学説判例研究~刑訴~任意捜査

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任意捜査

任意捜査の位置づけ

(1) 刑事訴訟法は、強制処分について、要件・手続を一般的に法定し、かつ、個別具体的な執行に際して、令状主義の原則を定めている。

「強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。」(刑訴法197条1項但書)

「強制の処分」を伴う捜査=強制捜査

逮捕(刑訴法199条以下)、捜索・差押え・検証(刑訴法218条以下)など

① 国会による事前の一般的規制 ⇒ 強制処分法定主義(刑訴法197条1項但書)
② 裁判所による事前の個別審査 ⇒ 令状主義(憲法33条・35条)

(2) 強制処分を伴わない捜査とは何か。

(2) 強制処分を伴わない捜査とは何か。

任意捜査:「捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる」(刑訴法197条1項本文)

197条1項本文には、必要な取調ができるとしか規定されていない。しかし、ここでいう「取調」とは、捜査目的達成のため必要と認められる捜査活動全般を意味すると考えられていて、197条1項本文が任意捜査の包括的な根拠規定とされている。

(3) 任意捜査については、①・②の規制はない。
捜査機関が自らの判断と裁量でこれを実行できる。事前規制はない。

任意捜査と強制捜査

1 問題の所在

任意捜査ならば令状や法律の定めは不要であるが、強制捜査ならば令状主義・強制処分法定主義・令状主義の規制がかかり、法定の要件・手続を満たしていない場合には違法となる。刑訴法は197条1項但書にいう強制処分の定義をしていないため、任意捜査と強制捜査の違いが問題となる。

2 強制処分の意義

(1)強制処分意義の変遷

かつての通説:直接的な有形力行使が強制処分
⇒しかし、この基準によれば
①盗聴や写真撮影等の有形力を用いることなく権利侵害を行う捜査を強制捜査に含めることができない
②任意処分であっても有形力の行使を是認しうる場合があり、有形力行使すべて強制処分とするのは広すぎる

現在の通説(重要利益侵害説)

(2) 判例(昭和51年最高裁決定)

捜査において強制手段を用いることは法律の根拠規定がなければ許されない

「強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく,①個人の意思を制圧し,②身体,住居,財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など,特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味する」

強制手段に至らない有形力の行使は任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。

「任意処分であっても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当ではなく,必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと考えるべきである。」

(3) 「相当」とは
法益侵害の程度等(対象者の事情)と捜査の必要性・緊急性(捜査側の事情)を比較衡量し、「相当かどうか」を判断する。
必要性に見合った必要最小限度かそれをわずかに超える程度のものなら適法。