論証集~行政法3~行政機関の上下関係

この記事の所要時間: 20

論証集  行政法総論

行政機関の上下関係

●違法な訓令・通達は下級行政機関を拘束するか
訓令・通達は、行政組織内部における命令(行政規則)にすぎないため、一般国民を拘束するものではないが、行政組織の内部法規として下級行政機関を拘束する。
では、下級行政機関が訓令・通達を違法と判断した場合にも、下級行政機関はこれに拘束されるのか、この点に関する明文の規定が存在しないため問題となる。
この点について、下級行政機関に、法律による行政の原理から、法令遵守義務を負っているので、訓令・通達を違法と判断した場合には、これに拘束されないとも思える。
しかし、仮に、下級行政機関が訓令・通達を違法であると判断した場合に当該訓令・通達への服従拒否を認めるならば、行政組織内の秩序の保持と行政の一体性を確保できなくなるおそれがある。
したがって、下級行政機関は、訓令・通達を違法と判断した場合にも、行政の一体性を確保する見地から、原則として、これに拘束されると解する。
もっとも、訓令・通達の違法が重大かつ明白である場合には、行政行為の場合と同様に、下級行政庁といえどもこれに拘束されるいわれはない。
したがって、下級行政機関は、訓令・通達の違法が重大かつ明白である場合には、例外的に、これに拘束されないと解する。

●上級行政庁による下級行政庁が行った処分の取消し
上級行政庁が下級行政庁の行った処分を違法であるとして取消す場合、法令の明文の根拠は必要か。
この点について、法令の明文の根拠を必要とする見解は、上級行政庁が法律の根拠なく取消権を行使することは、法律上定められた権限分配を変動させることになり、法治主義に反すること、及び、上級行政庁の指揮監督権を行使して不都合を回避できるので、上級行政庁の取消権を認める必要がないことを理由とする。
しかし、下級行政庁がすでに法律上付与された権限を行使している以上、上級行政庁が法律の根拠なくそれを取り消したとしても、法律上定められた権限分配を変動させるものであるとはいえない。むしろ、既に行われた行政行為の違法を除去するものであるから、法治主義に資する。また、上級行政庁の指揮監督権の実効性を担保するためには取消権まで認める必要がある。
したがって、上級行政庁が下級行政庁の行った処分を違法であるとして取消す場合、法令の明文の根拠は不要である。

フォローする