論証集~刑法各論~犯人蔵匿・隠避罪

この記事の所要時間: 250

犯人蔵匿・隠避罪

犯人隠避罪

「罪を犯した者」の意義

「罪を犯した者」(103)の意義が明文上明らかでなく問題となる。
思うに、犯人隠避罪の保護法益は国家の刑事司法作用の適正かつ円滑な運用である。
そして、たとえ真犯人でなくとも、犯罪の嫌疑に基づいて捜査・訴追されている者を匿う行為は、刑事司法作用の適正かつ円滑な運用を害しうる。
よって、「罪を犯した者」とは真犯人に限らず犯罪の嫌疑に基づいて捜査・訴追されている者をいうと解する(判例)。

親告罪において告訴がなされていない者等、訴訟条件を具備していない者や不起訴処分を受けた者は法律上訴追または処罰される可能性がある以上、「罪を犯した者」に当たる。


では、「罪を犯した者」に死者は含まれるか。
前述のように、103条の趣旨は、捜査、審判及び刑の執行等広義における刑事司法の作用を妨害する者を処罰しようとする点にある。
そうだとすると、捜査機関に誰が犯人か分かっていない段階で、捜査機関に対して自ら犯人である旨虚偽の事実を申告した場合には、それが犯人の発見を妨げる行為として捜査という刑事司法作用を妨害し、同条にいう「隠避」にあたることは明らかである。また、この点は、犯人が死者であっても変わりはない。したがって、「罪を犯した者」に死者も含まれる。
これに対して、公訴時効の完成、刑の廃止、免訴や無罪判決の確定、恩赦、親告罪における告訴権の消滅等により、訴追を受け処罰される可能性がなくなった者は、その者との関係では刑事司法作用が危殆化されることはない以上、「罪を犯した者」には該当しない。

身代わり犯人

身代わり出頭行為が「隠避」にあたるか。身柄拘束中の場合、刑事司法作用を害しないとも思えるため問題となる。

思うに、犯人隠避罪の保護法益は国家の刑事司法作用の適正かつ円滑な運用である。そして、身代わりの出頭がなされれば、真犯人の身柄拘束状態に変化をもたらす可能性を生ぜしめる。
また、身代わり犯人に対する取調、他の関係者の事情聴取により、捜査の円滑な遂行に支障を生じさせることは十分可能である。
よって、身代わり出頭行為は身柄拘束中であっても「隠避」にあたる(判例)。

故意 「罰金以上の刑にあたる」かどうかの具体的認識は不要であり、罰金以上の刑にあたる犯罪を犯したことの認識で足りる(判例)。

犯人による犯人隠避罪の教唆

(a) 否定説
この点、犯人が犯人蔵匿罪の主体となり得ないのは、その期待可能性の欠如に基づくものである。
とすれば、正犯としての期待可能性がない以上、共犯としての期待可能性もないと解すべきである。
よって、犯人は犯人蔵匿罪の教唆の罪責を負わない。

犯人による犯人隠避罪の教唆

(a) 否定説
この点、犯人が犯人蔵匿罪の主体となり得ないのは、その期待可能性の欠如に基づくものである。
とすれば、正犯としての期待可能性がない以上、共犯としての期待可能性もないと解すべきである。
よって、犯人は犯人蔵匿罪の教唆の罪責を負わない。

(b) 肯定説
この点、犯人自身の隠避行為が罪にならないのは、適法行為への期待可能性がないからであるが、自己のためといっても他人に犯罪まで犯させることは、もはや期待可能性がないとはいえない。
よって、犯人は犯人隠匿罪の教唆の罪責を負う(判例)。

(c) 肯定説(判例)
犯人自身の隠避行為が罪にならないのは、これらの行為は刑訴法における被告人の防御の自由の範囲内に属するからである。
とすれば、他人を教唆してまでその目的を遂げようとすることは、法が認める防御権の範囲を逸脱するものである。
したがって、犯人隠秘罪の教唆犯が成立する。

フォローする