試験前暗記用レジュメ~刑法~強盗

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刑法暗記ノート

強盗の罪

●強盗罪(236条1項)

強盗罪とは、暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取する犯罪である。
本罪の主体に制限はない。

客体

①他人の占有する他人の財物である。また、②自己の財物であっても、他人の占有に属するか、公務所の命により他人が看守した場合は他人の財物とみなされる。

行為

(1)強盗罪にいう暴行とは、人に対するものであって、かつその反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使をいう。これは、暴行概念における最狭義の暴行にあたる。

通説・判例は、強盗の手段たる暴行・脅迫であるか否かは、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものか否かという客観的基準により決定されるものであり、具体的被害者の主観を基準とすべきでないとしている。

いわゆる単純なひったくりは窃盗であるが、被害者が財物を手放そうとしないのに強引に引きずったり、あるいはオートバイや自動車で走りながら奪う行為は強盗とされる。

暴行・脅迫の相手方は、必ずしも財物の占有者である必要はない。

強取とは、暴行脅迫により、相手方の反抗を抑圧して、その意思によらずに、財物を自己又は第三者の占有に移すことである。

強取といえるためには、①行為者の暴行脅迫による被害者の反抗抑圧と、財物の奪取との間に因果関係がなくともよいとするのが通説・判例である。つまり、相手の反抗を抑圧できる程度の暴行、脅迫を加えれば相手が必ずしも反抗抑圧されずに財物を交付してきたとしても、強取(強盗既遂)といえる。ただし、因果関係を要求する有力な反対説がある(強盗未遂と恐喝既遂の観念的競合)。

●反抗抑圧後の財物奪取

はじめは財物奪取の意思なしに暴行の結果、相手が反抗抑圧されていることに乗じて財物奪取の意思を生じて財物を奪取した場合にも、強盗罪が成立するか。

強盗罪には、準強姦罪(178条)のような規定がなく、また事後強盗罪(238条)のように典型的な強盗にならないものの、強盗に準じて処罰する特別な規定もないことから問題となる。この場合、新たな暴行・脅迫が加えられれば強盗となるが、その場合は、すでに生じている反抗抑圧状態を継続し得る程度の暴行・脅迫で足りると解されている。判例は、強姦後財物を奪う場合は、強姦犯人がその場に留まっているというだけで、被害女性に対する強盗の手段としての暴行・脅迫となると評価している。

(2)強盗罪にいう脅迫とは、相手方の反抗を抑圧する程度の恐怖心を起こす害悪を通知することである。最狭義の脅迫である。

なお、恐喝も暴行、脅迫を手段とする点で強盗と類似しており、その区別は微妙である。一般人が反抗抑圧される程度の暴行、脅迫であれば強盗、畏怖させる程度にとどまれば恐喝が成立する。具体的な判断は、犯行の行われた時間帯、周囲の状況、被害者の年齢、性別なども考慮されなければならない。

強盗罪においても、窃盗罪と同様、故意のほかに不法領得の意思が必要である。

強盗罪の実行の着手とは、手段である暴行・脅迫が開始された時点をいう。

強盗罪の既遂とは、財物について被害者の占有を排除し、行為者又は第三者がその占有を取得したときをいう。

●強盗利得罪・2項強盗罪(236条2項)

強盗利得罪とは、暴行又は脅迫によって財産上不法の利益を得、又は他人に得させる犯罪をいう。2項強盗罪ともよばれる。不法な利益とは、不法に利益を得ることを意味する。したがって財産を得るばかりではなく、財産の減少を免れることも含む。

財産上の利益とは、財物以外の財産的利益である。財産上の利益には、次のような場合がある。①例えば、債務を免除させたり、債務の履行期を延期させるなど被害者に財産上の一定の処分をさせる場合。②例えば、有効な乗車券を持たないでする乗車など被害者に一定の労務・役務を提供させる場合。③例えば、債務負担、所有権移転等の意思表示をさせる場合など被害者に一定の意思表示をさせる場合、等である。

「財産上不法の利益を得た」といえるためには、被害者の処分行為は必要か。判例・通説は不要としている。何故なら強盗罪も強盗利得罪も被害者の反抗を抑圧して犯されるものである以上、自己の意思による交付すなわち処分行為はできるはずがない場合が通常だからである。結局一定の利益が被害者の支配下から行為者の側に現実に移転したと認められるべき外部的事情があれば足りる。

●強盗予備罪(237条)

強盗の予備とは、強盗の実行を決意して、その着手を準備することである。判例では、強盗目的で凶器を携えて出発すれば、目的地に到達したり、また到着後強盗の機会をうかがう必要はないとしている。

<事後強盗の予備>
事後強盗目的の予備を、強盗予備の中に含めるのが判例である。事後強盗の予備を処罰しない立場の根拠は、事後強盗の前提が窃盗だという点にある。窃盗予備を処罰しない以上、事後強盗予備を処罰するのは不当だと考えるのである。一方、判例は、居直り強盗との区別の困難さが理由ではないかと解される。つまり予備段階では、窃盗犯人は「見つかったら脅そう」という程度の認識しかなく、明確に事後強盗の目的か、居直り強盗の目的かを意識していない。それにもかかわらず、結果として居直り強盗を行った場合には強盗予備として処罰され、事後強盗と評価された場合には処罰されないというのでは妥当性に欠けるからである。

●事後強盗罪(238条)

事後強盗罪とは、窃盗犯人が、①財物を得てこれを取り返されることを防ぎ(財物取環
防止目的)、②逮捕を免れ(逮捕免脱目的)、又は③罪跡を隠滅するために(罪跡隠滅目的)、暴行又は脅迫をしたときに、強盗として論ぜられる場合である。

事後強盗と類似した「居直り強盗」という概念があるが、居直り強盗は、窃盗犯人が窃盗に着手した後、財物奪取の目的で暴行・脅迫を加える場合である。事後強盗とは、暴行・脅迫の目的が異なることを注意しなければならない。

<事後強盗罪の趣旨>
暴行・脅迫が、窃盗に着手した後に行われることはしばしばみられる行為形態であり、全体的に観察するときは強盗行為に準ずる性格を有するとみられることから、独立罪として強盗をもって論ずるとしたものである。その意味で準強盗罪ともよばれる。

事後強盗罪の主体は、「窃盗」すなわち窃盗の実行に着手した者である。判例は、窃盗を主体とする身分犯と解している。窃盗は未遂でもよい。

行為は、①通常の強盗罪と同程度の暴行・脅迫を加えることが必要である。②ただし、相手方は窃盗の被害者でなくてもよい。「強盗として論ずる」とされている以上、通常の強盗罪と同様の実質が要求されるからである。したがって、 例えば、追跡して来た巡査に対して加えられる場合も含まれる。ただし、強盗の現場か又はその機会の継続中に行われる必要がある。この点について、最近の判例は、「被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況が継続していたか」否かで判断している(最決平14・2・14、最判平成16・12・10等)。

窃盗犯人が、逮捕を免れ又は罪跡隠滅のため暴行脅迫を加えた場合は、財物を未だ得ていない限り、本罪は未遂であるとするのが判例・通説である。本罪の未遂は、窃盗の未遂・既遂で区別され、暴行・脅迫で区別されるのではない。暴行・脅迫を基準とすることは、財産犯である事後強盗罪の性格にそぐわないからである。

効果は、強盗として論じられる。

●昏酔強盗罪(239条)

昏酔強盗罪とは、人を昏酔させてその財物を盗取する犯罪をいう。昏酔とは、薬物や酒などを用いて意識作用に、一時的又は継続的な障害を生じさせることである。

強盗犯人みずからが被害者を昏酔させることを要する。他人が昏酔させたのに乗じて財物を奪取する行為は、窃盗罪である。

効果は、強盗として論じられる。事後強盗罪とともに準強盗とよばれている。

●強盗致死傷罪(240条)

強盗致死傷罪とは、強盗の機会に人の致死・致傷の結果を生じさせた時に、とくに重く処罰されるもので、強盗罪の加重類型である。

本罪の趣旨は、強盗の機会に人の殺傷が行われることが多いことに着眼して、強盗の機会における生命・身体の安全をとくに保護しようとするものである。

本罪の主体は、強盗罪の実行に着手した者である。強盗が既遂であると未遂であるとを問わない。

行為
「人を負傷させた」とは、本罪の法定刑が重いことから、軽微な身体の傷害は含まないと解されてきた(限定説)。すなわち、従来は、社会通念上、一般に看過することのできないような、医師の治療を受ける必要の認められる程度のものであることを要すると考えられていた。しかし、平成16年の改正により本罪にも執行猶予を付することが可能となったため、基本的には傷害罪(204条)における傷害と異ならないと解される(非限定説)。

「人を死亡させた」とは、①結果的加重犯として、つまり死の結果の認識なくして死の結果を生ぜしめた場合(強盗致死罪)、及び、②故意をもってする殺人の場合(強盗殺人罪)、の両者を包含する意味であるとするのが判例・通説である。

何故、殺意ある場合、つまり強盗殺人罪を本罪に含めるのかについては、以下のような理由がある。
①結果的加重犯について慣用される「よって」という文言がない。
②本罪は、強盗の機会には凶器を用いる場合が多いので人の殺傷を伴いがちであるという刑事学的類型に着目して構成要件化されたものである。したがって故意ある場合を当然に含む趣旨である。
③故意ある場合を含めないとすれば、殺意のあった場合は強盗罪と殺人罪とが成立することになる。しかし殺意のない時には強盗致死罪が成立するから、殺意のある時よりも、ない時の方がかえって重く処罰されて不当である。

死傷の結果は、強盗の手段としての暴行・脅迫から生じたことが必要か(手段説)。

(1)通説・判例は、強盗犯人が強盗の機会に人を死傷させればよいとする(機会説)。何故なら、本罪は強盗の機会に強盗行為と関連して残虐な致死傷の結果を伴う事態が生じがちであるということを考慮して規定されたものだからである。

(2)ただし、強盗の機会になされた行為で、かつ少なくとも被害者に向けられた強盗行為と密接な関連性をもつ行為から生じた致死傷に限るとする有力説がある。

240条前段、つまり強盗致傷罪の法定刑は、従来、無期又は7年以上の懲役であったが、被害者の傷害が軽度であっても執行猶予がつけられない不都合を避けるために、平成16年に、有期懲役の下限を6年に改正された。

<未遂罪(243条)の内容>
殺意をもってした強盗殺人罪において、殺人が未遂の場合に限って認められるとするのが判例・通説である。

結果的加重犯としての強盗致死傷罪が成立するためには、致死傷について少なくとも暴行の意思が必要である。つまり、ここで人を傷したとは、傷害罪の要件を具備すべきであるということである。

<既遂時期>
人を負傷又は死亡させた時に既遂に達する。財物を得たか否かは問わない、とするのが判例であり、また条文の構成もそのようになっている。さらに判例は、財物奪取の意思で被害者を死亡させた後、3日ないし8日を経過した後に財物を奪った場合も、強盗致死罪を成立させている。

●強盗強姦罪(241条前段)

強盗強姦罪の趣旨は、強盗の機会に、犯人が反抗を抑圧された婦女を強姦する例は少なくないが、それは、強盗に加えて被害者の性的自由を侵害し、また、その羞恥心を利用して捜査機関への届出を妨害することもありうるきわめて悪質な行為であるから、これを結合犯として独立の加重類型としたのである。すなわち、本罪は強盗罪と強姦罪の結合犯である。ただし「強姦強盗」罪ではない。

強盗強姦罪の主体は「強盗」である。強盗は、強盗罪・準強盗罪の実行に着手した者をいい、強盗罪・準強盗罪は未遂でもよい。

本罪の未遂は、強盗行為の未遂・既遂にかかわらず、強姦行為が未遂の場合である。

●強盗強姦致死罪(241条後段)

本罪は殺意ある場合を含むかが問題となる。通説・判例によれば、殺意ある場合は含まれない。何故なら、①強盗致死罪の場合と異なり、殺害して姦淫するというのはしばしば起こり得る事態とはいえないからである。また、②241条後段には結果的加重犯の慣用語である「よって」という用語が使われている。したがって、強盗犯人が殺意をもって婦女を強姦し殺害した場合は、強盗強姦罪と強盗殺人罪の両罪が成立し、両罪は観念的競合の関係にたつことになる。

本罪の未遂罪は強姦が未遂に終わった場合のみで、強盗の既遂・未遂を問わない。