論証集~刑法各論~汚職の罪

論証集~刑法各論~汚職の罪

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汚職の罪

職権濫用の罪

1 職権濫用罪の成立と相手方の認識
職権濫用罪の成立に相手方の認識は必要か。
この点、本罪を強要罪と同様に捉え、これを肯定する見解もある。
しかし、本罪は強要罪より法定刑が軽く、強要罪の特別類型と捉えることはできない。たとえ相手方の認識がなくとも、被害者となる国民の権利・自由は害されうる以上、本罪の成立を肯定すべきである。
よって、相手方の認識は不要と解する。

2 職権濫用罪の成立と職権行使の外観
職権濫用罪の成立に、職権行使の外観は必要か。
この点、本罪の保護法益は、公務執行の適正とこれに対する国民の信頼及び被害者となる国民の自由や権利にある。そして、事後的にでも職権の濫用があったことが明らかとなれば、国民の信頼は害されうるし、また、国民の自由や権利も害されうる。
よって、職権行使の外観は不要と解する。

賄賂罪

1 保護法益
職務の公正とこれに対する国民の信頼を保護法益とする。なお、賄賂とは公務員の職務に関する不正の報酬としての一切の利益をいう

2 「職務に関し」の意義
「職務に関し」の意義が明文上明らかでなく問題となる。
この点、「職務に関し」を厳格に解すると、現実に公務員がその事項につき具体的な事務分配を受けている場合に限られるはずである。
しかし、そのような形式的解釈では法益保護を十分に図れない。
そこで、「職務に関し」とは、①具体的のみならず、一般的抽象的職務権限に属する場合も含み、更に、②職務に密接関連する行為(準職務行為・事実上所管する職務行為)に関する場合も含む。

「職務に関し」の具体例
① ロッキード事件(丸紅ルート)、最大判平7・2・22
運輸大臣の職務権限につき、行政指導として民間航空会社に対し特定機種の選定購入を勧奨することも含まれる。
そして、内閣総理大臣がこの勧奨をするように運輸大臣に働きかける行為は、行政各部をしき・監督する内閣総理大臣の地位・権限に照らすと、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有し、一般的には内閣総理大臣の指示としてその職務権限に属する。
② 芸大バイオリン事件、東京地判昭60・4・8
国立大学音楽部教授が指導中の学生に対し、特定の楽器商の保有する特定の楽器を購入するよう勧告ないし斡旋する行為は、職務密接関連行為に当たる。

3 転職前の職務に関する賄賂罪
一般的職務権限を異にする他の公務員に転じた後に、前の職務に関係し賄賂を収受した場合に賄賂罪が成立するか、「職務」の意義と関連して問題となる。
この点、「職務」とは現在のものに限られるとすると、公務員が退職したら事後収賄罪が成立し、転職したら「公務員であった者」には該当せず不可罰となりかねず妥当でない。思うに、賄賂罪の保護法益は公務の公正とそれに対する国民の信頼にある。とすれば、過去にその者が担当した職務に関して賄賂の収受がなされた場合、たとえ転職によって一般的抽象的職務権限を異にしても、賄賂を収受した者が公務員である限りその過去の職務及び将来担当する職務の公正とそれに対する国民の信頼が害される。
そこで「職務」とは、自己の職務であれば足り、過去・現在・将来の職務を含むと解する。よって、賄賂罪が成立すると解する(判例)。

3 転職前の職務に関する賄賂罪
一般的職務権限を異にする他の公務員に転じた後に、前の職務に関係し賄賂を収受した場合に賄賂罪が成立するか、「職務」の意義と関連して問題となる。
この点、「職務」とは現在のものに限られるとすると、公務員が退職したら事後収賄罪が成立し、転職したら「公務員であった者」には該当せず不可罰となりかねず妥当でない。思うに、賄賂罪の保護法益は公務の公正とそれに対する国民の信頼にある。とすれば、過去にその者が担当した職務に関して賄賂の収受がなされた場合、たとえ転職によって一般的抽象的職務権限を異にしても、賄賂を収受した者が公務員である限りその過去の職務及び将来担当する職務の公正とそれに対する国民の信頼が害される。
そこで「職務」とは、自己の職務であれば足り、過去・現在・将来の職務を含むと解する。よって、賄賂罪が成立すると解する(判例)。

→ かかる見解には、公務を退いている間は事後収賄罪に当たらない限り処罰されないこととの均衡を失するとの批判があるが、現在公務員である者が収受する場合と、そうでない者の収受とでは、職務に対する信頼を害する程度が異なるとの反論が可能である。

あっせん収賄罪
公務員としての地位利用の要否
公務員が積極的にその地位を利用してあっせんすることは必要ではないが、少なくとも公務員としての立場であっせんすることが必要とし、単なる私人としての行為は本罪を構成しない(判例)。

●賄賂罪と恐喝罪の関係
この点、収賄が恐喝的手段で行われた場合であっても、公務員に職務執行の意思がないときは恐喝罪だけが成立する(判例)。
では、職務執行の意思があるときはどうか。
この点については、恐喝という手段を用いても、公務の公正と信頼が害される。また、贈賄罪の成立には、必ずしも完全な自由意思を要するものではなく、不完全ながらも贈賄すべきか否かを決定する自由が保有されていれば足りると考える。
したがって、上記要件を満たす場合には、収賄者には、賄賂罪と恐喝罪が成立し、観念的競合となる。また、交付者には贈賄罪が成立する(判例)。

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