論証集~刑法各論3~脅迫・強要・住居侵入

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論証集  刑法各論

脅迫・強要罪

●脅迫・強要罪
脅迫の概念
一般人をして畏怖せしめるに足る害悪の告知をいう。認識を要するが、実際に畏怖させることは必要ではない。
なお、ここでの一般人は、平均人という意味ではなく、実際の被害者と同じような属性(性別、年齢、性格)を有した人間として考えるべきであろう。

保護法益
脅迫罪の保護法益は何か。脅迫は何らかの目的を有するのが通常であるが、その目的は明示されない場合も多い。
かかる現実に鑑み、要求行為の手段の点のみを独立して犯罪類型化し、合わせて強要罪、恐喝罪等が立証できなかった場合のいわば受皿として、立証の軽減を図る規定が脅迫罪であると解する。よって、脅迫罪の保護法益は意思決定の自由 [16]であると考える。

害悪の内容
加害内容は、行為者が直接・間接に害悪が発生することを左右しうる関係にあることが必要であるが、告知される害悪の内容が犯罪であることまで必要か。この点、脅迫罪の保護法益は意思決定の自由にある。とすれば、害悪の内容が犯罪であるか否かは本質的な問題ではなく、適法行為の告知であっても、意思決定の自由が侵害される限り、脅迫罪の成立を認めるべきである。もっとも、権利実行の正当な範囲にとどまっていれば違法性が阻却される。

●法人に対する脅迫罪の成否
法人は擬制的存在であり、法人に意思決定の自由は観念できないと思えるため問題となる。
この点、脅迫罪は意思決定の自由に対する危険犯であるところ、法人は社会的実在であり機関を媒介して意思決定をなしうるのであるから、その意思決定の自由は害されうる。そこで、法人に対しても脅迫罪は成立すると解する。

住居侵入罪

●住居侵入罪
保護法益
「侵入」(130)の意義が住居侵入罪の保護法益と関連して問題となる。この点、住居の事実上の平穏とする見解がある。しかし、住居侵入罪は個人的法益に対する罪であることからすれば、個人の意思と無関係に犯罪の成立が決定されるのは不当であろう。そこで、住居侵入罪の保護法益は住居に誰を立ち入らせるかを決定する居住者の住居権と解する。とすれば、「侵入」とは住居権者の意思に反した立ち入りでありと考える。なお、かく解すると公共的建物への犯罪目的の侵入について処罰範囲が拡大する虞があるが、事前の包括的同意を認定して、限定を加えるべきである。*最決平19・7・2

包括的同意
一般に営業中の飲食店・店舗、ホテルのロビーなど客の来集が予想されている場所とか、一般公衆に解放されている官公署の庁内・構内等においては、通常予想される目的の立入りである限り、居住者等の包括的承諾あるとみてよい。しかし、これらの場所についても、違法な目的で、あるいは社会通念上是認されないような態様で立ち入るときは本罪を構成する。

一部居住者の同意
住居については、原則として、居住者の身勝手な意思も刑法的保護に値すると考えられるが、居住者が複数存在する場合には、他の居住者の居住使用の利益との関係で、立入り拒否の意思が制限される場合があることを認めざるを得ない。
そこで、具体的事例ごとに、一部の居住権者の同意に基づいて立入りを認めることに、住居権の行使として同程度の利益が存在し、他方で、立入りに反対した者の住居権が実質的にどの程度侵害されたのかを考え、前者が後者に優越する場合には、犯罪の成立を否定すべきであろう。

●囲繞地の住居該当性
住居の周りの囲繞地は、「住居」に含まれるか。たしかに、130条の法文からは、「住居」が囲繞地を含むとすることに疑問もある。 しかし、住居侵入罪の保護法益は住居権にあるから、住居と不可分の囲繞地の管理支配も保護すべきである。よって、住居の囲繞地も住居の一部として、「住居」に含まれる。

●囲障設備の住居該当性
住居の周りの塀等の囲障設備が「住居」に含まれるかが問題となる。「住居」とは、人の起臥寝食に使用される場所をいうところ、単なる工作物であっても、人の起臥寝食に使用される建物とその敷地を他から明確に画する(境界明示機能)とともに、外部からの干渉を排除する作用(干渉排除機能)を果たしており、かかる建物の利用のために供されている場合には、住居の一部を構成するものとして、「住居」に含まれる。※最判平21.7.13

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