論証集~刑法各論5~信用及び業務に対する罪・危険運転致死傷罪

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論証集  刑法各論

信用及び業務に対する罪・危険運転致死傷罪

●信用及び業務に対する罪
信用毀損罪(233前)
「虚偽の風説を流布する」の意義
事実に反する他人の噂を不特定又は多数人に伝えること。

「人の信用」の意義
この点、支払能力および支払意思に関する信用に限定する見解もある。しかし、信用毀損罪は経済的側面における人の社会的評価を保護するものであり、そのような限定を加えるべきではない。そこで、「人の信用」とは、商品の品質等、広く経済的側面における社会的評価を言うものと解する。*最判平15・3・11販売される商品の品質に対する社会的な信頼は、刑法233条に言う「信用」に含まれる。

業務妨害罪(233後)
「偽計」の意義
人を欺罔し、または人の不知錯誤を利用すること。*最決平19・7・2

「業務を妨害」の意義
業務の執行自体を妨害する場合に限らず、広く業務の経営を阻害する一切の行為を含む。業務妨害の結果を発生するおそれのある行為をすれば足り、現実にその結果の発生したことを要しないとするのが判例 [28]・通説。

公務と業務
「業務」(233)に公務が含まれるか。この点、強制力を行使する権力的公務は、自力で抵抗を排除しうるから、業務妨害罪により保護する必要はない。逮捕行為に対する、暴行・脅迫に至らない程度の抗議などを不可罰とするために、公務執行妨害罪(95)でのみ保護されれば足りる。他方、強制力を行使しない公務は、それが望めないので、業務妨害罪で保護する必要がある。よって、強制力を伴う権力的公務を除いて、「公務」も「業務」に含まれると解する。

威力妨害罪(234)
「威力を用い」るの意義
人の自由意思を制圧するに足りる勢力を用いること。

●危険運転致死傷罪の要件
赤色信号の確定的な認識があるわけではない場合にも「赤色信号を殊更に無視」したといえるか。同文言の意義が問題となる。
赤色信号を「殊更に無視し」たとは、およそ赤色信号に従う意思のないものをいい、赤色信号であることの確定的認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為もこれに含まれる。
では、時速20キロメートルというスピードが「重大な交通の危険を生じさせる速度」にあたるか。
危険速度の要件が設けられた趣旨は、赤色信号を殊更に無視する場合であっても、運転者において、交差道路等を通行する人や車を発見したときに重大な事故となるような衝突を回避することが可能な速度まで減速して進行する場合は、その行為自体において、重大な事故を生じさせる危険性が高い行為であるとは認められないため、このような場合を処罰対象から除外することになる。
とすれば、危険速度とは、赤色信号を殊更に無視した車両が他の車両と衝突すれば、重大な事故を惹起することになると一般的に認められる速度、あるいは、重大な事故を回避することが困難であると一般的に認められる速度を意味する。

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