論証集~民法総則6~代理

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論証集 民法 総則

代理

●授権行為の性質
委任契約が取消された場合、授権行為も消滅するか。授権行為の法的性質と関連して問題となる。
この点、委任などの事務処理契約があるからといって、常に代理権を伴うものではないから、授権行為の独自性は肯定されるべきである。
とはいえ、特に規定がない以上、本人の単独行為によって代理権が授与されるとは解されない。そこで、授権行為は委任に類似した一種の無名契約と解する(無名契約説)。もっとも、授権行為は内部契約を前提とするものであり、両者は密接不可分の関係にある。よって、内部契約たる委任契約が取消されればそれに伴って授権行為も消滅すると解する(有因性肯定説)。

(1) 本人が内部契約を取り消した場合
内部契約と密接不可分な授権行為も遡及的に消滅する。本人が取消後、委任状等を放置した場合、相手方は109条の余地がある。取消前の相手方は、原則として保護されないが、詐欺取消前の相手方につき96条3項の保護がある。

(2) 本人が授権行為を取り消した場合
代理人による行為の効果が本人に帰属する虞がある以上、本人は授権行為を取り消す必要がある。したがって、代理権は遡及的に消滅する。

(3) 代理人が内部契約を取り消した場合
内部契約の取消につき、代理人に影響するため、遡及的に消滅する。これに対し、授権行為は代理人に何ら義務を負わせず不利益はなく、他方、代理権の遡及消滅は相手方の取引安全を害するため、将来に向かって消滅する。

(4) 代理人が授権行為を取り消した場合
授権行為は、「単に権利を得」た場合であり、未成年者は取り消すことができない(5Ⅰ但)。また、13条1項列挙事由にもあたらないため、被保佐人・被補助人も取り消すことができない。他方、成年被後見人は、制限能力者としてその意思表示を十分になしえず、本人保護の要請が高いため、取り消すことができる。もっとも、代理権が遡及消滅すると相手方の取引安全を害するし、授権行為によって代理人は何ら義務を負わないため、意思表示をした者の保護に反することもないため、代理権は将来に向かって消滅する。

●顕名
1 顕名のない代理行為
代理人が顕名をしなかったときは、その法律行為は、代理人が自らのために、つまり、自らを効果帰属主体として行ったものとみなされる(100本)。顕名がなければ、相手方は自らに対して意思表示をしている代理人その人こそが法律行為の当事者であると考えるのが通常であり、このような相手方の信頼を保護する必要があると考えられたことによる。たとえ、顕名がされなかったときでも、その法律行為が本人のためにされていることを相手方が知っていたか、合理的な注意を尽くせば知ることができた場合には、代理行為の効果は本人に帰属する(100但)。

2 直接本人名義の場合
(1) 代理人に代理意思がある場合
代理人が本人名義で代理行為を行った場合「本人のためにすることを示して」(顕名、99Ⅰ)といえるか。この点、顕名の趣旨は、効果帰属主体を明らかにする点にある。とすれば、本人名義の代理行為でも効果帰属主体は明らかなのだから、顕名の趣旨に反しない。よって、顕名といえると解する(判例)。

(2) 直接本人名義で越権行為をした場合
110条の適用はないが、相手方が本人の行為であると信じ、その信じたことについて正当理由があれば110条の類推し、相手方の保護を図るべきである(判例)。

●代理行為
1 代理人の権限濫用
判例は法定代理の場合においても93条但書類推適用説に依っているが法定代理の場合にも適用があるが、判例は、親権者の代理権の濫用について、親権者の代理権は広範な裁量に委ねられており、「親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められるにつき特段の事情が存しない限り」代理権の濫用には当たらないとした。

2 転得者の保護
意思表示の相手方が悪意ないし有過失である場合に、その者から事情を知らずに譲り受けた者の保護は、94条2項類推適用によって図っていくべきである。すなわち、代理権の濫用につき93条但書類推適用説を採れば、それにつき悪意ないし有過失の相手方との間で通謀虚偽表示的に捉えることができるので、94条2項類推の基礎があるといえる [39]。

●代理人の不法行為
代理人が、代理行為をするにつき不法行為を行った場合、本人は責任を負わないのか。「代理」理論からすれば、「代理」は意思表示(法律行為)上の問題であり、不法行為の代理は有り得ないから、本人は不法行為責任を負わないとの結論が導かれる。しかし、法人の場合であれば、理事の不法行為につき、法人は賠償責任を負うべきであるし(「代表」理論)、また、代理関係が使用者・被用者の関係にあれば、使用者責任(715条)が生ずるわけだから、「代理」の場合でも、44条の類推適用を認め、本人の賠償責任を認めるべきである。

●代理と詐欺
1 相手方が代理人を欺罔
代理行為の相手方が代理人に対して詐欺を行った場合、本人は代理行為を取消しうるのだろうか。
この点、代理における行為者は代理人自身であるから、意思表示の瑕疵の有無は代理人を基準として判断される(101Ⅰ)。よって、代理行為は取消しうるのが原則である。もっとも、代理行為の法的効果は本人に帰属する(99)ことから、公平ないし信義則の観点から本人の主観が代理行為の効力に影響を与える場合を認められる(101Ⅱ)。かかる公平ないし信義則という101条2項の趣旨からすれば、「本人の指図に従い」の意義は広く解するべきである。具体的には、本人が代理人をコントロールする可能性さえあれば、本人の主観が代理行為に影響を及ぼすと解する。よって、かかる場合に本人が詐欺につき悪意であれば取消せない。

2 代理人が相手方を欺罔
代理人が相手方を詐欺した場合、相手方は意思表示を取消せるか。代理人は96条2項の「第三者」に当たり、本人が善意なら相手方は取り消せないとも思えるため問題となる。
この点、判例は101条1項の問題として処理し、相手方に取消権を認めている。しかし、同条は代理人の意思表示に瑕疵がある場合の規定であり、この場合は同条の適用の前提を欠く。思うに、代理人行為説からすると、法律行為は、代理人・相手方間でなされたのであって、本人は単なる効果帰属主体である以上、96条2項の第三者とはいえない。また、代理人の行為によって利益を受ける本人は代理人の詐欺による不利益も負担すべきである。したがって、96条1項により、本人の主観を問わず取消せると解する。

3 本人が相手方を欺罔
本人が相手方を詐欺した場合、相手方は取消せるか。本人は、96条2項の「第三者」に当たり、代理人が善意なら相手方は取り消せないとも思えるため問題となる。
この点、代理において法律行為を行うのは代理人であることを徹底すれば、第三者による詐欺(96Ⅱ)として、代理人が悪意の場合に限り取消せることになる。しかし、96条2項の趣旨は、詐欺に無関係な善意者の利益を保護する点にある。そして、保護される代理人はそもそも固有の利益を持たず、代理行為の効果はすべて欺罔者たる本人に帰属する。とすれば、このような本人の取引安全を図る必要はなく、96条2項の適用の前提を欠く。よって、相手方は代理人の主観を問わず取消せると解する。

4 相手方が本人を欺罔
・まず、取引行為に関して相手方が本人に詐欺した場合、本人は取消せるか。
この点、意思表示の瑕疵は原則として代理人を基準に判断する(101Ⅰ)。よって、原則として、取消せない。とはいえ、代理人が本人の指示に基づいて法律行為を行った場合には、実質的に見て、詐欺による法律行為であるから取り消せないと解するのは妥当でない。そこで、101条2項の趣旨が公平と信義則にある点に鑑み、代理人が本人の指示に基づいて法律行為を行った場合には、同条項を準用し本人の意思の瑕疵が影響するものとして、取り消しうると解する。

・では、授権行為に関して相手方が本人に詐欺した場合、本人は取消せるか。
確かに、授権行為において相手方は「第三者」(96Ⅱ)であるから、代理人が悪意でない限り取消せないとも思える。しかし、同項の趣旨は善意者の利益保護にある。そして、代理人は授権によって利益を受けるわけではなく、同項の適用の前提を欠く。よって、代理人の主観にかかわらず取り消せると解する。

●復代理人の責任
復代理人が相手方から受領した物を代理人に渡した場合、なお本人に対して引渡義務を負うか、107条2項が「本人に対して代理人と同一の権利義務を負う」と規定していることから問題となる。
思うに、107条2項の趣旨は、復代理の法律関係を簡易化する点にある。とすると、107条2項により本人代理人間、代理人復代理人間で締結した委任契約に基づく権利義務が影響を受けると解すべきではなく、むしろ、107条2項の権利義務が制限を受けると解すべきである。
そこで、代理人に引渡した以上、復代理人の義務は果たしたといえ、本人に対する引渡義務は消滅すると解する。

●同時履行の抗弁と復代理
本人代理人間で、受領物引渡しと報酬支払の同時履行の特約があるにもかかわらず、復代理人が本人へ直接受領物を引渡してしまった場合、代理人は復代理人にいかなる請求をなしうるか。
思うに、復代理人の引渡義務の履行も弁済であるとすれば、代理人は差押権者ではないが、復代理人の勝手な弁済によって、自己の本人に対する報酬請求権が同時履行の抗弁権を失って無担保のものとなってしまう不利益を受ける点で差押権者と同じ利益状況といえる。そこで、481条を類推適用して損害賠償請求をなしうると解する。

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