論証集~刑法各論~通貨偽造

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通貨偽造

1 通貨偽造及び行使罪

(1) 保護法益
通貨偽造罪の保護法益は、通貨の真正に対する公共の信用であると解する。

(2) 「偽造」の意義
通貨発行権者でない者が真正な通貨の外観を有する偽貨を作ることをいう。
偽造の方法に制限はないが、通常人をして真正の通貨と誤信させるに足りる程度の外観を有するものであることが必要である。その程度に至らないものは、模造と呼ばれ、通貨及証券模造取締法による処罰の対象となる。

(3) 「行使」の意義
偽貨を真正なものとして流通に置くことをいう。

(4) 偽造通貨公使罪と詐欺罪
偽造通貨を使用して商品を購入した場合、詐欺罪が成立するか。
偽造通貨の行使には一般に詐欺的行為を伴い、その存在は行使罪の構成要件上予定されている。
また、詐欺罪の成立を認めれば、収得後知情行使罪が、期待可能性が低いために軽く処罰されている趣旨を没却する。
よって、詐欺罪は成立しないと解する(判例)。

2 偽造通貨収得後知情行使罪
偽貨をそれとは知らずに収得した者が自らの損失を他人に転嫁する行為には、類型的に適法行為の可能性が低いと判断される故、収得後知情行使罪は、法定刑は極めて軽い。
このような趣旨が妥当するのは、適法な態様によって偽貨をそれとは知らずに習得した場合に限定されるのであって、窃盗、詐欺罪によって偽貨を取得した場合は含まれない。

3 通貨偽造準備罪
本罪は、通貨の偽造・変造の用に供する目的で器械又は原料を準備することによって成立する。
通貨の偽造・変造の用に供する目的には、行為者の用に供する目的と共に、他人の用に供する目的も含まれる(判例)。
また、本罪の成立のためには、この目的のほか、偽貨を行使する目的も必要であるとするのが通説及び判例である。

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