レポート集~民法総則~失踪宣告

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レポート集 民法総則

失踪宣告の意義とその取消について述べよ。

失踪宣告とは、不在者の生死不明の状態が継続した場合に、家庭裁判所の審判によって、その不在者を死亡したものとみなして、法律関係を確定させる制度である。
人の生死不明の状態を放置してしまうと、その家族等にとって不都合を生ずることがある。たとえば、失踪者の配偶者は、婚姻関係が継続したままになり、再婚することができないし、失踪者にかけられていた生命保険金も支払われないこととなる。また,失踪者の配偶者、子のように相続人となりうる者も、 失踪者が死亡していない以上、その財産を処分することはできない。そこで、このような失踪者の家族などの利害関係人の不利益を救済するために、失踪宣告の制度が設けられている。
家庭裁判所は、不在者の生死が明らかでないことを前提として、失踪の態様ごとに、状態の継続期間が次の場合は、失踪の宣告をすることができる。普通失踪といい、通常の不在者は7年間(民法30条1項)。 特別失踪という、戦争や船舶の沈没などの危難に遭遇した場合は、その危難の去った後1年間(30条2項)である。また、失踪宣告は、利害関係人の請求が必要となる。この利害関係人は、法律上の利害関係人であり、事実上の利害関係人は含まれない(大決昭7・7・26民集11巻1658頁)。
失踪宣告を受けた者は、「死亡したものとみなす」(31条)。 これは死亡の擬制がなされるという意味を持ち、死亡していない事の反証を挙げても死亡の効果は覆されない。したがって死亡の効果は、失踪の取消しの宣告を受けない限り否定できない。
失踪宣告の結果、婚姻を解消して再婚できるし、相続も開始されることとなる。しかし、失踪宣告を受けた者の権利を奪うものではなく、その者は他所で身分・財産関係を形成することは可能である。また、この効果は、普通失踪は失踪期間満了の時、特別失踪は危難が去った時までさかのぼる。
前述のように、失踪宣告は、法律による死亡の擬制であって、それが事実と反する場合でも、当該失踪宣告を再度家庭裁判所において、取り消す審判を受けない限り、死亡の効果は継続される。そこで、本人や利害関係人にとっては、宣告自体を取り消す必要があるが、31条1項は、次の要件があれば、家庭裁判所は、失踪宣告を取り消さなければならないとしている。①失踪者が現に生存すること、または、死亡とみなされた時と異なる時期に死亡していたことが証明された場合。②本人または利害関係人の請求によることとされる。
取消の審判が確定すると、原則として、はじめから失踪宣告がなかったこととなる。よって、婚姻は解消されず、相続も開始しなかったこととなる。しかし、失踪宣告後の新たな法律関係を覆すことは、宣告を信頼した者が損害を被るため、次の2つの例外が設けられている。
⑴失踪宣告後、その取り消し前に善意でした行為の効力は、影響を受けない(32条1項後段)。 この規定は、財産取得行為だけではなく、身分行為についても適用されると解されている。したがって、失踪者Aの妻BがCと婚姻した場合、Aが帰来したときの婚姻関係が問題となる。この時、学説では、旧婚姻が復活して重婚関係が生じるとする考えやB、Cともに善意ならば旧婚姻は復活せず新婚姻が有効だとの考えがある。また、実務においては、双方が善意であるときは、前婚は復活しないが、再婚当事者の一方、または双方が悪意の場合は、前婚が復活し、前婚については離婚原因(770条1項)、 後婚については取消原因(744条)となる。しかし、婚姻は当事者の意思を最大に尊重すべき事柄であり、善意・悪意の有無で決すべきものではない。ゆえに、32条1項後段の適用から外れ、常に新婚姻が有効だとする立場に立ちたい。
⑵失踪宣告によって財産を得た者は、その取り消しによって権利を失うが、「現に利益を受けている限度」で返還すれば足りる。この「現に利益を受けている限度」とは、現に手元に残っている利益を返還すればよく、浪費してしまったものは返さなくてよいというものである。ただし、生活費に充てた場合には、自己が負担すべき当然の支出を免れたこととなるため返済義務を負う。<1680字>

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