論証集~民法総則2~法人

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論証集 民法 総則

法人

法人―権利能力なき社団

1 成立要件
ⅰ 団体としての組織
ⅱ 多数決による意思決定
ⅲ 構成員が変動しても団体が存続
ⅳ 代表方法・総会運営・財産管理など団体としての主要な点が確定している

2 財産の帰属
権利能力なき社団においてその財産(債務)はどのように帰属するのだろうか。この点、権利能力なき社団とは社団としての実体を有しながら法律上権利義務の主体となりえないものを指す。とすれば、その団体としての性質に鑑み、可能な限り法人と同様に扱うべきである。具体的には、権利能力なき社団の財産(債務)は全構成員に総有的に帰属すると解する(判例)。

・ 構成員の持分請求権は否定される。

・ 構成員(代表者)は債務につき個人責任を負うか。
権利能力なき社団の代表者は、本来構成員各自の名を挙げ、その代理たることを示すべきであるところを、便宜上「代表者」という名称を冠して契約しているに過ぎない。
とすれば、代表者は自ら個人責任まで負う意図は有していない。したがって、代表者は、完全に個人の名で取引したのでない限り、権利能力なき社団の代表者として契約した債務は、社団の財産に総有的に帰属する。かく解したとしても、相手方は、代表者を保証人にとるなどの自衛手段をとることができたのであり、不都合はない。

・ 法人格なき社団名義の登記は認められるか。
権利能力なき社団自身は、私法上の権利義務の主体となりえない。また、登記官は形式的審査権しか有さず、権利能力なき社団名義の登記を認めると、虚無人名義の登記を許容することになり、強制執行を免脱するために利用される虞がある。したがって、権利能力なき社団は、登記申請人になりえず、社団名義ないし「○○団体 代表者●●」といったような肩書つきの登記も認められない。それゆえ、代表者の個人名義ないし構成員全員の共有名義しか許されない。

3権利能力なき社団の扱い
権利能力なき社団とは社団としての実体を有しながら法律上権利義務の主体となりえないものを指す。とすれば、その団体としての性質に鑑み、取引安全を害しない限りできるだけ法人と同様に扱うすなわち法人の規定を類推適用すべきである。

法人の行為

「目的の範囲内」(43)は何を制限するものか
43条は何を制限したものか、明文上明らかでなく問題となる。法人は一定の目的のための存在であり、目的の範囲内で権利能力を認めれば足りる。よって、「目的」は法人の権利能力を制限したものであり、範囲外の行為は無効となると解する(判例)。

「目的の範囲内」か否かの判断基準
「目的の範囲内」か否かをいかに判断すべきか。この点、目的の範囲外の行為は無効となると解すべきであるから、狭く解することは取引安全を害する。そこで、定款所定の目的遂行に直接または間接に必要な行為をすべて含むと解する。また、その判断においては、主観によって左右されるとすると、取引相手方保護を図れないから、行為の客観的性質に即し抽象的に判断すべきと解する(判例)。

協同組合の員外貸付は目的の範囲外となる。員外貸付により組合員が借りにくくなるし、税法上優遇されている協同組合が金融行為をすると一般の金融機関が害されるからである。この場合には不当利得返還請求が可能となる。なお、債権の担保するために設定された抵当権は、その設定契約の趣旨(主たる債務者が負う返還債務を担保する意図の下になされ、また、経済的実質において同質である)から、その不当利得返還請求権を担保するものとして存続すると解すべきであろう。判例は信義則を用いる。

法人の不法行為

法人の不法行為(44Ⅰ)の意義が法人の本質と関連して問題となる。
法人の社会的活動の実態に鑑み、法人は社会的実在と考えるべきである(法人実在説)。とすれば、法人自身の行為が認められるのであるから、44条1項は法人自身の不法行為責任と解する。⇒法人が理事の選任・監督に注意を尽くしていたことを立証しても、免責されないとの帰結になる。

法人の不法行為と理事の責任

法人が不法行為責任を負う場合、理事も不法行為責任を負うか。
理事は、法人の機関と個人との二面性を有する。とすれば、法人が不法行為責任を負うとしても、理事が不法行為責任を免れる理由はない。よって、理事も不法行為責任を負うと解する。なお、法人の不法行為責任との関係は、不真正連帯債務となる。

理事に対する求償の可否

法人が不法行為責任に基づく損害賠償債務を履行した場合、法人は理事に求償できるか。
法人の損害賠償債務と、理事の損害賠償債務は、被害者保護の観点より、435条以下の規定の適用のない連帯債務、いわゆる不真正連帯債務になるものと解される。とすれば、442条も適用されない以上、求償はなしえないとも思える。しかし、それでは公平ではない。そこで、「法律上の原因」(703)を実質的・相対的に解することにより、不当利得返還請求による求償を認めるべきと解する。

「職務を行うについて」の判断基準

「職務を行うについて」(44Ⅰ)の判断基準が明文上明らかでなく問題となる。この点、被害者保護のため、「職務を行うについて」は、行為の外形から客観的に判断し、また広く解されるべきである。そこで、「職務を行うについて」とは、外形上代表機関の職務に属する行為、あるいは、外形上職務行為と適当な牽連関係にたつと見られる行為と解する。とはいえ、当該行為が理事の職務行為に属さないことにつき、被害者に悪意・重過失がある場合には、被害者保護の要請は妥当しないから、法人は責任を負わないと解すべきである(判例)。

54条 「善意」の意義

「善意」(54)の意義が明文上明らかでなく問題となる。
思うに、法人の理事は包括的代表権を有するのが原則とされており(53)、54条はこの理事の包括的代表権の内部的制限に反する取引の相手方を保護するための規定といえる。よって、「善意」とは包括的代表権の制限を知らないことをいうと解する。

110条の類推適用

理事との取引相手が54条で保護されない場合、その他に救済方法はないか。
この点、代表権に制限があることを知っていた注意深い者の方が保護されないとするのは妥当でない。また、当該行為につき代表権があると誤信するのは、基本代理権があると誤信する場合と類似している。そこで、110条の類推適用により承認があると信じるにつき正当な理由があれば保護されると解する(判例)。

法令による代表権の制限

法令による制限は原始的制限であり、知っていていしかるべきものであるため、54条の保護は受けられない。としても、かかる場合に理事の代表権を信じた者は一切保護されないのか。
思うに、このような場合であっても、当該代表権の存在を信じた者を保護する必要に変わりはない。そこで、110条を類推適用して保護するものと解する。

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