論証集~民法総則1~信義則・権利濫用・権利能力・失踪宣告

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論証集 民法 総則

信義則・権利濫用・権利能力・失踪宣告

●信義則(1Ⅱ)

信義則の具体化場面
1 権利行使・義務履行の際の行動準則としての信義則
2 矛盾行為禁止の原則
3 クリーンハンズの原則

●権利濫用(1Ⅲ)

具体的な場面で権利の行使が濫用といえるかどうかについては、権利行使の際の加害目的や加害の意図など権利者の主観面を考慮に入れるだけではなく、権利行使が濫用とされることにより権利者が受ける不利益と権利行使が阻止されることにより保護されると利益を衡量したうえで、判断される(判例 )。また、権利濫用か否かの判断にあたっては、公共の利益も考慮される(判例)。

●権利能力

私権について権利・義務の帰属主体となる一般的資格

1 権利能力の始期⇒出生
権利能力の終期⇒死亡、同時死亡の推定

2 胎児の権利能力の特例
ⅰ 相続の場(886)
ⅱ 損害賠償請求権(721)
ⅲ 遺贈(965による886の準用)

●胎児の権利能力

「胎児は既に生まれたものとみなす」(721等)の意義
この点、権利能力は出生によって得られるのが原則(3Ⅰ)であるから、胎児に権利能力はなく、生きて生まれたことを停止条件として、問題発生時に遡及して権利能力を取得すべきと解する(停止条件説)。具体的帰結として、胎児に法定代理人をつけることはできないし、相続放棄などの期間制限は出生時から始まる。

●制限行為能力と意思能力

1 制限行為能力者制度の趣旨
権利の取得及び義務の負担は、当事者の意思に基づいてのみ行われるという私的自治の原則のもと、私法上の法律行為は意思能力がなければ有効になすことはできない。しかし、実際の取引において、事後的に、本人が意思能力が欠けたことを証明するのは困難であるし、また、取引の相手方に不測の損害をもたらす。そこで、民法は正常かつ完成された精神状態を持ち得ないことが類型的に予測されるものを、画一的に制限行為能力者として扱い、これを公示して保護し、併せて取引の相手方の保護を図ったのである。
⇒ 類型的に判断能力が不十分と考えられる者の行為能力を制限して保護し、併せて取引の安全をも保護するもの。
⇒ なお、行為無能力者は、責任能力があっても、取引的不法行為の損害賠償責任を負わないと解される。

●成年後見制度の意義

本人の保護という行為能力制度の目的達成を図りつつ、自己決定の尊重・本人の残存能力の活用・ノーマライゼイションといった新しい理念の達成を目的とする。

●制限能力と意思無能力の競合

制限能力者よりも意思無能力者の方が私的自治の原則の下、より保護に値する。したがって、制限能力制度は意思無能力の特則とは解されないから、制限能力取消および意思無能力無効共に主張できると解する(二重効肯定説)。

●制限能力者の詐術-黙秘が当たるか

「詐術」(21)の意義が明文上明らかでなく問題となる。この点、単なる黙秘は原則として「詐術」とはいえない。しかし、それが無能力者の他の言動とあいまって相手方を誤信させ、または誤信を強めた場合は、そのような制限能力者を保護する必要はないから、「詐術」にあたると解する(判例)。

●失踪宣告 32条1項後段「善意」の意義

善意が要求されるのは相手方のみか、それとも双方善意を要するのか。この点、失踪者は失踪宣告の取消をなしたにもかかわらず、本来の権利状態を回復できないという不利益を被る。そこで、失踪者の静的安全の保護と取引安全の調和の観点から、双方善意であることを要すると解する(判例)。

●残された配偶者が再婚した場合の前婚・後婚の効力

婚姻のような身分行為も「行為」(32Ⅰ但)にあたるか。思うに、条文上単に「行為」と定められているのであるから、取引行為のみならず身分行為も含むと解するのが素直である。
そこで、当事者双方が善意ならば後婚は有効であり、これと両立しない前婚は復活しないものと解される。他方、双方善意でない場合前婚は復活し重婚となるので、前婚にとって離婚原因(770Ⅰ⑤)、後婚にとって取消原因(744、732)となる。

●転得者と32条1項

取得者は善意、転得者は悪意の場合32条1項が適用されるか。この点、法律関係の早期安定および簡明な処理が実現できることから、絶対的構成をとるべきである。よって、一度善意者が出現すれば32条1項の適用はないと解する。

●失踪期間経過後、宣告前の利害関係人と32条1項但書

失踪期間経過後、宣告前の利害関係人に32条1項但書が適用されるのだろうか。確かに、条文上は失踪宣告後の利害関係人に限定している。しかし、普通失踪の場合、宣告の効果は失踪期間経過後から生じるのであり(31前)宣告の前後で第三者の保護の必要性は変わらない。よって、32条1項但書の適用があると解する。

●32条2項

(1) 「財産を得た者」(32Ⅱ)の意義が明文上明らかでなく問題となる。
32条1項は失踪宣告後になされた「行為」について規定し、2項は単に「失踪宣告により財産を得た」と規定している。とすれば、「財産を得た者」とは失踪宣告後、行為を要することなく、失踪宣告を直接の原因として財産を取得した者と解する。
(2) 「財産を得た者」の主観的要件
「財産を得た者」の主観的要件は何か。この点、同条の返還義務の性質は不当利得返還(703、704)の法理である。とすれば、「現存利益」の返還で足りるのは善意者のみと解する(判例)。

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