論証集~民法債権各論1~契約法総論

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論証集  債権各論

契約法総論

●契約締結上の過失
契約が不成立または原始的無効となった場合に、損害をうけた当事者は相手方に契約責任を問いうるか。この点、契約は成立していない以上、相手方には契約責任を問い得ないのが原則である。思うに、契約の締結に向かって交渉に入った場合には、相互の信頼関係が形成されるのが通常であるから、通常の一般市民間とは異なり、相互に相手方の利益を保護・尊重すべき信義則上の義務を負う、と解する。よって、信頼を形成するに足る程度に契約交渉が成立していた場合には、故意・過失ある相手方に対して、契約責任を問いうると解する。

●契約準備段階の過失
契約締結前の契約準備段階の過失により損害を被った場合に債務不履行に基づく損害賠償請求をなしうるか。確かに、契約を締結していない以上、契約責任たる債務不履行責任を追及できないのが原則である。また、契約自由の原則では相手方に契約締結を強制できない。しかし、契約準備段階に入った者は一般市民関係とは異なり、信義則(1Ⅱ)に支配される特別の社会的接触関係にたつ。そして、かかる社会的接触関係に立つ者は契約が締結されたか否かにかかわらず、相互に相手方の財産を害しないよう行為すべき信義則上の注意義務を負う場合があるといえる。
具体的には、①相手方の信頼を惹起した先行行為の存在があり、②実質的に契約が成立していると評価できるほどに準備段階が成熟している場合は、注意義務を負うと解する。

●隔地者間の契約の成立時期
民法は隔地者間の契約成立については発信主義(526Ⅰ)を採用しているが、他方、承諾期間を定めてした申込みにつき、その期間内に承諾の通知を受けないときは、申込みはその効力を失うとしている。両者の関係につきどう解すべきか。
この点、民法が契約の成立につき、明確に発信主義を規定した以上、それに沿った解釈をなすべきである。そこで、契約は、承諾の到達しないことを解除条件として、発信時に成立すると解する。承諾期間を定めていない場合も同様に扱うべきである。

●約款の拘束力
民法上、契約の拘束力は意思の合致によって成立する以上、当事者がその内容を承知していない約款に拘束力は生じ得ないのが原則である。しかし、それでは迅速性・確実性が要求される現代における大量取引の実情を無視する結果となる。思うに、契約締結は約款によるという慣習が存在している以上、約款が事前に開示され、かつその内容が合理的である限りで、それに従うのが当事者の合理的意思であるから、約款に拘束力が認められると解する。

●第三者のためにする契約
諾約者は、要約者への抗弁を受益者に対抗できる。
受益者による詐欺は、第三者による詐欺(96Ⅱ)となる。

第三者が受益の意思表示をなした後に、要約者は諾約者の債務不履行を理由として解除しうるか。538条との関係で問題となる。この点、538条の趣旨は、受益の意思表示ののち、当事者の合意によって第三者の権利を消滅させることができないことを規定したのみで、第三者の権利は契約を基礎としている以上、その解除によって消滅すると解すべきである。

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