論証集~民法債権各論5~売買

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論証集  債権各論

売買

売買 手付

手付の種類
①証約手付 契約締結の証拠としての手付
②解約手付 約定解除権の留保としての手付
③違約手付 違約罰(損害賠償を排除しない)と損害賠償の予定としての手付の2種類がある。

「履行に着手」の意義
「履行に着手」(557Ⅰ)の意義が明文上明らかでなく問題となる。思うに、577条1項が解除時期を制限した趣旨は、履行に着手した当事者が、契約の解除によって、不測の損害を被ることを防止する点にある。とすれば、「履行に着手」とは、客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をすることをいうと解する(判例)。

「履行に着手」した者からの解除
履行に着手した者が解約手付により解除できるか。思うに、577条1項が解除時期を制限した趣旨は、履行に着手した当事者が契約の解除によって不測の損害を被ることを防止する点にある。そして、自ら履行に着手したとしても、相手方が履行に着手しない限り、解除によって相手方に不測の損害を与える可能性は少ない。とすれば、同条は適用の前提を欠き、履行に着手した者からの解除は制限されない、と解する(判例)。●解約手付と違約手付
手付は解約手付として推定されるが(557Ⅰ)、違約金条項は解約手付の推定を排除するか、契約に対する拘束力の点で相矛盾するとも思えるため問題となる。この点、解約手付は契約の拘束力を弱めるものであり、契約の拘束力を強める趣旨たる違約手付と矛盾するから、解約手付の推定を排除すると考える見解もある。しかし、債務不履行のときに手付額だけで精算しようとする趣旨の違約手付と、履行の着手前に手付を放棄又は倍戻しして解約する趣旨の解約手付は矛盾とはいえない。よって、反対の合意なき限り解約手付の推定は排除されないと解する(判例)。

売主の担保責任

買主に帰責性ある場合の担保責任

他人物売買において直接買主が所有者から買い受け売主をして権利を取得できなくした場合、なお売主は561条の担保責任を負うか。思うに、担保責任の趣旨は、有償契約における等価的均衡を保ち当事者の公平を図る点にある。そして、買主の帰責性により所有権が移転できない場合に、売主に担保責任を負わせることは、むしろ公平に反する。よって、担保責任は負わないと解する(判例)。

他人物売買と追認

他人物売買は債権的には有効(560)であるが、物権的には無効である。では、権利者が追認した場合に有効とならないか。この点、他人物売買と無権代理は無権限者による処分という点で共通する。そこで、他人物売買を権利者が追認した場合には、116条類推により、売買が物権的にも遡及的に有効となると解する。


他人物売買の解除と原状回復

他人物売買が解除された場合に、買主は売主に対して使用利益の返還義務(545Ⅱ類)を負うか。他人物の売主は目的物の使用権限を有しない以上、そのような売主に対して買主は使用利益を返還する必要はないとも思えるため問題となる。思うに、545条2項は契約当事者に契約がなかったのと同一の結果を生じさせるという解除の効果を達成するため原状回復の一内容として定められたものである。そして、買主が現実に使用利益を得ている以上、その利益は返還されなければならない。よって、使用利益の返還義務を負うと解する(判例)。

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