論証集~民法総則8~表見代理

この記事の所要時間: 512

論証集 民法 総則

表見代理

●代理権授与表示(109)
代理権の授与(授権行為)がない(=無権代理)にもかかわらず、その「表示」(代理行為)がされた場合の責任であり、一般に開示責任と言われる。

成立要件
①代理人によって顕名がされ、かつ、
②本人から授権表示(代理権授与表示)がされたもの
と認めるべき事情が存在しなければならない。

法定代理に適用があるか
そもそも、法定代理の場合には、本人が授権行為をなすことは考えられない。したがって、法定代理の場合には、109条の適用はない(判例)。

●白紙委任状の交付
白紙委任状の交付が「代理権を与えた旨を表示」(授権表示、109)にあたるか。
思うに、授権表示が109条の要件とされた趣旨は、授権表示を本人の帰責性として要求し、本人と相手方の利益調和を図ろうとする点にある。そこで、白紙委任状の交付が授権表示にあたるかは、本人と相手方の利益調和の観点から、個別的に判断すべきと解する。

<具体的帰結>
ⅰ 直接の被交付者が空白を濫用した場合は、そのような者に白紙委任状を交付した帰責性は大きいので授権表示となると解する。
他方、転得者については、白紙委任状は転々流通することを予定されていないから、原則として授権表示にはあたらない。
ⅱ 次に、代理人欄や相手方欄を濫用した場合は本人が被る不利益は小さいので授権表示となると解する(判例)。
最後に、委任事項が濫用された場合は、本人が被る不利益が大きいので授権表示とならないと解する。

●権限踰越(権限外の行為)(110)
1 基本代理権
(1) 事実行為
通説:110条は私法上の取引安全を図る趣旨であり、その前提として取引行為が必要となる。よって、事実行為の委託は、基本代理権に当たらない。
有力説:110条の要件として、基本代理権が要求されるのは本人の帰責事由を要求する趣旨である。そして、本人の帰責事由という観点からすれば、事実行為の委託であろうが、法律行為の委託であろうが、差異はない。そこで、110条の「権限」とは、本人のために対外的行為(法律行為か事実行為かは問わない)をする権限(基本権限)と考えるべきである。

(2) 公法上の行為
公法上の代理権が「その権限」(基本代理権、110)となるか。
思うに、表見代理制度の趣旨は私法上の取引の安全を確保する点にある。とすれば、原則として私法上の代理権のみが基本権限 [52]にあたると解する。もっとも、公法上の代理行為でも、特定の私法上の取引行為の一環としてなされる場合には、その行為は同時に私法上の作用を有するものであるから、その場合には公法上の代理権も基本権限にあたると解する。

(3) 法定代理権
思うに、110条の要件として、基本代理権が要求されるのは本人の帰責事由を要求する趣旨である。そして、法定代理権の場合には、本人は代理権を自ら発生させることができない以上、帰責性を認めることはできない。したがって、法定代理権は基本代理権限たり得ないと解する。
※反対説:110条は「権限」するのみで、何らの限定も加えていない。よって、法定代理権も基本代理権たりうる。

●「第三者」に転得者も含むか
無権代理行為の相手方の転得者も表見代理によって保護されるか。「第三者」の範囲が問題となる。
この点、取引安全の観点から、転得者も含むとする見解もある。しかし、手形取引と異なり通常の民事取引において、有権代理であることを信頼して利害関係を持つに至るのは、直接の相手方に限られる。そこで、転得者を表見代理により保護すべきではなく、「第三者」に転得者は含まれないと解する。

●「正当の理由」の意義
「正当の理由」(110)の意義が明文上明らかでなく問題となる。
思うに、110条の趣旨は、虚偽の外観作出に帰責性ある本人の犠牲の下、かかる外観を信頼して取引関係に入った第三者を保護するという外観法理にある。とすれば、「正当の理由」は外観法理における、相手方の信頼の要件であるから、「正当の理由」とは、代理権があると信じたことにつき善意・無過失であることと解する。

●日常家事(761)と表見代理
ⅰ まず、761条によって代理権が認められるかが問題となる。
この点、夫婦の社会的実態・実情からすれば、夫婦は日常家事の範囲内で相互に代理権を有するものと解される。
ⅱ 次に、「日常家事の範囲内」(761)の意義が明文上明らかでなく問題となる。
思うに、761条の趣旨は夫婦の一方と取引した相手方の保護を図る点にある。とすれば、客観的に行為の外形から、日常の家事に属するものか、すなわち夫婦の共同生活の維持に通常必要な行為か否かを判断すべきと解する。
ⅲ では、「日常家事の範囲内」といえない場合、相手方をどのように保護すべきか。
日常家事代理権を110条の基本代理権とし、110条の直接適用により保護すべきとする見解もある。しかし、かく解すると夫婦の財産的独立を害し妥当でない。そこで、夫婦の財産的独立と取引の相手方保護の調和の観点から、相手方が当該法律行為が当該夫婦の日常家事の範囲内であると信じるにつき正当の理由がある場合に110条の趣旨を類推して、相手方の保護を図るべきと解する(判例)。

●代理方式と越権代理
代理人が本人名義で越権行為をした場合110条が適用されるか。
思うに、同条の趣旨は、代理人が権限を踰越した場合に、代理権の存在を信じた相手方を保護する外観法理にある。そして、相手方が代理人と知って代理権の存在を信じた場合と、本人と信じた場合で保護の必要性は異ならない。よって、110条を類推適用できると解する(判例 )。もっとも、相手方は代理権の存在を信じたわけではないから、同条の「正当の理由」の有無は、本人であると信じたことの当否についてなされるべきと解する。

●重畳適用
この点、表見代理の各規定は、代理権の存在という外観が存在し、その外観作出につき本人に帰責性が認められる場合に、外観を信頼した相手方を保護するという趣旨を共通する。とすれば、表見代理の各規定は重畳適用しうるものと解する。

フォローする