レポート集~民法物権~抵当権の効果のおよぶ範囲

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レポート集 民法物権

抵当権の効果のおよぶ範囲について述べよ。

抵当権の効果のおよぶ範囲について、以下の4つの点を主に説明したい。①付加一体物と付合物、従物②天然果実と法定果実③物上代位④不動産収益執行。
(1)付加一体物と付合物、従物
抵当権は、低当地の上に存する建物を除き、抵当不動産に付加して一体となっている物におよぶ(370条)。ただし、設定行為に別段の定めがある場合、および、債権者が債務者の好意を取り消すことができる場合(424条)には及ばない(370条ただし書)。ここで問題は「付加して一体となっている物」の範囲である。この付加一体物に符合物(242条)が含まれることは明らかであるが、従物(87条)が含まれるかが問題となる。
従物とは、主物の常用に供するために附属させた他の独立物であって、抵当不動産所有者の所有に属する物であるが、判例(大連判大8・3・15、最判昭44・3・28)・通説は、設定時から存する従物には効力がおよぶ物と解している。これは、87条2項「従物は、主物の処分に従う」の規定によっても説明ができる。
このように、抵当権の効力が従物にもおよぶことについて異論はないが、抵当権設定後に付加された従物について、効力がおよぶのか問題となる。通説は、抵当権設定後に付加された従物も付加一体物に含まれ、抵当権の効力がおよぶに至ると解する。だがしかし、抵当不動産に巨額な従物を付加した場合は、抵当目的物から除外する旨の黙示の特約(370条ただし書)があるものと解し得る。
(2)天然果実と法定果実
天然果実とは、果物・牛乳・鉱物など、物の経済的用途に従って直接に収取される産出物であるが、法定果実とは、利息・賃料・地代など、物の使用の対価として生じる金銭その他の物である。
抵当権は、設定者に抵当不動産の使用収益権を留保する権利であるため、不動産から生ずる天然果実・法定果実については、原則として、効力はおよばない。だだし、被担保債権の債務不履行後に生じた果実については抵当権の効力が及ぶ(371条)。
2003年改正以前の旧371条は、抵当不動産が差し押さえられて、抵当権が実行段階に入った場合にはおよぶとされていた。そのため、抵当権実行の申し立て前に行使しうるかどうかについて争いがあったが、特に、ここでいう「果実」に法定果実が含まれるのかが問題となった。従来の通説では、抵当権は交換価値を把握する物であるが、法定果実は交換価値のなし崩し的実現であるから、原則として旧371条の「果実」に含まれないと解した。しかし後の多数説は、非占有担保権の意義を主張し、旧371条を適用して、差押え後にのみ効力が及ぶとしていた。
したがって改正規定は、履行遅滞後に、果実に対する抵当権の実行を認めることで、これらの問題の解決を図った物であるといえる。
(3)物上代位
抵当権者は、目的物の売却・賃貸・滅失・損傷による債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権の効力を及ぼすことができる。
ただし、物上代位権を行使するためには、払い渡しまたは、引渡しの前に差押さえが必要である。代償物が債務者に引渡されると債務者の一般財産となるが、担保権は特定物に対する処分権であることから、一般財産に対する処分権限をもたない。したがって、その代償物が債務者の一般財産に混入する前に、当該請求権を特定する必要があるということである。
(4)不動産収益執行
抵当不動産の賃貸借により所有者が得る賃料から抵当権者が優先弁済を受けられるかについて、かつて、価値権論を背景とした否定的見解が見られたものの、2003年の改正により、担保不動産収益執行制度が創設されたことから、法律上、肯定的見解をとることが明確となった。
債務者が債務不履行にありながら、法廷果実を取得しているのは公平・正義に反するため、担保権の実行よりも簡単な手段を認めた物である。また、手続きとしては、民事執行法188条の強制管理の規定を準用することで、担保不動産収益執行制度は確立されたのである。
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