学説判例研究~会社法~レジュメ~取締役の責任

学説判例研究~会社法~レジュメ~取締役の責任

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会社法レジュメ

取締役の責任

役員等=取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(423Ⅰ)

解任・解職

Q取締役を解任するにはどうすればよいか?
・取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができる(339Ⅰ)。また、この株主総会の決議は特殊普通決議(341)である。

・株主総会が解任議案を否決した場合には、少数株主権として株主は解任の訴えを提起できる(854)。
・854の「重大な事実」は、株主決議で解任する場合の「正当の理由」よりも狭いと解される。
・原告となり得る資格は854Ⅰ各号。

Q取締役が解任されるべき理由がないのに解任された場合に、その取締役はどうすべきか?
・取締役の解任には理由は必要とされないが、正当な理由なしに解任する場合には、
・取締役は会社に損害賠償を請求できる(339Ⅱ)。

Q代表取締役を解職させるにはどうすればよいか?
・取締会は、監督機能として代表取締役を解職できる(362Ⅱ③)。

◇差止する方法
・監査役(リークエ183頁)
監査役は、取締役が「会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」(385Ⅰ、委員会設置会社の監査委員→407Ⅰ)。
〈385と360は殆ど文言同じ。実務としては裁判所に仮処分を求めて実効性を図る。〉

・株主(リークエ233頁)
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が「会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」(360、委員会設置会社の執行役について→422)。

会社に対する責任

Q会社が取締役を訴える場合に、だれが会社を代表して訴えを提起するのか?(リークエ184頁)
・取締役と会社とが反対当事者となって訴訟をする場合、当該訴えについては監査役が会社を代表する(386Ⅰ)。

Q代表訴訟とは何か?(リークエ228頁~)
・会社のために株主がする、役員等の責任追及などの訴えである。
・役員等の責任追及は、本来なら権利者である会社が行うべきである。しかし、会社が取締役に対して訴えを提起する場合に、会社を代表するのは監査役であって(386Ⅰ)。役員等の間の同僚意識などから、会社が役員等の責任追及を怠ることもありうる。そこで、法は株主に訴えの提起をすることを認めた。

◇代表訴訟の要件(訴訟要件)
<対象(いずれかに当たればよい)847Ⅰ>
① 役員等のほか、発起人・設立時取締役・設立時監査役・精算人の責任を追及する訴え。
② 利益供与を受けた者からの利益返還を求める訴え(120Ⅲ)。
③ 不公正な価額で株式・新株予約権を引き受けた者に差額の支払を求める訴え(212Ⅰor285Ⅰ)。

※①については、847Ⅰは特定の条文を挙げていないので、役員等が会社に対して負う責任のうち、
どこまでのものがこの訴えの対象になるか問題となる。
この点、「役員等が会社に対して負担する一切の債務がこれに含まれるとする見解」と、
「会社法に規定された役員等の責任(任務懈怠など)に限られるとする見解」がある。
この対立につき、最判H21・3・10は、「会社法が取締役の地位にもとづいて取締役に負わせる
責任のほか、取締役が会社との取引により負担した債務についての責任も代表訴訟の対象になる」
として、前者に寄ったといえる。

<提起する資格>
・六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第189条第2項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)でなければならない(847Ⅰ)。
・原則として訴訟係属中は株主であり続けなければならない(851例外規定)。
・当該株主や第三者の不正な利益を図り、または会社に損害を加えることを目的とする場合、提訴請求・代表訴訟提起ができない(847Ⅰ但、同Ⅴ但)。

 <善管注意義務・忠実義務>

善管注意義務:役員等は、その職務を善良な管理者の注意をもって行わなければならない(329Ⅰ括弧、330、402Ⅲ、民644)。
忠実義務:取締役と執行役は、法令・定款ならびに株主総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を行わなければならない(355、419Ⅱ)。

両者の関係→忠実義務は善管注意義務を敷衍して一層明確にしたにとどまり、善管注意義務とは別個の高度な義務ではない(最大判S45・6・24)

※債務不履行責任(民415)
会社と取締役とは委任関係にあるため、取締役は善管注意義務を負う(民644)。よって、義務を果たさなければ委任関係に基づく債務の不履行として損害賠償責任を負う(民415)。

善管注意義務違反・忠実義務違反は、任務懈怠であり、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(任務懈怠責任:423Ⅰ)。

<任務懈怠責任>

任務懈怠責任が認められる要件
①任務懈怠があること。
②会社に損害があること。
③任務懈怠と損害に因果関係があること。
④役員等の帰責事由があること。

 ここでいう帰責事由とは、故意または過失を指す。
さらに、過失とは行為義務違反であると捉えられている。よって、任務懈怠があることが証明されれば役員等の側が無過失を主張する余地は無くなる。(※責任を否定すべき事由として、故意・過失の無いことのほか、期待可能性が無いこと。)

・法令違反行為 (リークエ221頁)
取締役・執行役は職務を行う際には、法令を遵守しなければならない(355、419Ⅱ)。法令違反行為(会社に法令違反をさせるような業務執行)は任務懈怠となる。

※ここで言う法は、会社や株主の利益を保護するための規定に限られず、会社が事業を行う際に遵守すべき法令がすべて含まれる(判例)。

取締役・執行役が、ある行為につき法令違反であると認識して行う場合、任務懈怠責任を免れない。ある行為が法令違反であることを認識せずに行った場合、それについて過失が無かったことを証明できれば、会社に対して責任を負うことはない。

※認識があっても他の行為をする期待可能性がなかった場合や法令違反になる可能性を認識していたにすぎない場合は帰責事由がないとする余地はある。

・経営判断の誤り (リークエ220頁)
経営判断原則:裁判所は経営判断に事後的に介入しないという考え。判例で採用されている。任務懈怠は容易には認められない。

・監督義務違反 (リークエ222頁)
取締役会は、取締役の職務の執行を監督する(362Ⅱ②)。

個々の取締役は、注意義務の一内容として、他の取締役の職務の執行を監視する義務(監視義務)を負う。取締役がこのような義務に違反すれば、その任務を怠ったことになる。

・内部統制システム整備義務<利益衝突についての特別規定>
利益衝突の場面(競業取引、利益相反取引、報酬等の決定)で取締役・執行役が自己の利益を図ることは、忠実義務(355、419Ⅱ)に違反する。これによって会社に損害生じれば損害賠償を負う(423Ⅰ)。

・利益相反取引
[直接取引]
取締役が自己または第三者のために会社と取引をしようとするときには、取締役会の承認を受けなければならない(356Ⅰ②、365Ⅰ)。

※「ために」…取引の法律上の当事者になるのが誰かというこうと(自己または第三者の「名で」)を示す。取締役自身が会社の相手方となって取引を行う場合、および、取締役がほかの自然人や会社を代理・代表する場合がそこに含まれる。

[間接取引]
会社が、取締役以外の者との間で、会社と取締役の利益が相反する取引をしようとするときには、取締役会の承認を受けなければならない(356Ⅰ③、365Ⅰ)。

※間接取引については、その外延がどこまでかというのが問題となる。明示されている債務保証のほか、会社が取締役の債務を引き受けること、取締役の債務について担保を提供することが含まれるか問題。通説は、会社と第三者の間の取引であって、外形的・客観的に会社の犠牲で取締役に利益が生じる形の行為が規制の対象になるとする。

[取締役の承認]
利益相反取引をしようとする取締役(間接取引なら会社を代表する取締役)は、取締役の承認の際に、当該取引について重要な事実を開示しなければならない(356Ⅰ柱、365Ⅰ)。

※繰り返し同種の直接取引が行われる際には包括的な承認を行うことも場合によっては可能。また、承認の時期は取引後でもよい。

当該取締役は、当該取引の後遅滞なく、それについての重要な事実を取締役に報告しなければならない(365Ⅱ)。取引について承認を受けたかどうかに関わらず必要。

[承認をうけない取引の効力]
判例は間接取引の相手方や、会社が取締役を受取人として振り出した約束手形の譲受人との関係で、取引の安全を図るために、相対無効説と呼ばれる考えを採用した。

相対無効説によれば、取引は無効であるが、会社がそれを主張するためには、第三者の悪意を主張・立証しなければならない。第三者の重過失も、悪意と同視すべきとする。

会社の利益を保護するものだから、相手方から取引の無効を主張することができない(判例)。

[責任]
取締役会の承認を受けたかどうかに関わらず、要件を満たせば取締役・執行役は責任を負う(423Ⅰ)。会社に損害が生じた場合、取締役の承認があったかどうかに関わらず、取締役・執行役に任務懈怠があると推定される(同条Ⅲ)

・競業取引  例:会社の機会奪取・従業員の引き抜き。
取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときには、取締役会の承認を受けなければならない(356Ⅰ①・365Ⅰ)。※「ために」…取引の実質的な利益が誰のものになるか
(自己または第三者の「計算で」)を示している(通説)。

[範囲]
競業取引として規制の対象になる取引は、会社が実際にその事業において行っている取引と、
目的物と市場(地域・流通段階等)が競合する取引である。

[取締役の承認]
利益相反取引と同じ。

[承認をうけない取引の効力]
利益相反取引とは異なり、無効ではない。
競業取引は会社以外の者と取締役の間の取引だから、無効になっても会社にとっては救済にならない。

[責任]
承認を受けたとしても、要件に当てはまれば任務懈怠責任を負う。ただし、この場合に任務懈怠が容易に設定されるべきでない。

承認を受けていない場合は、会社法の規定に違反したことになり任務懈怠となり、それによって取締役・執行役または第三者が得た利益の額が、損害の額と推定される(423Ⅱ)。

・報酬等の決定
取締役が会社から受ける報酬等は、定款か株主総会の決議によって定めなければならない(361Ⅰ)。
ストック・オプションの付与(業績連動型報酬としての新株予約権付与)も職務執行の対価として財産上の利益を会社から受けるので、361条の適用を受ける。

※委員会設置会社では、報酬委員会が執行役等の報酬内容を決定する。

[株主総会決議を経ない報酬の支払・変更]
定款と株主総会決議のいずれの定めもないのに支払われてもそれは無効である。この場合、取締役の側から会社にたいして支払を求めることもできない。

当初は無効な報酬等の支払であっても、事後的に株主総会は追認できる(判例)。

定款または株主総会決議によって具体的な報酬内容が決定されれば、契約内容となって会社と取締役を拘束する。よって、その後株主総会が無報酬とする旨の決議をしても、取締役本人が同意しない限り当該取締役の有する報酬請求権は無くならない。