学説判例研究~憲法~法人の人権と団体構成員の権利

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法人の人権と団体構成員の権利

団体によって個人の権利が制限される場合、個人の権利を守るためにどうするか
当該団体(法人)の「目的の範囲」(民法34条)を狭く解釈して、問題となるその団体の行為の効力を無効にする。この解釈にあたっては、団体を単一的に考えるのではなく当該団体の性質を考慮したり、憲法上保障される人権を間接適用したりして狭く解釈する。

最三判H8.3.19 南九州税理士会政治献金事件上告審

税理士会の性質と会員の自由について

税理士会の目的については、会則の定めをまたず、あらかじめ法(税理士法49条)において直接具体的に定められているもの(税理士の使命及び職責に鑑み、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うこと)であるとした。
目的の範囲を会社のほうに広範なものと解するならば、法の要請する公的な目的の達成を阻害して法の趣旨を没却する結果となるからである。
そこで、税理士会が強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、目的の範囲を判断するにあたっては会員の思想・信条の自由との関係で考慮が必要であるという。
すなわち、「構成員である会員には、様々な思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定され」るので、税理士会が「法及び会則所定の方式による多数決原理」「により決定した意志に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある」という。
そして本件で問題となっている「政治団体に対して金員の寄付をするかどうか」については、「団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題」なので、「選挙における投票の自由と表裏をなすものとして、会員各人が市民として個人的な政治的思想、見解、判断などに基づいて自主的に決定すべき事柄である」と判断した。

最高裁は、目的の範囲を考えるにあたって、会員の思想良心の自由を考慮しているから、憲法17条を間接適用していると評価することもできる。

本判決の判断枠組み

民法上の法人は、定款等で定められた目的の範囲内において権利を有し義務を負う(民43)

政治団体に金員を寄付することは税理士会の目的の範囲外にある(前項参照)

本件決議は税理士会の目的に反し無効

最大判S45.6.24 八幡製鉄政治献金事件上告審

会社の権利能力および人権共有主体性について

最高裁は、権利能力について、会社は自然人とひとしく社会の構成単位たる社会的実在であるから、社会的作用を負担するから、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものだとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、当然になしうると判示した。
また、人権教諭主体性については、会社が、自然人たる国民とひとしく国税等を負担している以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべきのみならず、憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきとした。

・「性質上可能なかぎり」についての批判
本判決は団体の種類を区別することなく、法人は人権を有するとしているが、団体の種類と人権の性質の組み合わせで享有主体となるか決するべきである。
人権の性質や法人の存在態様をまったく考慮していない本判決は支持できない。

近代憲法は中間団体による拘束から市民を解放することに意義があったはずである(樋口批判の重要点)。本判決のように一義的に法人の人権享有主体性を認めることは、個人の人権を侵害する危険を高めてしまう。
そこで、法人に享有主体性が認められる人権としては、国家との関係で特に保障する必要があるものに限られるべきである。
(例えば、報道機関に報道の自由、宗教法人に信教の自由、学校法人に学問の自由)

会社の政治献金、政治活動の自由について

会社は自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有する」もので、「政治資金の寄付もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるわけではない」と判断した。(政治献金は政治活動の自由の一環であると述べている)

これでは、資金力で政治を動かすことになりかねず、正常な民主主義のあり方を歪めてしまう。つまり、政党は資金力のある会社のいうことにしか耳を傾けなくなる。

政党の位置づけについて

政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素で、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるとしている。
最高裁は、政党がこのように重要な存在であるから、献金をしても問題ないという論理をとっている。

本判決は、政党に憲法的意味を与えた判決としても意義がある。
この政党の位置づけに関しては、概ね学説も同意している。

最三判S50.11.28 国労広島地本事件上告審

労働組合の活動の限界について

労働組合の主たる目的は、労働者の地位向上にあるが、労働組合の活動は固定的でなく、社会の変化とその中における労働組合の意義や機能の変化に伴って流動発展するものであり、今日においては、その活動の範囲は本来の経済的活動の域を超えて、政治的活動、社会的活動、文化的活動など広く組合員の生活利益の擁護と向上に直接間接に関係する事項に及び、範囲は拡大しているという。
しかし、労働組合の活動範囲は広くても、労働組合がその目的の範囲内においてするすべての活動につき当然かつ一様に組合員に対して統制力を及ぼすわけではないとして限界があることを示している。

組合員の協力義務と組合の統制権について

労働組合の活動として許されたというだけで直ちに組合員の協力義務を無条件で認めることは相当でない。具体的な組合活動の内容・性質・協力の内容・程度・態様等を比較考慮し、組合活動の実効性と組合員個人の基本的人権との調和という観点から組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な制限を加えることが必要であると示した。

※「使途を特定しない一般組合費による政治的活動は許されるか」という問題については、最高裁のいう労組の特殊性を基に考えると許されると解することになる。(労働組合が労働者の生活利益の擁護と向上のために、経済的活動のほかに政治的活動をも行うことはある程度必要と考える。)

労働組合の活動は、憲法28条によって保障されているため、この判決の論理は、法人一般にはあてはまらないので注意が必要である。