論証集~民法債権各論2~同時履行の抗弁権

この記事の所要時間: 37

論証集  債権各論

同時履行の抗弁権

●同時履行の抗弁権
要件
①同一の双務契約から生じた双方の債務の存在
②双方の債務が弁済期にあること
③相手方が履行またはその提供をすることなく履行を求めてきた場合

同時履行のの抗弁権の拡張適用
同時履行の抗弁権は、本来は双務契約の対価的牽連関係を根拠に、当事者間の公平を図るため認められるものである。
しかし、公平の観点から同時履行を要求すべき場合は、双務契約の場合に限られないから、同時履行の抗弁権は広く拡張適用されている。

具体例
ⅰ 明文で認められている場合
・ 解除における原状回復義務(546)
・ 負担付贈与の義務履行(553)
・ 担保責任(571)
・ 請負人の瑕疵修補・損害賠償と代金請求(634Ⅱ)

ⅱ 解釈上認められている場合
・ 契約の無効・取消に基づく原状回復義務(最判昭47・9・7)
・ 弁済と受取証書の交付(大判昭16・3・1)
・ 請負における目的物の引渡と報酬の支払債務
・ 造作物買取請求権行使(借地借家33)による造作物引渡義務と代金支払義務
・ 建物買取請求権行使(借地借家13・14)による代金債務と土地引渡債務(大判昭7・1・26)

建物買取請求権行使の場合、土地明渡と代金支払は同時履行関係に立つか。建物代金債権と土地明渡請求権は、対価関係に立たないことから問題となる。思うに、当該建物の立っている土地のみを返還して、建物の明渡のみを拒むことは不可能である。そこで、本来の同時履行関係に立つのは建物明渡・移転登記のみであるが、その反射的作用として、敷地の明渡も拒絶できると解する。

ⅲ 認められない場合
・ 賃借家屋の明渡と敷金返還(最判昭49・9・2)
・ 特約に基づく賃借権登記義務と賃料支払義務
・ 抵当権債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続
→ 弁済が先履行
・ 譲渡担保における債務の弁済と譲渡担保の目的物返還(最判平6・9・8)
→ 弁済が先履行
・ 債権証書返還と弁済(487)
・ 造作買取請求権行使(借地借家33)による建物明渡と代金支払(最判昭29・7・22)
→ 造作代金は、造作物に対する対価であり、建物の対価ではない。
また、一般に建物は、造作よりもはるかに高価で、建物明渡との間に同時履行関係を認めると、かえって不公平となり、533条の趣旨に反することになる。

先履行義務者の履行遅滞と同時履行の抗弁権
先履行義務者が履行を遅滞している場合に、同時履行の抗弁権を主張しうるか。この点、両債務が弁済期にある以上、どちらも履行する義務があるのだから、認められると解する(判例・通説)。

●履行請求と同時履行
履行の請求において一度弁済の提供があったのみで相手方は同時履行の抗弁権を失うのか。思うに、533条の趣旨は、双務契約における履行上の牽連関係の保持にある。そして、一方当事者は弁済の提供をしただけではその債務を免れるものではないから依然として両債務は存続する以上、533条の趣旨は妥当する。よって、同時履行の抗弁権は失わないと解する(判例)。

●解除と同時履行
解除をなすために履行の提供が継続している必要があるか。この点、533条の趣旨は、双務契約における履行上の牽連関係の保持にある。そして、一方当事者が解除権を行使しようとしている場合は、もはや双務契約の履行上の牽連関係を貫徹する必要がなく533条の適用の前提を欠く。よって、一度弁済の提供をすると相手方の同時履行の抗弁は奪われて履行遅滞は違法となり解除は有効となると解する(判例)したがって、かかる場合には、無催告解除ができる。

フォローする