信力を認めた。

908条1項と2項の関係
908条1項は、登記された事実が現実に存在することを前提としている。したがって、908条1項は、基礎たる事実が存しなければ登記がなされても何らの効力を生じない点で、いわゆる確保的効力又は宣言的効力を有するに過ぎない。他方、908条2項は、登記すべき事項について不実の登記がなされている場合において、外観への信頼を保護するために登記に一種の公信力を認めたものである。

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