試験前暗記用レジュメ~刑法~横領

試験前暗記用レジュメ~刑法~横領

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横領の罪

●横領罪(252条)

横領罪とは、自己の占有する他人の物を、横領することである。
横領罪の保護法益は、物に対する所有権その他の本権である(本権説)。
主体は、①他人の物の占有者、又は②公務所から保管を命じられた自己の物の占有者に限られる。つまり横領罪は真正身分犯である。
客体は、自己の占有する他人の物である。

(1)「占有」とは、事実上又は法律上、物に対する支配力を有する状態をいう。

横領罪における占有の重要性は、窃盗罪におけるようにその排他力にあるのではなく、濫用のおそれのある支配力にある。したがって事実上の支配だけでなく法律上の支配も含むのである。例えば、不動産の登記名義人はその不動産の占有者である。登記簿上所有者として表示されていれば、有効にその不動産を処分することができるからである。預貯金に関しては、通帳の名義人が占有者である。名義人から通帳と印鑑を預かっている者、キャッシュカードを預かっている者も預貯金を自由に引出せる地位にあるので、占有者である。

本罪の占有は、行為者と委託者との間の委託信任関係に基づくものでなければならない。委託信任関係は、契約のみならず、事務管理、後見、慣習、条理に基づいて発生した場合でもよい。

(2)「他人の物」の他人とは、①他人の所有に属するという意味である。②他人との共有物も他人の物である。

物とは、財物と同じで特定物である。物の中には不動産も含まれる。

金銭その他の代替物に関しては問題がある。
①封金など特定物として委託されたときは「他人の物」といえることは明らかである。
②不特定物としての金銭についてもその使途が定められている限り判例・通説は、横領罪が成立するとしている。
民法では、金銭は占有のあるところに所有権もあるものとして扱うのが原則であるが、刑法は独自の立場から、所有権と占有の分離する場合を認めようとするものである。

行為は横領である。

<横領の意味>

越権行為説と領得行為説の対立がある。
①越権行為説によれば、委託に基づく信任関係を破棄し、行為者が占有物に対してその権限を超えた行為をすることである。
②領得行為説によれば、委託物につき、不法領得の意思を実現する行為をすることが横領である。通説・判例は、領得行為説である。
そして、横領罪の不法領得の意思とは、判例によれば、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。

横領の具体例としては、着服、費消など物に対する事実上の処分のほか、抵当権の設定、債務の弁済への充当など法律上の処分もある。また事実上の返還拒絶をしたり、自己の所有権を主張して民事訴訟を提起するなどの行為も横領行為である。

横領罪の既遂は、処分行為が開始された時である。既遂とは、領得行為説では、不法領得の意思が外部から認識しうる状態をもって表現された時である。一般には、物についての処分行為等が開始されれば直ちに既遂に達する。
ただし、不動産については所有権移転登記や抵当権設定登記などを完了した時点で既遂と考えるのが通説・判例である。登記を完了するまでは翻意する余地があること及び未遂処罰の規定がないことを考慮したものである。

<不法原因給付物と横領罪>

民法は、その708条で不法の原因のために給付をなした者は、その給付物の返還を請求できない旨規定している。したがって、賄賂としてある公務員に渡すように頼まれて預かった金銭を預かった者が勝手に費消してしまった場合には、預けた者は民事上返還請求できないが、それでも刑法上は勝手に使った受託者を横領罪として処罰できないか、というのが不法原因給付物と横領罪の問題である。預けた者には返還請求権がないのであるから、保護法益に欠けるとして横領罪の成立を認めない学説も有力であるが、判例は、横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることを要件としているのであって、必ずしも物の給付者が民法上その返還を請求しうる物であることを要件としていない、という理由で横領罪を成立させている。

●業務上横領罪(253条)

業務上横領罪は、単純横領罪の特別罪であり、業務者と占有者という二重の身分が要求される(二重の)身分犯である。

業務とは、社会生活上の地位に基づいて、反復又は継続して行われる事務である。業務は、職務又は職業としてなされることを要せず、報酬、利益を目的とせずともよい。また、無免許のように手続上不適法なものでも業務性がないとはいえない。業務上過失致傷罪との違いは、人の生命、身体に対する危険性を伴う業務であるべきことを必要とされない点である。

最近の判例では、家庭裁判所から選任された未成年後見人(祖母)が、未成年の被後見人(孫)の財産を自己の用途に費消した場合に、本罪の成立を認めている(最決平20・2・18)。後見の事務は、公的性格を有するものであって、親族相盗例(244条1項)の準用を否定し刑は免除されない、としている。

●遺失物等横領罪(254条)

遺失物横領罪とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領する犯罪である。

客体は、占有者の意思に基づかずに占有を離れた物である。
例えば、誤配された郵便物などのように、委託に基づかずに行為者が占有している物も含む。
横領罪と比較すると、他人の占有に属しない他人の物に対する犯罪である点で共通するが、委託を前提としない点で異なる。判例は、古墳内に納められている宝石、鏡、埴輪等も占有を離れた物であるとする。

行為は横領である。判例・通説によれば横領とは、不法領得の意思をもって占有を離れた物を自己の事実上の支配内におくことである。