論証集~民法債権各論6~瑕疵担保責任

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論証集  債権各論

瑕疵担保責任

隠れた瑕疵

(1) 「瑕疵」の意義
個々の契約の趣旨に照らせば目的物が有すべき品質・性能を欠いていること(主観的瑕疵概念、通説)。
当事者の合意内容を基準に「瑕疵」の有無を判断したうえで、具体的契約から明確な帰結が出てこないときには、当該契約当事者の地位に置かれた合理人ならば契約目的に照らしてどのような品質・性能を期待したであろうかという観点から「瑕疵」の有無を判断すれば足りる。

(2) 「隠れた」の意義
買主の善意無過失をいう(判例・通説)。なお、判例は、①買主としては、通常人ならば買主の立場に置かれたときに容易に発見することができなかったこと(客観的に見て瑕疵が外部に現れていなかったこと)を主張・立証すれば足り、②これによって買主の善意無過失が推定される結果、売主の側で、買主の主張に対する抗弁として、当該買主が瑕疵の存在を知っていたこと(買主の悪意)または瑕疵の存在を知らなかったことについて当該買主に瑕疵があったことを根拠づける具体的事実(買主の過失の評価根拠事実)を主張・立証するという枠組みを採用している。

瑕疵担保責任の法的性質

不特定物に瑕疵担保責任(570)が適用されるか。

(1) 法定責任説
この点、特定物売買の場合には、目的物に瑕疵があってもその物を引渡せばたりる(483、493)ところ、570条は、有償契約の等価的均衡を保つため、特定物売買において無過失の売主に特に法定責任を認めたものである(法定責任説)。
よって、瑕疵ある物の給付では、売主がいまだ履行責任を免れない不特定物売買において瑕疵担保責任は適用されないと解する。

 570条の瑕疵担保責任は、特定物のみを対象とする。
もっとも、判例は種類売買において修正している。すなわち、種類物の売買では、①買主が「瑕疵の存在を認識した上で、これを履行として認容」したかどうかを基準として、②履行認容が認められるときには、570条の瑕疵担保責任の法理(法定責任説のそれが想定されている)で処理し、―したがって、完全履行請求を否定し―、③履行認容が認められないときには、「受領後」であっても、570条の瑕疵担保責任の法理ではなく、債務不履行責任の法理で処理するという枠組で組み立てられたものである。結局、種類物の売買で、570条に基づき売主に損害賠償請求したり、解除の効果を主張しようと買主は、隠れた瑕疵の存在のみならず、買主が瑕疵の存在を認識した上で、これを履行として認容したことについても主張・立証すべきことになる。また、買主からの完全履行請求がされる場合には、買主が瑕疵の存在を認識した上で、これを履行として認容したことについては、売主が抗弁として主張・立証すべきものと考えられる。
なお、「履行としての認容」というのは、あくまでも「客体として承認する」(客体性承認)というものであって、「性質を異議なきものとして承認する」(性状承認)というものではない。後者の場合には、瑕疵担保責任の追及そのものができなくなる。

 瑕疵のある特定物を受領した買主は、売主に対する完全履行請求権(修補請求権・代物交付請求権)を有しない。

 570条の瑕疵担保責任は、債務不履行責任ではないから、同条の準用する566条1項にいう損害賠償は、履行利益賠償でなく、信頼利益である。

 570条の瑕疵は、契約締結時に存在していた原始的瑕疵のみが該当する。

(2) 契約責任説
この点、売買契約においては、「瑕疵のない目的物を引き渡すこと」が当事者の効果意思を形成し、債務の内容になっていると考えるのが妥当である。したがって、570条は、債務不履行の一般法に対する特別法として位置付けるべきものと解する(正確にいえば、まず570条が適用され、同条によって規定されていない問題について債務不履行の一般法理によって処理される)。

 570条にいう「売買の目的物」には、特定物・不特定物の両者が含まれる。そもそも、条文の文言自体、両者を区別していないのである。もっとも、種類物の売買の場合には、履行がされるに先立って給付対象の特定がなされなければならないが(401Ⅰ)、瑕疵のある個性が選定されたときでも、買主が「この個物でよい」と認めて受領したときには(客体性承認)、特定されたものとして扱い、570条の特別法の適用、次いで債務不履行の一般法理による補充という処理をしたよいと考える(客体性の承認に加え、「性質もこれでよい」という承認[性状承認]まであれば、もはや不完全履行責任自体が問えなくなるとみるべき)。

 目的物を引き渡した時点で瑕疵があったならば、売主の怠ったことは不完全履行(債務不履行)と評価されるから、瑕疵の有無の判断基準時は、引渡時(受領時)とされるべきである。

 契約締結時に既に瑕疵があった場合(原始的瑕疵)も、570条によって処理される。つまり、契約責任説は「原始的不能の給付を目的とする契約も、有効である」との考え方を承認する立場といえる。

 契約責任説によれば、570条が準用する566条1項に基づき損害賠償は、債務不履行を理由とする損害賠償ととらえる。したがって、ここでの賠償は履行利益の賠償ということになる(このとき、瑕疵担保責任が無過失責任であるということは、ここでの損害賠償責任を債務不履行責任とすることの障害にはならない。売買契約における目的物引渡債務は結果債務として捉えるべきだからである)。

 570条が準用する566条には、解除と損害賠償しか挙げられていないが、瑕疵のある目的物の引渡しは不完全履行(債務不履行)なので、買主としては、債務不履行の一般法理に依拠して、売主に対し、完全履行請求権(修補請求権。可能な場合には代物交付請求権)を有することになる。

特定物と瑕疵修補請求(法定責任説前提)

特定物に瑕疵があった場合、買主は瑕疵修補請求できるか。

この点、特定物売買においては目的物に瑕疵があっても現状のまま引渡せば本旨弁済になる(483、493)。よって、原則として完全履行請求はできないと解する。もっとも、売主に修補能力がある場合にまでかかる原則を貫くのは当事者の合理的意思に反する。よって、かかる場合は、信義則上(1Ⅱ)、瑕疵修補請求できると解する。

(反対説)
瑕疵修補請求権は、瑕疵のある給付目的物を修補することで債務の完全な履行とするものであり、瑕疵のある物の給付が不完全な履行であることを前提として認められるものである。このため、570条に基づいて瑕疵修補請求権を認めることは、瑕疵のある物の給付を完全な履行と考える特定物ドグマと矛盾する。また、瑕疵修補の代わる損害賠償請求権は、いわば瑕疵修補請求権の変形物であるから、瑕疵に代わる損害賠償請求権を認めることも特定物ドグマと矛盾する。したがって、瑕疵修補請求権及び瑕疵修補に代わる損害賠償請求権は、570条の責任として認められない。

担保責任の損害賠償請求の範囲

担保責任の損害賠償の範囲が問題となる。思うに、570条の趣旨は、有償契約における等価的均衡を図るための法定責任である。また、引渡しによって履行は完了しているため、履行されていれば得られたであろう利益を観念できない。とすれば、損害賠償の範囲も、信頼利益にとどまると解する。

法律的瑕疵と瑕疵担保責任

目的物に法律上の制限があった場合「瑕疵」があったとして570条が適用されるか、それとも、566条が適用されるかが問題となる。

(a) 566条説
思うに、目的物に法律上の制限がある場合には、目的たる所有権が法律上の権利で制限されている場合と類似する。
よって、法律上の制限がある場合には、566条が類推適用されると解する。

(b) 570条説(判例)
思うに、瑕疵とは、物が通常有する品質・性能を欠くことをいい、法律的瑕疵もこれに含まれる。また、強制競売においては、その確実性を重視して、担保責任を可及的に否定することが現行民法の原則的態度である。したがって、570条が適用されると解する。

担保責任と消滅時効

除斥期間の起算点は、買主が売主に担保責任を追及しうる程度に確実な事実関係を認識したことを要するところ、それがなされるまで、時効によって消滅することはないのか。除斥期間の規定が消滅時効の規定を排斥するか問題となる。この点、担保責任が時効によって消滅しないとすると、売主の責任が永久に存続することもありうることになり、妥当でない。また、除斥期間の定めが、時効の規定を排斥すると解すべき理由もない。よって、担保責任は債権に準じて10年で時効消滅すると解する(判例)。

瑕疵担保責任と過失相殺の可否

瑕疵担保責任について過失相殺は可能か。415条で請求してきた場合には、過失相殺が可能であるのに、瑕疵担保責任で追及された場合には、過失相殺できないというのは不均衡である。両者の負担の公平な分担という観点からは、瑕疵担保の場合にも418条が類推適用ないし準用される都会すべきである。

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