論証集~民法債権各論4~契約解除

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論証集  債権各論

契約解除

●履行遅滞による解除と帰責事由
履行遅滞による解除につき帰責事由は必要か、明文なく問題となる。この点、解除の意義は、自己の履行義務の切断にあることからすれば、帰責事由は不要とすべきとも思える。しかし、履行不能の場合に帰責事由が要求されることとの均衡をとるべきであるし、契約の拘束力を容易に解消しうるとすることは妥当でない。そこで、履行遅滞による解除につき帰責事由は必要と解する(判例・通説)。

●履行遅滞に基づく解除と二重催告
履行遅滞に基づく解除をするためには「催告」(541)が必要である。そこで、期限の定めのない債務について債務者が履行をしない場合、債権者は債務者を遅滞にするための「請求」(412Ⅲ)をしたうえで、改めて「催告」をしなければならないか。確かに、541条の文言からすれば、債権者が催告する前に債務者が遅滞に陥っていることが必要であり、期限の定めのない債務においては二重の催告が必要とも思える。しかし、そのような二度手間を必要とすることは迂遠である。また、債務者が遅滞にあることは解除権発生の要件であり、催告をするための要件ではない。とすれば、相当期間を定めて催告を一度すればたり、催告を改めてする必要はないと解する(判例)。

●履行遅滞に基づく解除と催告の相当期間
相当でない期間を示して催告した場合や期間を定めずして催告した場合、その催告は「相当の期間」(541)を定めたものとはいえず、解除権は発生しないのか。(確かに、541条の文言には形式的に反する。)しかし、猶予期間の相当でない催告を何度繰り返しても何らの解除権を生じないとするのはいかにも不合理である。また、法が「相当の期間」を要求した趣旨は、債務者に履行の機会を与える点にある。とすれば、実際に相当期間の経過があったか否かが重要である。よって、客観的に相当な期間を経過すれば、解除権は発生すると解する(判例)。

●数個の契約と解除
数個の契約のうち一個が履行不能で解除権が発生している場合、他の契約についても解除できるか。確かに、契約が別個である以上、債務不履行のない他の契約を解除することはできないのが原則である。しかし、数個の契約が密接不可分な場合にまでかかる原則を貫くことは、帰責事由ない一方当事者に不当な不利益を課すことになり妥当でない。そこで、①数個の契約が相互に密接に関連付けられていて、②社会通念上いずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合には、一つの契約上の債務不履行を理由に他の契約も解除できると解する(判例)。

●継続的契約と541条(賃貸借参照)
継続的契約の解除においても、541条が適用されるか。この点、541条は解除の一般規定であることからすれば、適用を否定すべきではない。とはいえ、継続的契約は契約当事者間の人的信頼関係をその基礎とするものであるから、それに応じた解釈がなされるべきと解する。
継続的契約において遡及効を認めることは無意味であり、また法律関係が複雑になりすぎる。契約は将来に向かって消滅する。また、軽微な義務違反では解除されない。他方、信頼関係の著しい破壊の場合には、無催告解除が認められる。

●解除の効果
この点、解除制度の趣旨は、解除権者を契約関係による拘束から解放する点にある。とすれば、解除によって契約は遡及的に消滅すると解する(直接効果説)。545条1項の原状回復義務は、703条の特則と考えることになる。また、損害賠償は、債権者保護のため、解除の遡及効を制限することによって認められる。

●解除と第三者
「第三者」(545Ⅰ但)の意義が解除の法的性質と関連して問題となる。この点、解除制度の趣旨は、解除権者を契約関係による拘束から解放する点にある。よって、解除により契約は遡及的に消滅すると解する(判例)。とすれば、545条但書は、遡及効を制限して取引の安全を図る規定と解されるから、「第三者」とは遡及効によって影響を受ける者、すなわち、解除前に解除された契約から生じた法律効果につき、新たな権利を取得した者と解する。

「第三者」として保護されるのに登記は必要か
この点、直接効果説の立つ以上、対抗問題とはならないから、対抗要件は不要であろう。
しかし、第三者は、何ら帰責性のない解除権者の犠牲の下に保護されるのだから、権利保護要件としての登記・引渡を備える必要があると解する。

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