論証集~行政法9~行政指導

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論証集  行政法総論

行政指導

行政指導と法律の根拠の要否

行政指導には法律の根拠が必要か。
この点について、行政指導は、相手方の任意の協力を前提とする事実行為にすぎない。
したがって、行政指導には法律の根拠は不要である。

このような見解に対しては、少なくとも、相手方の活動を規制することを目的として行われる行政指導(規制的行政指導)については、実質的には権力的な規制がなされる場合と変わりがないのだから、法律の根拠を必要とするとの批判も考えられる。

しかしながら、法律の根拠を必要とすると、法律の不備、欠陥を補って臨機応変に行政需要に対応できるという行政指導のメリットが失われてしまう。

よって、規制的行政指導に関しても、法律の根拠は不要である。

行政指導の限界の判断基準

行政指導は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものである。
したがって、相手方から指導に従う意思がない旨の表明がなされた場合において、それ以後もなお行政指導を継続することは違法である。そこで、どのような事情があれば、指導に従う意思がない旨の表明がなされ、以後の行政指導が違法となるのかが問題となる。
この点については、行政指導は相手方の任意の協力を基礎とする行政活動なのであるから、基本的には相手方の主観的意思を基準に判定すべきである。

しかしながら、相手方が少しでも拒絶の意思を示せば、それ以後は一切行政指導を継続することができないとするのは妥当ではない。行政指導には、相手方の拒絶、反発を説得するとの役割もあるところ、単に相手方が拒絶の意思を示したというだけで以後の行政指導の継続が許されなくなるとすれば、行政指導の役割を果たすことができないからである。
そこで、相手方が確固たる拒絶の意思を明確にしたか否かを基準とすべきである。この段階にまで至っているのであれば、もはや前述した行政指導の役割が果たせないことが明白だからである。

したがって、相手方が、行政指導にもはや協力できないとの意思を真摯かつ明確に表明している場合には、指導に従う意思がない胸の表明がなされたといえ、不協力が社会通念上正義の観念に反するといえるような特段の事情がない限り、行政指導を継続することは違法となる。
そして、「真摯」とは、行政指導の趣旨を理解しこれへの協力の可否について熟考過程を経たことをいい、「明確」とは、不協力を前提にして初めて成立し得る法関係の形成に着手する等、当該意思の表明が最終的意思に基づくものであることを明示するような具体的行為が存在することをいう。

以上を前提とすると、返戻に伴い行政指導をした場合に、行政指導の相手方が行政指導に従う意思がない旨を真摯かつ明確に表明したにもかかわらず、行政庁が当該行政指導を継続したといえる場合には、返戻は同7条に反することになる。

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