論証集~憲法1~享有主体性

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人権享有主体性

【法人】

法人は現代社会において一個の社会的実体として重要な活動を行っている。
そこで、性質上可能な限り認められると解する。

<限界>
思うに、法人のもつ巨大な社会的・経済的実力を考慮すべきである。また、法人は、その内部に人権を保障された自然人が存在するため、その構成員の人権を侵害するような法人の人権を認めるべきではない。
したがって、法人の人権は、その行使が自然人の人権を不当に制限するものであってはならないという基本的限界が存する。例えば、法人の政治活動の自由についていえば、法人がこれを享有すること自体は認めてよい。政治活動の自由は、表現の自由としての自己統治の価値が端的に現れる重要な権利であり、その自由はあらゆる領域において自由であることが望ましいからである。
しかし、組織力・経済力に優れ、強大な社会的影響力を持つ法人に対して全面的に上の自由を認めるならば、自然人の参政権を不当に制約する結果になるおそれがある。具体的には、構成員の政治的意思が抑圧されたり、健全な民主主義の実現が阻害されたりする可能性があるといえる。
よって、法人への政治活動の自由の保障の程度は、自然人に比較して自ずから制約されると言わざるを得ないのである。
※八幡製鉄所事件(最判昭45・6・24)

【外国人】

人権の前国家的性格や国際協調主義(98Ⅱ)からすれば、外国人にも人権保障を及ぼすべきである。そこで、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、すべて及ぶと解する。

<国政レベルの選挙権・被選挙権>
(a) 否定説
国民主権原理からすれば、国民が国政に対して直接ないし間接に参加する権利である参政権を日本国民に限ることは、権利の性質上認められる合理的な制約である。
よって、外国人に国政における選挙権・被選挙権は認められない。
(b) 肯定説
この点、日本に生活の本拠を置き、日本で生活している外国人は、日本国民と同じように日本の政治に関心がある。
また、国民主権原理とは、一国の政治のあり方はそれに関心を持たざるを得ない全ての人の意思に基づいて決定されるべきことをいう。
よって、永住外国人については、国政における選挙権・被選挙権を認めうる。
3 地方レベルの選挙権・被選挙権
思うに、地方公共団体の選挙権は、「地方自治の本旨」(92)から派生するものである。
また、15条1項と異なり、93条2項は「住民」と規定している。
よって、定住外国人に法律で選挙権を付与することは憲法上禁止されるものではない。

*最判平7・2・28
「憲法8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接に関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係をもつに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与することを講ずることは、憲法上禁止されるものではない」
→ 「住民」(93Ⅱ)とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民であるとして、在留外国人はこれに含まれず、在留外国人に対して地方公共団体における選挙権を保障したものとまではいっていない。

<公務就任権>

<公務就任権>

*最判平17・1・26
公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。それゆえ,国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではない。
そして,普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである。そうすると,普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。

<社会権>

25条
社会権は本来自己の属する国家によって保障される権利である。しかし、外国人も日本人同様、納税義務を負う以上、生存権保障も及ぼすべきである。ただし、生存権をいかに実現するかは、国家の財政事情と関連するため、この点において支障がない限り、法律によって生存権保障を及ぼすことは、憲法上許容されるものと解する。

*塩見訴訟(最判平1・3・2)
「『健康で文化的な最低限度の生活』なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、・・・同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することはできず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする(ため)、・・・立法府の広い裁量に委ねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄である。
・・・加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、・・・その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源のもとで福祉給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」

26条・28条
自由権的側面を重視し、要請説が有力。

【公務員】

<制限の根拠>
憲法が公務員関係の存在とその自律性を憲法秩序の構成要素として認めている (15、73④参照)。そして、自律性は行政の中立性の維持が保たれて初めて確保される。そこで、中立性維持という目的達成のために合理的で必要最小限の制約が認められる。

<労働基本権>
・ 権力的非現業公務員
団結権・団体交渉権・争議権、全て否定される。
・ 一般非現業公務員
団体交渉権・争議権が否定される。
・ 現業公務員
争議権のみ否定される。

全逓東京中郵事件(最大判昭41・10・26)
東京中央郵便局の従業員が、勤務時間内に職場大会に参加するため数時間職場離脱したが、これは公労法17条で禁止された争議行為であって、全逓労組役員としてこの離脱を説得した8名が、郵便法79条1項の郵便物不取扱罪の教唆に当たるとして起訴された事案。
判例は、比較衡量を行い内在的制約として必要最小限度の制約かどうかを判断し、争議行為を禁止する公労法17条等を合憲としつつも、刑事制裁は限定的に解した。
* 合憲限定解釈の手法を、最高裁として初めて本格的に採用したと評価されている。

都教組事件(最大判昭44・4・2)
都教組の幹部からの出した指令に基づいて組合員約2万4000人が一斉に休暇届を提出し、勤評反対運動を行ったため、この指令の配布等が地公法61条4号のあおり行為に当たるとして起訴された事案。
判例は、合憲限定解釈を行いつつ処罰の対象になる争議行為を「二重のしぼり」により限定した。

全司法仙台事件(最大判昭44・4・2)
地方公務員についての判決である都教組事件判決を、国家公務員についても同一判断を示した。
具体的には、争議行為のあおり行為等を処罰できるのは、争議行為の違法性が強い場合であって、争議行為に通常随伴して行われる行為でない場合に限定して(合憲限定解釈)、いわゆる「二重のしぼり論」を採った。

全農林警職法事件(最大判昭48・4・25)→国家公務員法違反で非現業
国公法争議行為禁止及び争議行為のあおり行為等への刑事制裁は合憲かが争われた事案。
公務員の地位の特殊性と職務の公共性一般を強調して国民全体の共同利益への影響を重視し、議会制民主主義・市場からの抑制力の欠如・代償措置の存在を考慮し、一律・全面的な制限を合憲として、全司法仙台事件判決を変更した。

全逓名古屋中郵事件(最大判昭52・5・4)→国家公務員で現業
全逓労組名古屋中央郵便局支部が勤務時間ない職場大会を行った際、労組役員が参加を呼びかけたが、当該職場大会は公労法17条で禁止された争議行為であって、この参加呼びかけ行為が郵便法79条1項の郵便物不取扱罪の幇助及び建造物侵入罪等にあたるとして起訴された事案。
判例は、刑事法上に限り争議行為を正当なものと評価する全逓東京中郵事件判決を変更した。

岩手教組学テ事件(最大判昭51・5・21)→地方公務員法違反で非現業
1961年の全国中学校一斉学力調査の際に、岩手教祖の役員が、実施に関する職命令を拒否し平常授業を行うことにより調査の実施を不能にするべきこと等を内容とする指示・命令を発し、その実行を慫慂したが、それらの行為が地公法61条4号のあおり行為に当たるとして起訴された事案。
判例は、合憲限定解釈の手法を取らず、都教組事件判決を変更した。

猿払事件上告審(最判昭49・11・6) →公務員の「政治的行為」と刑罰
国公法102条1項及び規則による公務員に対する政治的行為の禁止が右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否かを判断するにあたっては、禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の3点から検討することが必要である。

<政治活動>
*寺西判事補事件(最大判平10・12・1) →裁判官の政治活動
憲法は、近代民主主義国家の採る三権分立主義を採用しており、その中で司法権を担う裁判官は、独立して中立・公正な立場に立ってその職務を行わなければならないのであるが、外見上も中立・公正を害さないように自律、自制すべきことが要請される。したがって、職務を離れた私人としての行為であっても、裁判官が政治的な勢力にくみする行動に及ぶときは、・・・裁判の存立する基礎を崩し、裁判官の中立・公正に対する国民の信頼を揺るがすばかりでなく、立法権や行政権に対する不当な干渉、侵害にもつながる。
憲法21条1項の表現の自由は基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、その保障は裁判官にも及び、裁判官も一市民として右自由を有することは当然であるが、右自由も、もとより絶対的なものではなく、憲法上の他の要請により制約を受けることがある。裁判官に対し『積極的に政治運動をすること』を禁止することは、・・・右制約が合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならず、右の禁止の目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものでないなら、21条1項に違反しない。・・・裁判官が積極的に政治運動をすることを、これに内包される意見表明そのものの制約をねらいとしてではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、・・・単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎず、かつ、他の行為による意見表明の自由までをも制約するものではないところ、他面、禁止により得られる利益は、裁判官の独立及び中立・公正を確保し、裁判に対する国民の信頼を維持するなどというものであるから、得られる利益は失われる利益に比して更に重要なものというべきである。

【在監者】

憲法が収監関係の存在とその自律性を憲法秩序の構成要素として認めている (18、31参照)。とすれば、収容目的(拘禁・戒護・矯正教化)の達成のため必要最小限度の制限が認められる。

最大判昭45・9・16→被拘禁者の喫煙の自由
未決勾留は、刑事訴訟法に基づき、逃走または罪証隠滅の防止を目的として、被疑者または被告人の居住を監獄内に限定するものであるところ、監獄内においては、多数の被拘禁者を収容し、これを集団として管理するにあたり、その秩序を維持し、正常な状態を保持するよう配慮する必要がある。このためには、被拘禁者の身体の自由を拘束するだけでなく、右の目的に照らし、必要な限度において、被拘禁者のその他の自由に対し、合理的制限を加えることもやむをえないところである。
そして、右の制限が必要かつ合理的なものであるかどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、これに加えられる具体的制限の態様との較量のうえに立って決せられるべきものというべきである。
これを本件についてみると、監獄の現在の施設および管理態勢のもとにおいては、喫煙に伴う火気の使用に起因する火災発生のおそれが少なくなく、また、喫煙の自由を認めることにより通謀のおそれがあり、監獄内の秩序の維持にも支障をきたすものであるというのである。右事実によれば、喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれがあり、また、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想され、かくては、直接拘禁の本質的目的を達することができないことは明らかである。のみならず、被拘禁者の集団内における火災が人道上重大な結果を発生せしめることはいうまでもない。他面、煙草は生活必需品とまでは断じがたく、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対しては相当の精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。したがって、このような拘禁の目的と制限される基本的人権の内容、制限の必要性などの関係を総合考察すると、前記の喫煙禁止という程度の自由の制限は、必要かつ合理的なものであると解するのが相当であり、監獄法施行規則96条中未決勾留により拘禁された者に対し喫煙を禁止する規定が憲法13条に違反するものといえないことは明らかである。

よど号ハイジャック記事抹消事件(最判昭58・6・22)→未決拘禁者の閲読の自由
監獄法31条2項、監獄法施行規則86条1項の各規定は、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合においては、具体的事情のもとにおいて当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるときに限り、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ閲読の自由の制限を許す旨を定めたものとして、憲法13条、19条、21条に違反しない。
具体的場合における前記法令等の適用にあたり、当該新聞紙、図書等の閲読を許すことによって監獄内における規律及び秩序の維持に放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が存するかどうか、及びこれを防止するためにどのような内容、程度の制限措置が必要と認められるかについては、監獄内の実情に通暁し、直接その衝にあたる監獄の長による個個の場合の具体的状況のもとにおける裁量的判断にまつべき点が少なくないから、障害発生の相当の蓋然性があるとした長の認定に合理的な根拠があり、その防止のために当該制限措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り、長の右措置は適法として是認すべきものと解するのが相当である。

【未成年者】

心身共に未だ発達途上にあり、成人に比し判断力も未熟なため、成人と異なり未成年者を保護しその健全な成長を図る必要がある。
そこで、未成年者には、成年者と異なる制約を課すことも認められる。

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