論証集~刑法各論~毀棄隠匿罪

論証集~刑法各論~毀棄隠匿罪

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毀棄隠匿罪

保護法益
所有権その他の本権。
財物を回復不可能な形で破壊することもある点で、法益侵害の程度は決して低くない。
しかし、領得罪と異なり、利欲犯的要素がないため、法定刑は軽い。

「損壊」の意義
そもそも、毀棄罪の本質は、財物の効用を滅失させてその利用を妨げる点にある。
とすれば、「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為[97]をいうと解する(判例・通説)。

●大阪高裁H13.3.14
器物損壊罪にいう「損壊」とは、物質的に物を害すること又は物の本来の効用を失わしめることをいうと解される。
そして、物の本来の効用を失わしめることに、物の利用を妨げる行為も含まれること、利用を妨げた期間が一時的である場合や、犯人に返還する意思があったような場合も含まれ得る。
しかし、利用を妨げる行為が物の本来の効用を失わしめ、「損壊」に該当するといっても、利用を妨げる行為がすべて「損壊」に当たるわけではなく、「損壊」と同様に評価できるほどの行為であることを要するものというべきである。
この観点から、被害者からみて容易に発見することかできない隠匿行為、占有奪取現場からの持出し行為や長時間にわたる未返還といった事情が考慮されることになる。
換言すれば、利用を妨げる行為にも当然程度というものかあり、その程度によっては効用を失ったと同等には評価することができず、「損壊」には当たらない場合があるというべきである。
また、原判決の解釈では窃次罪の成立要件のうち、不法領得の意思のみを欠いたことによって器物損壊罪が成立することになりかねないが、窃盗罪と器物損壊罪との間に一般にそのような補完的な関係があるとみることはできない。
すなわち、確かに占有奪取行為があれば、多かれ少なかれ、事実上その物の利用を妨げることになるが、法は、そのうち「損壊」と同様に評価できるものは器物損害罪に当たるか、それに至らない場合は、たとえ社会的に非難されるべき行為ではあっても、刑法上、敢えてこれを不問に付す趣旨とするのが相当である。

●神戸地裁尼崎支部H12.8.30
器物損壊の事実については、かばんの中に入っていると予想される携帯電話や、Cが別に所持していた携帯電話を使用させないことが、被告人らの目的の一つであったこと、Cは当時、助けを呼ぶために正に携帯電話を必要とする状況にあったにもかかわらず、被告人らの占有奪取行為により携帯電話を使用することを妨げられる結果となったことが認められるところ、器物損壊罪にいう毀棄は、必ずしも財物を有形的に毀損することを要せず、隠匿その他の方法によって財物を利用することができない状態におくことをもって足り、その利用を妨げた期間が一時的であると永続的であると、また、犯人に後に返還する意思があったと否とを問わないものと解されるから、被告人らの占有奪取行為は器物損壊罪を構成し、かつ既遂に至っているものというべきである。

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