論証集~刑法各論~背任罪

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背任罪

他人の事務

譲渡人の登記協力義務は「他人の事務」にあたるか。
登記協力義務は、抵当権設定契約の債務の履行として自己の事務であるとも思えるため問題となる。

この点、他人の事務とは他人固有の事務をいう。
そして、登記義務者の協力がなければ譲受人はその権利を保全することができないのであるから、その限度で、譲渡人の登記協力義務は譲受人の財産保全行為の一部をなし、譲受人固有の事務といえる。
よって、登記協力義務は「他人の事務」にあたる。

図利・加害目的

図利加害目的の意義が問題となる。
思うに、故意とは別個に存在する図利加害目的の機能は、本人図利目的の場合を除くという点に求めるべきである。
そこで、図利加害目的は未必的なもので足りると解する。

(香城説)
背任罪は、任務違背行為及び損害発生の認識に加え図利加害目的を要求している。
そこで、図利加害目的は、損害発生等の認識とは区別された、本人の利益を図る動機の有無の問題であり、これがある場合には本罪の目的が欠けるといえる。
そして、本人図利と自己又は第三者図利が併存している場合には、主としていずれの動機に重きがあったかによって判断すべきである。

任務違背行為

「任務に背く行為」の意義が問題となる。
思うに、背任罪の本質は信任関係に違背して財産的損害を与える点にある。
とすれば、「任務に背く行為」とは誠実な事務処理者としてなすべきと法的に期待されるところに反する行為をいうと解する。

財産上の損害

背任罪における「財産上の損害」は全体財産の減少を意味し、その減少の有無は経済的見地から決すべきである。

背任罪と横領罪の区別

他人のための事務処理者が自己の占有する他人の物を不法に処分した場合、横領罪と背任罪どちらが成立するか、横領罪と背任罪の区別が問題となる。

1 領得行為説
思うに、背任罪に比べて横領罪の法定刑が重いのであるから、背任罪と横領罪の区別は横領罪が成立するか否かによって決すべきである。
そして、背任罪は背信罪、横領罪は背信的横領罪と解されるから、その区別は結局領得行為の有無で決せられる。
よって、横領罪と背任罪の区別は、領得行為すなわち自己の占有する他人の物を委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする行為の有無によって区別すべきである。

2 権限逸脱・濫用説
思うに、権限内で行動する場合には、濫用であっても本人に一応効果が及ぶのであり、不法領得の意思の発現があったとまではいえない。
他方、権限逸脱があれば、不法領得の意思の発現があったといえ、横領行為に当たる。
また、横領罪が「財産上の利益」には成立しないこと、背任罪が罰金刑の場合もあるのに対して横領罪の方が重罰であることに鑑みれば、背任罪は横領罪の補充規定として検討すべきである。
したがって、背任罪は権限濫用、横領罪は権限逸脱行為として、行為態様で区別すべきである。
もっとも、権限内であっても、委託の趣旨から絶対に許されない行為については、実質的権限逸脱行為として横領罪が成立すると解する。

この見解によっても、権限の逸脱に当たるか、濫用に当たるかを判断するのに判例でいう名義・計算の概念を使うことは可能と思われる。
井田・刑法各論P144「判例は、基本的に不法領得の意思が認められれば横領罪となり、なければ背任罪となるとしている。このような基準と、『権限逸脱』『権限濫用』の基準との関係が問題となるが、それらはほぼ一致するものと考えられる。
不法領得の意思があるというためには、財物を処分する権能を所有者から奪い、所有者でなければできない行為を行うことが必要であるが、それは自己または第三者の名義(形式的)・計算(実質的)において財産的処分が行われれば、肯定することができる(逆に本人の名義を用い、または実質的に法的・経済的な効果を本人に帰属させる意思で財産的処分が行われれば背任罪となる)。それは、権限がない(権限逸脱)ということとほぼ一致するのである。他人の金を自己または第三者の名義・計算で処分するということはもはや権限を越えているといえるからである。」

試験前暗記用レジュメ~刑法~背任
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