論証集~民法総則5~詐欺・強迫

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論証集 民法 総則

詐欺・強迫

●要件
(1) 詐欺
① 欺罔者の故意
→ だます意思(欺罔の意思)と、表意者に
意思表示をさせる意思とから成り立っている。
② 欺罔行為の存在および欺罔による意思表示(因果関係)
③ 欺罔行為の違法性

(2) 強迫
① 強迫者の故意
→ 強迫する意思と、表意者に意思表示をさせる
意思とから成り立っている。
② 強迫行為の存在および強迫による意思表示(因果関係)
③ 強迫行為の違法性

●第三者の詐欺(96Ⅱ)
表意者の相手方でなく、第三者が詐欺をはたらいたときには、相手方が詐欺の事実を知っている場合に限り、表意者は意思表示を取り消すことができる。これは、詐欺にあった表意者が不利益を被ったとしても、詐欺の事実を知らない相手方こそ保護すべきとの考慮にでたものである。

●第三者の保護 ☆
・「第三者」(96Ⅲ)の意義
96条3項の「第三者」の意義が明文上明らかでなく問題となる。
思うに96条3項の趣旨は、取消の遡及効により不利益を受ける第三者を保護し取引の安全を図る点にある。とするなら、「第三者」とは遡及効により不利益を受けうる、取消前に新たな独立の法律上の利害関係に入った者をいうと解する(判例)。

思うに、取消の遡求効(121)は法的擬制に過ぎず、取り消されるまではその行為も有効であるから、取消の時点であたかも所有権につき復帰的物権変動があったものと観念できる。また、取り消した以上、登記を行えたのであり、登記と実体は可能な限り一致させるべきという不動産登記秩序を維持を図る要請がある。
にもかかわらず、登記を放置していた権利者には帰責があり、不利益を被ってもやむをえない。
したがって、表意者と第三者は対抗関係に立ち、第三者の主観を問わず、登記の先後によって決すべきである。

・無過失の要否
そして、第三者として保護されるためには文言どおり善意であれば足りると解する。なぜなら、詐欺による意思表示をなした者には、一定の帰責性が認められるので第三者保護の要件を緩和し取引安全をはかるべきだからである。

・登記の要否
また、登記も不要と解する。なぜなら、第三者との関係では真の権利者は前主・後主の関係になり対抗関係ではないからである。

・強迫の場合
強迫を理由とする取消しの遡及的無効は、善意の第三者にも対抗できる(96Ⅲ反対解釈、大判明39・12・13)。民法が、強迫を受けて意思表示をした者を被詐欺者に比べてこのように厚く保護しているのは、両者の帰責性が異なると考えられたからである。詐欺の場合には、騙されたという点で被詐欺者も軽率の謗りを免れないのに対して、被強迫者にはそのような軽微な帰責事由すら認められないと、考えられたのである。

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