論証集~行政救済法5~無効確認訴訟・執行停止

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論証集  行政救済法

無効確認訴訟

●無効確認訴訟の補充性
行訴法38条後段は、無効確認訴訟の訴訟要件として「処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによっては目的を達することができないもの」に限りと規定するが、この補充性の要件の解釈については争いがある。
この点について、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」の意義を、行政行為の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟に還元できないものをいうとして、補充性の要件を厳格に解する説がある(還元不能説)。
しかしながら、この見解によると無効確認訴訟の許容範囲が非常に狭くなり、国民救済の観点から妥当でない。
無効等確認訴訟については、無効等確認訴訟が時期に遅れた取消訴訟としての実質を有することを重視して、紛争解決機能の面から解釈すべきである。
そこで、「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」とは、行政行為の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該処分の無効確認訴訟の方がより直截的で適切な争訟形態であるものをいうと解する(最高裁S62.4.17

●行政事件訴訟法36条の解釈
行訴法36条は、無効等確認訴訟の原告適格を、①「処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれがある者」、②「処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」、③「現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないもの」という三つの要件により限定している。この条文の解釈については、消極要件である③が、積極要件である①②の要件双方にかかるのか、それとも②のみにかかるのか争いがある。
この点について、条文の文言を重視して、消極要件である③が①②の要件双方にかかるとする見解(一元説)がある。
しかしながら、一元説によると、①「処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれがある者」であるにもかかわらず、③「現在の法律関係に関する訴え」によって目的を達することができる場合には、無効等確認訴訟を提起できないことになり、国民救済の点で不十分である。
そこで、①の要件のみを満たした者も訴えが提起できるとし、消極要件である③は②のみにかかるとする見解(二元説)が妥当である。なお、この見解によれば、①の要件のみを満たす予防訴訟としての無効等確認訴訟を認めることができる。

執行停止

●執行停止
処分の取消訴訟が提起されても、その処分の効力、処分の執行、手続の続行は停止されないのが原則である(執行不停止の原則、行訴法25条1項)。執行不停止原則の趣旨は、行政の円滑な執行を確保し、国民による濫訴の弊害を避ける点にある。
もっとも、取消訴訟においても、本案判決がなされるまでの間に、不利益な状態が継続したり、現状が不利益に変更されることを防止する必要がある場合がある。そこで、一定の要件の下に、例外的に執行停止が認められる(行訴法25条2項)。
執行停止の要件は、①本案訴訟の係属、②重大な損害を避けるため緊急の必要があることという積極的要件と(行訴法25条2項本文)、③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと、④本案について理由がないとはみえないことという消極要件(行訴法25条4項)からなる。
したがって、執行停止が認められるためには、上記4つの要件を満たすことが必要となる。
なお、上記要件は一定の相関関係になる。例えば、執行停止を認めた場合の公益に対する影響が軽微なときには、積極要件②の損害は重大なものである必要はないと考えるべきである。
なぜなら、執行停止をすべきか否かの判断は、原告の暫定的な権利利益救済の必要性と行政処分の目的の早期実現の要請とをいかに調整するかという観点から、行われるべきと考えるからである。

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