論証集~会社法総論1~目的・法人格

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論証集  会社法

一人会社の社団性・法人の目的・法人格

一人会社の社団性

一人会社が認められるか。会社は社団性が要求され、複数人の結合体であることが必要であるとも思えるため問題となる。
思うに、一人会社であっても、社員が持分を譲渡することによって複数になる可能性がある、すなわち、潜在的社団性が認められる。
また、社員が一人になることが解散事由とされていない(471)。したがって、一人会社も認められる。

目的の範囲内(民法34条)の意義

会社は、その目的を定款に記載又は記録し、かつ、登記をしなければならないところ(27①、576Ⅰ①、911Ⅲ①、912①、913①、914①)、会社は「法人」(民法34条)であるから、定款で定められた目的の範囲内においてのみ権利を有し、義務を負う。
そこで、「目的の範囲」をいかに決すべきかが問題となる。
同条は、法人の権利能力の範囲を定款所定の目的に限定することで、一定目的の下に集まった構成員の利益を保護するための規定である。
また、文言上も「権利を有し、義務を負う」としていることから、法人の権利能力を制限する規定である。
とすれば、定款の目的外の行為であれば、その行為は絶対的に無効であり、会社は追認することはできない。
もっとも、目的の範囲を定款記載の字句通りに判断すると狭きに失し、会社が目的自体を円滑・効率的に達成することができなくなる虞がある。
そこで、目的の範囲内の行為とは、定款記載の目的自体のみならず、その目的達成に直接又は間接に必要、有益なものまで含む。
そして、取引安全の見地から、目的の範囲内か否かは、行為の外形から客観的に判断すべきである。

法人格否認の法理

(1) 意義
独立の法人格を持っている会社においてもその形式的独立性を貫くことが正義公平に反すると認められる場合に、特定事案の解決のために会社の独立性を否定して、会社とその背後にある株主・社員とを同一視する法理
(2) 要件
① 濫用事例
法人格の濫用とは、法人格が株主・社員により意のままに道具として支配されていること(支配の要件)に加えて、支配者に違法又は不当の目的(目的の要件)がある場合をいう。
② 形骸化事例
法人格の形骸化とは、法人格とは名ばかりで、会社が実質的には株主・社員の個人営業である状態をいう。
この場合には、支配要件の他に、①会社と社員個人の業務・財産の混同、②会計区分の欠如、③会社法上の運営に関する法定手続の不遵守(株主総会・取締役会の不開催)が必要とされる(裁判例)。

*429条が明文で要件が定められている制度なのに対し、法人格否認の法理は民1条2・3項を根拠とする一般条項であるから、法人格否認の法理は、429条等明文規定を適用するだけでは妥当な解決が図られない場合に限って適用されるべき。

「やむを得ない事由」(606条3項)の意義

持分会社の社員について退社を認めた趣旨は、第1に、持分会社が社員相互の人的信頼関係に依拠して成立する企業形態であるという点にある。第2に、持分会社においてはとりわけ無限責任社員については、社員の負担する責任が極めて大きいから、その意思に反して会社に拘束するのは適当でないという点にある。第3に、社員に投下資本回収の手段を与える点にある。
もっとも、投下資本回収のためには、事業年度末における予告退社の方法を採ることが可能であるから、重要度は低い。
そうすると、「やむを得ない事由」に該当するかは、社員相互の不和など、退社を申出ている社員を会社に拘束することが適切ではない事情がある場合をいうと解する。
この場合、事業が継続することを期待して投資をした他方の社員の利益等を考量するべきである。

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