論証集~行政救済法1~対象

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論証集  行政救済法

対象:行政指導

●行政指導は抗告訴訟の対象となるか
行政指導は抗告訴訟の対象になるか、行政指導が、「処分」(行訴法3条2項)にあたるかが問題となる。
「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
これを行政指導についてみると、行政指導は、相手方の任意の協力をも求めて行政目的を達成しようとする事実行為にすぎない。つまり、行政指導は、直接国民の権利義務を形成したり、その範囲を確定する性質を有するものではない。
したがって、行政指導は、一般的には、「処分」に当たらないため、抗告訴訟の対象にならないと解する。
もっとも、行政指導の根拠法令の仕組み解釈から、当該行政指導によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものであると解される場合には、行政指導であっても「処分」に当たり、抗告訴訟の対象になると解する(最判平成17年7月15日参照)。

●行政指導は「公権力の行使」に当たるか
行政指導は相手方の任意の協力を前提とする事実行為にすぎないため、行政指導が「公権力の行使」(国賠法1条1項)に当たるかが問題となる。
この点については、まず、「公権力の行使」の意義が問題となる。
国家賠償制度は、公務に起因して損害を被った者を救済することを究極の目的とする制度であるため、文理に反しない限り広く解することが国賠法1条1項の趣旨に合致する。
もっとも、いくら国又は公共団体の作用であっても、一般の私人と同等の立場で行う経済活動まで「公権力の行使」に当たると解するのは、文理から大きく逸脱する。
また、公務のうち、公の営造物の設置・管理の作用については、国賠法2条の適用対象であるから、「公権力の行使」に含める必要がない。
したがって、「公権力の行使」とは、国又は公共団体の作用のうち、純粋な私経済作用と国賠法2条にいう公の営造物の設置・管理の作用を除く全ての作用をいう(広義説)。
以上を前提に行政指導についてみると、行政指導は相手方の任意の協力を求める行政活動の一つであるため、純粋な私経済活動にも営造物の設置・管理の作用にも当たらない。
よって、行政指導は「公権力の行使」に当たる。

対象:行政計画

●行政計画と取消訴訟(最判平20・9・10)
行政計画は取消訴訟の対象となるか、行政計画に処分性(行訴法3条2項)が認められるかが問題となる。
「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
行政計画は、一般に当該計画に定められた事項を一般的、抽象的に決定するものであって、いわば当該事業の青写真としての性質を有するにすぎず、これによって利害関係者の権利にどのような変動を及ぼすかが必ずしも具体的に確定されているわけではない。また、事業計画の公告に伴う制約も付随的効果にとどまるものであって、事業計画の決定ないし公告そのものの効果として発生する権利制限とはいえず、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為とはいえない。
もっとも、①国民の権利に対する影響の具体的予測可能性、②計画決定後の事業遂行の自動性、③国民の権利制限の継続性等の事情を考慮して、計画決定がなされた時点で、国民の法的地位に直接的な変動が生じ、かつ、④事情判決(行訴法31条1項)がされる可能性、⑤④を前提に、国民の実効的な権利救済を図る必要性があり計画決定につき取消訴訟の提起を認める合理性がある場合には、例外的に計画決定は、行訴法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解すべきである。

対象:条例制定行為

●条例制定行為と処分性
条例制定行為は取消訴訟の対象となるか、条例制定行為に処分性(行訴法3条2項)が認められるかが問題となる。
「処分」とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
条例制定行為は、不特定多数の者を対象とした一般的・抽象的な規範を定立する行為にすぎず、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではない。
よって、条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできる等の事情のない限り、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定させるものとはいえず、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである(最判平14.4.25、平18.7.14)

対象:行政調査

●違法な行政調査を基礎としてなされた行政行為は違法か
違法な行政調査によって収集された資料に依拠して事実認定等がなされ、それを前提として行政行為が行われた場合、当該行政行為も違法の瑕疵を帯びるか。違法な行政調査を基礎としてなされた行政行為の効力が問題となる。
行政調査は、一般的には行政側の情報収集として行われる活動であるから、本来行政行為とは相対的に独立した活動である。
したがって、行政調査が違法である場合に、その調査を基礎にして行われた行政行為は、原則として違法とならない。
もっとも、行政調査と行政行為は一つの過程を構成しているので、適正手続の観点から、行政調査に重大な違法が存在するときは、例外的に、その調査を基礎にして行われた行政調査は違法となる。

対象:戒告

●戒告の処分性
「処分」とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている行為をいう。
では、行政代執行法に基づく戒告について処分性が認められるか。
この点、戒告は単なる事実行為であるから、相手方が既に負っている義務以外に別個の新たな義務を課すものではなく、処分には当たらないとも思える。
しかし、戒告は、後の代執行との一体的行為であるから、これを代執行と切り離してその性質を論ずるのは妥当ではない。
そもそも、戒告の趣旨は、代執行の段階に入れば多くの場合直ちに執行が終了し、救済の実を挙げ得ないことに鑑み、行政代執行手続の慎重を期するとともに、義務者の権利の救済を保障する点にある。
そうであるとすれば、戒告は、単に代執行手続上の前提要件として義務の履行を催告する通知行為にすぎないものではなく、後に続く代執行と一体となって義務不履行時に代執行を実施すべき旨の意思を表示するものといえる。
よって、戒告は、これが到達した時点で国民の執行受忍義務を形成するものといえるから、行政処分に準ずるものとして処分性が認められる。

対象:即時強制

●即時強制の救済手段
即時強制のうち、実力行使が継続的であるときは、その状態の除去を求めるため、当該事実行為に対する取消訴訟が認められる。
これに対して、目的が即時に完成してしまうときには、取消訴訟の意味はないので(訴えの利益を欠く)、国家賠償請求、損失補償請求を求めることになる。
また、場合によっては、差止め訴訟(及び仮の差止め)を求めることも考えられる。

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