レポート集~行政学~オンブズマン制度

この記事の所要時間: 315

レポート集行政学

オンブズマン制度

オンブズマン制度とは、「市民を不当な行政権力から守るための制度」であるといえる。オンブズマン制度の概念さまざまだが、明確な概念として米国の政治学者ローワットは次のように定義している。①オンブズマンは、立法府の独立した非党派的な機関であり、憲法ないし法律によって規定され、行政を監察する。②オンブズマンは、行政の不法行為あるいは失政に対する一般からの特定の苦情を取扱う。③オンブズマンは、調査・批判・公表・権限を持つが、行政行為を取り消す権限は持たない。という三つの特徴を内包したものが「オンブズマン」の名に値し、そのように限定された意味合いで使用されねばならないとする。

このように「オンブズマン」制度を明確に定義づけることは、これが諸外国に普及した際に大きく役立ち、行政などの公権力を対象とする制度であることから、限定的に定義されてしかるべきであろう。

世界最初のオンブズマン制度が設置されたのは、1809年のスウェーデンである。オンブズマンとは、スウェーデン語の「代理人」に由来するものである。古代ローマにおいて国家の命令を人民の側から拒否することが可能な国家的機関である「護民官」の制度からヒントを得たものであるといわれている。

すなわち、オンブズマン制度は、行政統制のひとつとして、最初に北欧諸国において発達したものであった。その後、公的機関の過誤や権力の乱用から国民大衆を保護する必要性が生じ、行政オンブズマン、議会オンブズマン、そして軍事オンブズマンなどの制度が具体化して行った。ただ、ローワットによると、1955年には、スウェーデン、フィンランド、デンマークの北欧3カ国だけしかオンブズマン制度は存在せず、1962年にノルウェーとニュージーランドで制度化されたことがアメリカ合衆国をはじめとする他の諸国に急速に波及せしめるきっかけをつくったのだという。日本においても、地方レベルでは始まりを見せているが、国レベルでは当分望めそうにない。こうした世界的な制度化の流れを見ると、オンブズマン制度はそれほど歴史を経たものではないことがわかる。近年、世界的にオンブズマン制度の整備が広まっているのは、行政事務の増大に伴う行政の肥大化が国民に対し、適切に対処しえていないためであるというのが通説である。

各国様々ではあるが、オンブズマン制度とは、議会によって任命され、行政オンブズマンの場合はその職務を遂行するに当たって議会からは独立した地位に位置しているのが一般的である。公正・適正な行政を実現し国民の行政に対する信頼を確保することを職務とする。一般的な機能としては、苦情を基点とする行政の事後的統制、行政の監視・改善、行政休載・苦情処理、人間的な温かみのある対応などが挙げられる。

オンブズマン制度は、現代国家の多くで検討され、そして採用されつつあって、いまや行政統制への有力な方法となってきている。国にしろ、地方公共団体にしろ、その行政活動の大規模化と活発化が不可避であり、国民や市民の被る多様な不利益や不測の事態から守るために、行政を統制する制度と装置が要請されているのである。

行政への統制の方法として、オンブズマンの人数や職務の範囲、それに彼の権限をいかなる範囲に定めるかは極めて重要なことであり、制度化に当たって十分なる考慮を必要とする。さもなければ、むしろ国家や地方の活動に大きな障害ともなりかねない危惧を生み出すからである。

さらなる問題としては、オンブズマン制度が行政機関側における統制の制度や装置ではなく、議会から独立性をもつとはいえ、議会の任命によるチェック・システムであるところである。そこで「知る権利」の具体化として、情報公開を拒否された場合の救済のための審査や検討は、オンブズマンの活動に委ねることなど、オンブズマンが果たす機能に期待がかかっている。

フォローする