論証集~行政救済法2~不服申立

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論証集  行政救済法

不服申立

不服申立適格

行訴法は取消訴訟の原告適格に関する明文の規定を置いている(行訴法9条)が、行審法は、不服申立適格について単に「不服がある者」(行審法4条1項)とのみ規定しているため、どのような者に不服申立適格が認められるかが問題となる。
この点について、行審法1条1項は法の趣旨として、「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図る」と規定していることから、行審法は、主観争訟すなわち私人の権利利益に関する紛争を解決するために立法化されたものと考えられる。
そうであるとすれば、行審法上の不服申立適格についても、同じく主観争訟たる取消訴訟の原告適格と同様に解釈すべきである。
したがって、「不服がある者」とは、当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護される利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者をいうと解する。
なお、法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保護されている利益をいう。それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果、たまたま一定の者が受けることになる反射的利益とは区別される。

不服申立と職権探知主義

職権探知主義とは、当事者の弁論に拘束されず職権で事実の探知及び証拠調べを行う立場であって、弁論主義に対するものとされる。
では、行審法は職権探知主義を認めているか。行審法には職権証拠調べについての明文規定が存在するが(行審法27条から30条)、職権探知主義に可否については明文規定が存在しないため問題となる。
この点について、行審法1条1項は、「国民の権利利益の救済を図る」ことに加えて、統制も法の目的としている。そうだとすれば、当事者が主張していない事実であっても、公益の実現のために、審査庁は積極的に事実を調査すべきである。
また、処分庁は弁明書の提出を義務付けられておらず、審査請求人の閲覧請求権も処分庁から提出されたものに限定され、審査請求人による口頭意見陳述も対審構造になっていないこと等にかんがみると、行審法は審査庁の職権探知を肯定していると解するのが自然である。
よって、行審法は職権探知主義を認めていると解される。

要件審理と口頭意見陳述権の範囲

審査請求人又は参加人の申立があったときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない(行審法25条1項但書)。 この口頭意見陳述権は本案審理についてのみ認められるのか、要件審理についてもみとめられるのかについては争いがある。
この点について、民訴法140条の規定にならって、口頭意見陳述権は要件審理については認められないとする見解がある。
しかしながら、審査請求の適法要件を欠いていることが明白な場合は別として、一般には、審査請求の適法要件を充足しているか否か自体について、処分庁又は審査庁と審査請求人の間で意見が異なることが少なくない。
行審法25条1項但書の趣旨は、審理手続に当事者主義的構造を取り入れることにより審査請求人を実質的に処分庁と対等な地位に置き十分な攻撃防御を行うことを可能にする点にある。そうであるとすれば、適正な審理手続を求める申立人の権利を保障するため、要件審理についても口頭意見陳述権が認められるべきである。
また、要件審理と本案審理は明確に区別することができない。
よって、行審法25条1項但書の口頭意見陳述権は、審査請求が不適法であることが明白な場合以外は、本案審理のみならず要件審理についても認められる。

職権収集資料と閲覧請求権

審査請求の審理における閲覧請求権の対象は「処分庁から提出された書類その他の物件」(行審法33条2項)であるが、この中には、処分庁が行審法33条1項により任意に提出した資料等に加えて、審査庁が行審法28条により職権で収集した書類等まで含まれるか。
この点について、閲覧請求権が不服申立人の手続的防御を十分に尽くさせるための手段であることを重視して、審査庁が行審法28条1項により職権で収集した書類等まで含むとする見解がある。
しかしながら、反対説は、行審法33条2項が「処分庁から」との文言を用いていることから、文言解釈として無理がある。また、審査庁が処分庁以外の者から収集した物件の証拠開示については行審法には明文の規定がないこと、行審法48条が行審法33条を準用しておらず異議申立てには閲覧請求権の保障がないことにかんがみると、反対説が重視する審査請求人又は参加人の手続的防御を十分に尽くさせるという発想は、閲覧請求権にはないとみざるを得ない。
そもそも、行審法33条の主眼が処分庁の物件提出権の保障にあることからすると、閲覧請求権は、申立人と処分庁との対立構造の限度での、申立人の手続的権利を保障したものに過ぎない。
したがって、閲覧請求権の対象は、処分庁が任意に提出した書類等に限られ、審査庁が職権で収集した書類等は含まない。

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