レポート集~民法物権~177条の「第三者」の範囲

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レポート集 民法物権

177条の「第三者」の範囲について述べよ。

「第三者」とは、当事者およびその包括継承人を除く者を指す。だが、177条は、不動産の物権変動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定し、「第三者」については何の制限も付していない。このことによって、制限の有無について争いがあった。
初期の判例は必ずしも明確でなかったが、明治41年の大審院連合部判決(明治4年月15日)によって、登記の欠缺を主張する正当な利害関係人に限定する旨の判断が示された。これを受け、判例は制限説に統一されたが、学説は、無制限説の立場から強く反論が為された。
無制限説は、物権の絶対性にかんがみ、物権変動の一切を登記簿に記載すべきとする。登記制度の理想的な形式といえるが、我が国では、中間省略登記を有効としたり、借地借家法で登記なき賃借権に対効力を認めたりするなど、現状の制度とはまだ距離がある。
したがって、現在では「第三者」を制限して解釈すべきだということには異論はない。しかし、その限定の広狭については議論が為されている。具体的には、判例の「正当な利害関係」という抽象的な基準の中で、第三者の有する法的地位(客観的範囲)を第三者の権利取得に関する態様(主観的範囲)の2つの側面から限定することが考えられる。
(1)第三者の客観的範囲
明治41年の大審院連合部判決では、第三者の範囲を「正当の利益を有する者」という抽象的な基準で限定していることから、個々の事案においての個別の具体的判断が必要となってくる。
これに対して、第三者の範囲を「物的支配を相争う者」などとすることで、具体的に限定する立場もある。177条の規定は、対抗問題を生じる場合にのみ適用されるべき規定であるために、対抗関係に立つ者のみが「第三者」であり、対抗関係に立たない者は「第三者」でないと考えるものである。しかし、この説によると、物的支配をめぐる紛争を生じないために、賃借人や所有権移転被請求権者などは、177条の「第三者」と認められないことになる。
したがって、紛争を予防するという登記制度の役割を考えると、物的支配を相争う者に限定せず、広く正当な利害関係人を第三者に含むのが妥当と考えられる。
登記の欠缺を主張できる正当な利害関係人とされる者としては、物権の取得者、物権以外の利用権を有する者(最判昭49・3・19)、物権の喪失を争う場合(最判平6・2・8)、目的物に対する差押え債権者などが挙げられる。
また、177条の対抗要件を巡る紛争について、その具備に関する主張立証責任を誰が負うのかについては議論があるが、第三者の側で、正当な利害関係人であることの立証に加えて、対抗要件の具備について争う旨の主張が必要とされる。
(2)第三者の主観的範囲
177条は、第三者の範囲について、主観的要件を課しておらず、悪意の第三者も含まれると考えられる。しかし、悪意者でも、自由競争の範囲を逸脱し、登記の欠缺を主張することが信義に反するような場合には、背信的悪意者とされ、177条の「第三者」から除外される。
背信的悪意者からの転得者については、以下のように考えることができる。Aが所有する甲土地をB(登記欠缺者)に売却し、その後に背信的悪意者のCが、Aから甲土地を買い受け、登記を完了させたうえで、Dに譲渡した場合、背信的悪意者Cは、Bの登記欠缺を主張できないだけであって、無権利者となるわけではない。
したがって、譲渡を受けたDは、Bとの関係で背信的悪意者と認定されない限りは、有効に権利を取得できるものと考えられる。
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