論証集~刑法各論~証拠隠滅罪

この記事の所要時間: 257

証拠隠滅罪

共犯者の証拠隠滅

共犯者の刑事事件に関する証拠を隠滅した場合、証拠隠滅罪(104)は成立するか。
思うに、同条が自己の刑事事件に関する証拠隠滅を不可罰としたのは、期待可能性が類型的に低いからである。
とすれば、共犯者と自己に共通の証拠を隠滅することはなお期待可能性が低いといえる。
よって、証拠隠滅罪は成立しないと解する。
もっとも、もっぱら共犯者のためにする意思の場合は、期待可能性が低いとはいえないので証拠隠滅罪は成立すると解する(判例)。

共犯者を蔵匿する行為

共犯者も重要な証拠であるが、自己の証拠である以上、証拠隠滅罪は成立しない。
では、犯人蔵匿罪は成立するか。
思うに、犯人蔵匿罪と証拠隠滅罪の保護法益は、国の刑事司法作用という同一のものである。
また、証拠隠滅罪としては期待可能性のない行為が犯人蔵匿罪として期待可能となるものでもないから、犯人蔵匿罪としても期待可能性を有しないと解すべきである。
よって、犯人蔵匿罪も成立しないと解する。

*旭川地判昭57・9・29
「共犯者に対する犯人蔵匿、隠避が、行為者である被告人自身の刑事被告事件に関する証憑湮滅としての側面をも併有しているからといって、そのことから直ちにこれを不可罰とすることはでき」ず、「もはや防禦として放任される範囲を逸脱するものというべきであ」る、として犯人蔵匿罪の成立を認めている。

参考人の虚偽供述

参考人が捜査官に虚偽供述をなすことは、証拠隠滅罪にあたるか。
(a) 肯定説
この点、偽証罪の法定刑の重さを考えれば、その他の虚偽供述を不問に付すのが法の趣旨とはいえない。
思うに、虚偽供述は文書化によって物理的存在である証拠方法になるのであるから、その場合には証拠偽造罪の成立を認めるべきである(判例)。

(b) 否定説
思うに、①刑法104条にいう「証拠」は,有形の「証拠方法」(参考人・書面)に限られ,無形の「証拠資料」(供述・記載内容)を含まないこと,②169条以下の偽証罪規定は、特に法律により宣誓した証人の虚偽供述のみを処罰対象としており、虚偽供述は偽証に限って処罰する趣旨と考えられる。とすれば、それ以外の場合を証拠偽造として処罰するのは法の趣旨に反する。したがって、証拠偽造罪は成立しない。

*千葉地判平7・6・2
「参考人が捜査官に対して虚偽の供述をすることは、それが犯人隠秘罪に当たり得ることは別として、証憑偽造罪にはあたらないものと解するのが相当であ」り、虚偽供述に基づいて供述調書が作成された場合も、「供述調書は、参考人の捜査官に対する供述を録取したに過ぎないものであるから、」やはり証憑偽造罪を構成することはないとする。

虚偽内容の供述録取書への署名押印

書面化したことで犯罪の成否に差が出るのは不均衡であることから、供述に基づいて調書が作成された場合も同様である。
供述調書の場合,供述を確認したにすぎない受け身的色彩が濃く,これを処罰することは虚偽供述を処罰するに等しい

虚偽の上申書の作成提出

虚偽の上申書等の供述書は,内容における明確性,確実性,再認の容易性,
困難性といった点で供述とは異なり,自ら文書にしたという積極的な行為の場合には,不真正の証拠を作出したと解釈しやすく,また,保護法益の侵害性の程度も高く,その処罰によって捜査協力を萎縮させる程度も低いというのである。

犯人による証拠隠滅の教唆

犯人による犯人隠匿隠避罪と同様の議論が存在する。

フォローする