論証集~行政法1~行政の意義・二元論・「法律の留保の原則」

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論証集  行政法総論

行政の意義・二元論・「法律の留保の原則」

●行政の意義
行政法理論は行政に関する法を対象とするところ、行政の概念をいかに定義するべきかが問題となる。
この点について、行政の積極的にとらえ、行政とは、法の下に法の規制を受けながら、現実具体的に国家目的の積極的実現を目指して行われる全体として統一をもった継続的な形成的国家活動であると定義する見解がある(積極説)
しかしながら、行政活動の内容が複雑で多種多様なものを含んでいる現代においては、その全てを包摂して積極的に定義することは、事実上不可能である。
憲法は国会に立法権(憲法41条)、内閣に行政権(憲法65条)、裁判所に司法権(76条)を付与している。そこで、このような三権分立を前提として行政を消極的にとらえ、行政とは、国家作用の中から立法作用と司法作用を除いたものと定義すべきである(控除説)。
このように定義することは、多様な行政活動を漏れなく行政の概念に含ませることができるという利点がある。また、絶対王政の下で、国王に集中していた国家権力から、立法権と司法権が分離・独立し、残ったのが行政権であるという歴史的沿革にも合致する。

●公法・私法二元論
公法・私法二元論とは、行政の分野は、権力の領域か非権力の領域かという本質的な性質の差異に基づいて、巨大な権力・権限を持つ行政と私人との関係にかかわる公法分野と私人の関係を規律する私法分野とに本来的に二分され、両者は異なった訴訟手続に服するだけでなく、実体法上も異なった解釈原理に従うとする考え方である。
公法・私法二元論は妥当か検討する。
公法私法二元論によると、警察、収用、租税などの公法分野については、本来的に権力の領域に属する分野であるから、法律による授権なしに、行政に権力性や公益優先性があるとする。
しかし、国民主権(憲法前文、1条)を採用する日本国憲法の下では、権力の源は国民の意思を代表する国会に求められる。そのため、行政権は、法律により個別的具体的に授権された限度で、国民に優越するにすぎない。したがって、行政の権力性や公益優先性は、行政の本来的性質から導かれるのではなく、法律による授権から導かれると解する。
よって、公法分野について、法律による授権なしに、権力性や公益優先性があるとする公法・私法二元論は妥当でない。

●「法律の留保の原則」の適用範囲
法律の留保の原則とは、行政活動を行う場合には事前にその根拠が法律で規定されていなければならないとする原則である。これは、行政活動に法律に基づき、法律に従って行わなければならないとする法律による行政の原理に由来する。
では、法律の留保の原則は、いかなる性質の行政活動に適用されるか。
この点について、例えば、経済規制や建築規制のように個人の権利を制約し義務を課す侵害行政については、自由主義的見地から法律の根拠を要求すべきである。他方、例えば、生活保護や公園の設置・管理のように国民や公衆に便益を与える給付行政については、法律で縛ることなく行政の自由度を高めておく方が、むしろ国民の利益になる。
したがって、自由主義の見地から、一方的に国民の権利を制限したり、義務を課したりする侵害的な行政活動に、法律の留保の原則が適用されると解する(侵害留保説)。


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