論証集~会社法総論2~設立

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論証集  会社法

設立

設立中の会社の名のもと行った行為の効果帰属と発起人の権限の範囲

設立中の会社は、設立登記がなされていないため、権利能力を有しない。それ故、発起人が会社の設立のために取得又は負担した権利義務は、形式的には発起人に帰属する。しかし、会社は設立前においても、定款が作成され、公証人の認証があり、各発起人が1株以上を引き受けた場合には、会社の基礎となる人的・物的構成要素が確定するので、設立中の会社として実在しており、それが漸次成長発展し、法人格を付与(49条)されて、完全な会社となるのであるから、設立中の会社と設立後の会社は実質的には同一の存在といえる。
したがって、発起人が設立中の会社の執行機関としてなした行為の効果は、形式的には発起人に帰属するも、実質的には設立中の会社に帰属し、それが会社の成立と同時に設立後の会社に帰属すると解する。したがって、発起人が設立中の会社の執行機関として、その権限の範囲内で行った行為の効果は当然に成立後の会社に帰属すると解する(同一性説・通説)。
では、かかる行為は発起人の権限の範囲内といえるか。この点、そもそも株式会社の目的は一定の営業をなすことにあり、会社の設立とは、営業をなしうる状態の会社を創設することを指すことを理由に、設立中の会社の実質的権利能力および発起人の権限は会社の設立に法律上、経済上必要な行為のみならず、営業をなし得るための開業準備行為にも及ぶとする見解がある。 しかし、設立中の会社はあくまで設立を目的としてなされているのであって、開業準備行為まで発起人の権限の範囲内とする必要性はない。
また、株式会社の厳格な設立規制の立法趣旨は、発起人の権限濫用による成立後の会社の債務負担の増大を防止する点にあるので、開業準備行為を無制限に発起人の権限とすべきではない。
したがって、発起人の権限の範囲は、設立に法律上、経済上必要な行為に限り開業準備行為を含まないと解する(判例に同旨)。もっとも、財産引受は特に必要性が大きいので、原始定款の記載と裁判所の選任した検査役の調査義務(33条)という厳格な要件のもとでこれを認めている(28条2号)。

成立後の会社による追認の可否

財産的基礎の確立のため、開業準備行為を発起人の権限外にした趣旨を貫くべく、成立後の会社による追認を認めるべきではないと考える。すなわち、定款に記載がない等法定要件を充足しない財産引受は、株主・会社債権者保護の見地から絶対的無効である(絶対的無効)。

無効の主張権者

譲受会社が自らその無効を主張することができるか。原則として、絶対的無効である以上株主・債権者等の会社の利害関係人の他譲受会社も無効を主張することができる。なぜなら、譲受会社が主張することができないとすると、利害関係人が無効を主張するまで本件行為を有効なものとして扱うことを余儀なくされ著しく不安定な立場に置かれることになるからである。もっとも、①債務引受や契約上の地位の移転が認定できる場合又は②禁反言に触れる場合や新たな契約が成立したとの信頼を抱くのもやむを得ないと認められる等、契約の相手方が無効主張をすること自体が信義則に反するといえるような特段の事情がある場合には、無効主張は認められず、その反射的効果として例外的に会社に効果帰属すると解する。

発起人に対する責任追及

開業準備行為にあたり発起人の権限外であるとされた場合、会社が設立されたとしても会社に当然に帰属させられるものではない。それ故、実質的には代理すべき本人が存在しないので民法117条を直接適用することはできない。しかし、117条の趣旨は専ら代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護するところにあるので、これと類似の関係にある本件でも117条の類推適用により発起人の責任を追及することが可能と解する。もっとも、相手方が、当該行為者が発起人であることを知っていたか知り得べき場合には、相手方は開業準備行為が発起人の権限外であることを知っていたと解すべきであり、それ故、無権代理人としての責任を追及することはできない(民117Ⅱ類推)。これに対して、発起人が会社はすでに成立しているかのように代表取締役名義で開業準備行為をなした場合には、相手方の信頼を保護するため発起人に無権代理人と同様の責任を認めてよい。以上に加え、会社の設立過程では発起人が複数の場合には発起人間に発起人組合という民法上の組合関係が存在する。すなわち、発起人は設立手続に入る前に会社の設立を目的とする組合契約(民法667条以下)を結び、その契約の履行として会社設立のための行為以外であっても組合契約があれば、開業準備行為も行うことができる。よって、この場合は発起人組合に対して債務を履行するよう請求することができる。また、組合員に対して、直接個人的責任を追及することもできる(民法675条)。なお、第三者が業務執行組合員として当該行為を行ったが、実際には代理権の範囲外であった場合であっても、取引の安全を図るため、第三者がこの点につき善意・無過失であれば同様に発起人組合に効果帰属すると解する(判例)。

設立費用の帰属(未払債務の帰属先、発起人の責任)

発起人が会社成立までに第三者に対し設立費用を支払ってなかった場合、成立した会社がその債務を負担するか。この点、判例は、設立に要する費用に関する債務は、定款に記載され、検査役の調査・創立総会の承認があった範囲内で成立後の会社に帰属するとする。しかし、かように解すると、成立後の会社に帰属すべき債務の範囲が、定款の記載、創立総会の承認という会社の内部的事情によって左右されることを認めることなり、発起人と取引をする相手方の地位を著しく不安定ならしめることになり妥当でない。また、発起人が多数の契約をなし、その債務総額が法定手続を経た設立費用の額を超えるという場合には、どの債務がいかなる範囲において会社に帰属するか不明であり妥当でない。そもそも発起人の権限は、会社設立のために必要な行為に及ぶので、設立に必要な取引行為に基づく債務は実質的には設立中の会社に帰属する。そして、設立中の会社は、実質的には成立後の会社と同一といえる。したがって、会社成立と同時に当然に成立後の会社に全額帰属する。このように解しても、定款記載の範囲を超える額について会社から発起人への求償を認めることで、可及的に会社の財産的基礎が害されることを防ぐことできるので、不都合ではない。

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