論証集~会社法総論3~株主・株式

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論証集  会社法

株主・株式

株主優待制度と株主平等原則

まず、事業上の給付は、事業上のサービス・宣伝の一環に過ぎず、株主の資格とは無関係とも思えるが、かかる事業上の給付も株主としての資格を有するがゆえに受けられるものであり、株主としての資格に基づく法律関係といえる。そうすると、株主優待は「内容及び数」に応じたものではないため直ちに株主平等原則に反するとも思える。しかし、株主平等原則の趣旨は、支配株主の資本多数決の濫用による差別的取扱いから一般株主及び少数株主の保護を図ることにあり、特別の規定がある場合以外、合理的な範囲において株主の別異取扱いも許されると解する。具体的には、①株式数に応じた比例的取扱いとの隔たりが軽微であり、かつ②個人株主の増大、顧客の増大等の会社経営上の合理的必要性がある場合には、③株主に対する手続、開示の相当性が認められる限り実質的に株主平等原則に反しないと解する。

株主優待と現物配当規制

株主優待制度に基づき株主に電子マネー等の交付をすることは、現物配当規制(454条4項、309条2項10号)に違反しないか。たしかに、株主優待制度は安定株主や個人株主を形成するのに一定の合理性がある。しかし、かかる制度によって現物配当規制を潜脱することは許されない。もっとも、株主に提供される財産が、実質的に配当の性格を有するか否かを形式的・画一的に判断することはできない。そこで、現物配当か株主優待制度に基づく財産の交付か否かの峻別は、当該会社の具体的状況において、当該株主優待のなされる趣旨・目的、優待の内容・方法・効果などを総合的に考慮して決するべきである。

特定時以降の株主

特定時以降に株式を取得した株主についてのみ剰余金配当を別異に扱うことは、株主平等原則に反しないか。この点、剰余金配当にあたっては、株主の有する株式数に応じて配当財産を割り当てるものでなければならない(454Ⅲ)。したがって、定款で、同種の株式について、一定時点の前後で別異取り扱いを定めることは許されない。

他人名義による株式の引受けと株主名簿を信頼して取引した者の保護

株式の引受けは、引受・払込という出捐があって初めて取得できるものである。そこで、株式の引受人が誰であるかは、経済的出捐という客観的な基準によって決すべきである。よって、他人名義で株式引受けがなされた場合、株主は、名義借用者となる。そうだとしても、株主名簿を信じて、この者と取引した者は保護されないか。この点については、株主名簿の記載には公信力は存在しない。よって、株主名簿に記載された者が無権利者であれば、この者から株式譲渡を受けた者もまた無権利者となるのが原則である。もっとも、常に株式譲受人が保護されないとすると、取引の安全と信頼を著しく害する。そこで、民法94条2項類推適用により譲受人は保護されると解する。
なお、名義借用者が株主になるとしても、この者が権利行使するにあたっては、名義書換をする必要があると解する。というのも、133条1項はその文言上は株式譲渡についての規定であるが、株主名簿の効力一般について定めたものであり、およそ会社に対し株主たることを主張する全ての場合についての対抗要件を定めたものと解すべきだからである。また、実質的にみても、集団的法律関係の画一的処理という株主名簿の制度趣旨は、名義株の場合にも同様に妥当するといえるからである。

従業員持株制度自体の有効性

そもそも従業員持株制度は、会社に対して劣後的地位にある従業員の福祉向上のために認められている制度であり、会社の安定株主工作といった都合で作られた疑いがあるような場合には、会社(強者)と株主(弱者)間の契約は不法契約として公序良俗に反し(民90条)無効になる。しかし、あくまで従業員は自由な意思で制度趣旨を了解して株主になり、強制されたものではない場合には、このような制度自体はなお有効と解する(東京地判平成10・8・31)。

従業員持株制度の契約内容の有効性

従業員持株会では通常、①譲渡先の特定、②退職による譲渡の強制(譲渡時点の特定)、③譲渡対価の固定、という127条を制限すると思われる規定が存在することから、かかる3つの問題点につき順に検討する。

①譲渡先の特定
会社法が、譲渡先を選べる自由よりも閉鎖性維持の要請を優先的に扱っている(107条1項、139条1項但書、140条4項、5項等)ことから、譲渡先を特定することは有効であると解される。もっとも、買受人指定権の行使期間が不当に長期にわたる場合(40日を基準・会145条2号参照)その契約はもはや相手方選択の自由を不当に制限することとなるから無効であると解する。

②退職による譲渡の強制
退職によって株主が株式売渡義務を負う旨の規定の効力が問題となる。
非公開会社の場合、退職による売渡しの強制は投下資本回収の機会を提供する意味もあり、必ずしも株主側の利益には反しないのであるから有効であると解する。

③譲渡対価の固定
では、譲渡対価の固定が許されるか。
この点、譲渡価額があらかじめ固定されていても、譲渡の時点における株式の価値と合理的な関連性を有するものであれば、株主に不利益を与えないから有効である。
もっとも、株主が株式を取得したときの価格を、そのまま譲渡価値として用いる約定は、キャピタル・ゲインの取得を完全に否定する。これでは実質的な投下資本の回収とは言えず、配当性向が100%近いというような特別な場合を別として、価格の決定方法に合理性があるとはいえない。また、価額が従業員の取得した株式の価額と比べて極めて低額である場合には合理性は認められない。

よって、かかる場合には無効と解する。

善意の株主の462条1項の責任

善意の株主にも462条1項の責任が発生するか、善意の株主への求償を制限した463条1項との関係で問題となる。この点、善意の株主に対する462条1項の責任を認めると、463条1項が無意味になることを理由にこれを否定する見解がある。しかし、463条1項は、自ら違法行為をした業務執行者らが善意の株主に求償するのは不当であるというクリーンハンドの原則から求償を制限しているにとどまり、株主が会社に対しても責任を負わない旨を定めたものではない。そもそも、462条1項は、文言上、善意か悪意かで責任の有無を区別していない。
また、株主には462条2項に対応する免責規定がないことからすると、その反対解釈として株主の1項の責任は、善意・悪意や過失の有無を問わず発生すると解するのが自然である。実質的にみても、財源規制に反して配当を受け取った株主は、適法な業務執行がされていれば得られなかったはずの利得を得ているのであるから、会社債権者の利益を犠牲にしてまで保護する必要はない。よって、善意の株主も462条1項の責任を負うと解すべきである。

取得規制違反

この点、株主間の公平の見地から、絶対的無効とすべきとも思える。しかし、決議の有無について善意の株主の取引安全にも配慮する必要がある。そこで、両利益の調和の見地から、原則として無効であるが、他人名義で取得した場合は譲渡人が悪意でない限り有効であると解する。そして、無効の主張は本来何人からも主張できるはずであるが、自己株式の取得規制の立法趣旨からみて、会社法の規律によって保護されるべき者は、会社、会社債権者、一般株主などであって、内部者取引や相場操縦の場合を除き、譲渡人の側に無効の主張を認めるべきではない。なぜならば、譲渡人は株式譲渡によって自己の欲する結果を得たはずであり、その後の株価上昇を利用する投機の機会を譲渡人に与える必要はないからである。

財源規制違反

(有効説)
この点、①責任の範囲が交付額全額とされていることからは無効と帰結すべきであること、②法令違反は無効と解するのが適切であることを理由として、財源規制に違反してなされた自己株式の取得や現物配当は無効であるとする見解がある。しかし、無効説に立つと、支払義務を履行した株主の、会社への株式の不当利得返還請求権と、会社の有する株主への株式取得対価相当額の不当利得返還請求権及び462条1項に基づく請求権が同時履行の関係に立つことになる(民法533条類推適用)結果、株主が、会社に譲渡した株式の返還があるまで、金銭の返還を拒否できることになり、特に会社債権者が株主の責任を追及することが極めて困難になり不都合である。そもそも461条1項、463条1項においては、合同会社における利益配当制限を規定した628条の文言(=「利益の配当をすることができない」)とは異なり、「効力を生じる」「効力を生じた日」という文言を用いており、会社法は財源規制に違反した自己株式の取得自体は有効であることを前提としていると考えられる。
したがって、財源規制違反の自己株式取得も有効であると解する。この結果、支払義務を履行した株主は、民法422条の類推適用により、会社に譲渡した株式の返還を請求することができる。

(無効説)
この点、463条1項が「効力を生じた日」と規定していること等を理由に、財源規制違反の自己株式の取得も有効であるとする見解がある。
しかし、463条1項のいう「効力を生じた日」とは、「その行為が違法でなかったとすれば効力を生じたはずの日」という意味であり、株主の善意・悪意が判定される基準時を定めたにすぎない。そもそも、責任の範囲が交付額全額とされていることからすれば、財源規制違反の自己株式の取得は全て無効とするのが素直である。また、財源規制に違反する配当決議は無効であり(830条2項)、無効な総会決議に基づく配当はやはり無効と解するのが適切である。加えて、不当利得返還請求権の特則たる462条1項は、会社債権者の権利を強化する観点から、同時履行の抗弁権をも排除する規定と解すべきであるから、有効説のいう不都合な事態は生じない。よって、財源規制に違反してなされた自己株式取得は無効と解すべきである。
では、無効と解した場合に、株主に交付されたのが現物であった場合、現物の返還義務を負うか。この点、交付された現物の価格が後に値上がりしたときは、会社は現物の返還を請求し、逆に値下がりしたときは、462条1項により現物配当時の時価相当額の請求をすることができるので、会社に有利であることを理由にこれを肯定する見解がある。しかし、会社が株主のリスクで投機をすることを認めることになるが、善意の株主にまでそのようなリスクを負わせるのは妥当でない。そもそも、462条1項は、「帳簿価額に相当する金銭を支払う義務」を株主に負わせているのであって、これに現物返還義務を読み込むことは困難である。そこで、462条1項は不当利得の特則と解して、株主は常に同項の金銭支払義務のみを負担すると解すべきである。

社長による自己株式取得の可否

会社法963条5項1号(「何人の名義をもってするかを問わず」)による罰則の存在や自己株式の取得の弊害を重視すれば、自己株式の潜脱にあたると評価できる場合には、自己株式の取得に該当し、規制に服すると解する。

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