論証集~民法債権各論3~危険負担

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論証集  債権各論

危険負担

●危険負担―債権者主義の適用範囲
危険負担の債権者主義(534)の適用範囲が問題となる。この点、534条1項を文言通り適用すると、取引通念に反し、不合理な結果を招くとして、適用範囲を制限的に解し、代金の支払・登記・引渡があって初めて危険が移転し債権者主義となるとする見解もある。しかし、立法論としての批判としては正当でも、明文に反する解釈論は妥当ではない。また、同条項は任意規定であるから、特約で排除でき、あえて制限的に解釈する必要はない。よって、制限的に適用すべきではないと解する(判例)。

二重譲渡の場合
不動産の二重譲渡がなされ、登記がまだ売主にある場合に売主の帰責事由なくして目的物が滅失した場合にも債権者主義が適用されるか。
この点、534条の趣旨は所有帰すところに危険も帰すべきという所有者危険負担にある。そして、特に二重譲渡の場合、買主は対抗要件がない段階では所有権の帰属が不確定なのであるから、危険を負わせるべきではない。したがって、この場合には、債権者主義は適用されないと解する。

他人物売買の場合
他人物売買において、売主の帰責事由なくして目的物が滅失した場合に債権者主義が適用されるか。この点、534条の趣旨は所有帰すところに危険も帰すべきという所有者危険負担にある。そして、他人物売買の場合、売主が所有権を取得していない限り、買主は所有権を取得しないのであるから、危険を負わせるべきではない。したがって、この場合には、債権者主義は適用されないと解する。

債権者主義において債務者の受けた利益
この点、債権者は代金債務を負う以上、債務を免れることによって債務者に利益を与えるべきではない。そこで、536条2項類推適用により、利益の償還を認めるべきと解する。

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