論証集~民法債権総論2~受領遅滞履行遅滞

この記事の所要時間: 251

論証集 民法 債権総論

受領遅滞・履行遅滞

●受領遅滞
受領遅滞の法定性質
債権は権利であって義務ではない。そうだとすれば、同条の法的性質は、公平の見地から法が特に認めた法定責任にすぎないと解される。それゆえ、債権者は受領債務を負っているわけではなく、受領遅滞を理由とする解除は認められない。もっとも、契約当事者は、一般市民間と異なり信義則(1Ⅱ)の支配する緊密な社会的接触関係に立つことから、債権者は契約の性質に応じて相手方に不利益を被らせない信義則上の義務を負う。そこで、契約の性質上、目的物を受領しなければ債務者に著しい不利益が生じることを債権者が認識していた場合には、信義則上の受領義務が存し、その義務違反を理由に契約を解除(541)しうると解する。

受領遅滞の要件(413)
・ 弁済の提供
・ 受領拒絶・不能
* 法定責任説からは帰責事由は不要。

受領遅滞の効果
法定責任説では弁済の提供の効果と同じ。
ⅰ 履行遅滞責任を負わない(損害賠償・解除・担保実行不可) 受領遅滞に陥った債権者が債務者の履行遅滞責任を問うためには、いつでも受領する旨を債務者に伝えるなど、自己の受領遅滞の状態を解消するための行為をする必要がある。
ⅱ 約定利息不発生
ⅲ 相手方の同時履行の抗弁権を奪う
ⅳ 善管注意義務の軽減(特定が前提)→故意重過失でなければ責任を負わない
ⅴ 危険の移転(債権者主義制限特約あるときのみ意義あり) なお、この効果は法定責任説からの説明は困難となる。「債権者の責めに帰すべき事由」(536Ⅱ)を取引通念上、非難されるような場合と広く解することによって導くようである
ⅵ 増加費用の債権者負担(485但)
ⅶ 供託が可能となる(494)

●履行遅滞
要件
ⅰ 履行が可能なこと
ⅱ 債務者が弁済の提供をせずに履行期を徒過したこと
ⅲ 不履行が違法であること
ⅳ 「債務者の責めに帰すべき事由」があること

履行補助者の故意・過失
履行補助者の故意・過失は「債務者の責めに帰すべき事由」(415)となるか。この点、「債務者の責めに帰すべき事由」とは、債権者の故意・過失及び信義則上それと同視しうるものをいう。そして、債務者は履行補助者を利用して利益を得ている以上、そこから生じる不利益も負担すべきであり、履行補助者の故意・過失は信義則上債務者の故意・過失と同視しうる。よって履行補助者の故意・過失は「債務者の責めに帰すべき事由」と解する。そして、かかる履行補助者の故意・過失の法理は、安全配慮義務違反の場合にもあてはまる。
また、実質的に使用者の地位にある者が負うべき被用者の地位にある者に対する安全配慮義務の内容は、それが両者間の労務提供に関する債権・債務を基礎として付随的に負担する義務にすぎないから、被用者による業務の遂行が安全になされるように、業務管理者として予測できる危険等を排除しうるに足りる人的・物的諸条件を整えることに尽きる。そこで、その履行補助者となりうる者は、かかる人的・物的諸条件を整備すべきことを任務として、他の被用者の労務について管理支配権限を持った者に限られると解する。

転借人の故意・過失
転貸借によって利益を受けるのは賃貸人である以上、転借人の故意・過失は債権者の故意又は過失及び信義則上それと同視しうるものというべきと解する。

フォローする