試験前暗記用レジュメ~刑法~毀損及び隠匿

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毀棄及び隠匿の罪

●文書等毀棄罪(258条・259条)

<客体>

(1)公用文書等毀棄罪の客体は「公務所の用に供する文書」及び「電磁的記録」である。公用文書等毀棄罪にいう文書とは、文字又はこれに代わるべき符号によって表示された思想の記載であって、証明に供される書類である。

公務所の用に供するとは、現に公務所で使用中であること、及び、公務所において使用の目的で保管していることをいう。公務所の用に供する文書とは、公文書の意味ではないから、公文書・私文書を問わない。

文書は、偽造文書や未完成の文書であってもよい。

公文書偽造罪の公文書と異なり、名義人が私人である私文書の場合もあり得る。例えば、刑事手続において押収された証拠物としての私文書などがこれにあたる。逆に、公文書であっても本罪の客体とならない場合もある。例えば運転免許証は公文書ではあるが、個人に交付されてしまえば公文書ではなくなる。

電磁的記録とは、電子的又は磁気的方法により人が直接感知できない方式で作成されている記録で、コンピューターによる情報処理の用に供されるものをいう。

(2)私用文書等毀棄罪の客体は「権利・義務に関する他人の文書」及び「電磁的記録」である。権利・義務に関する文書とは、権利義務の存否、得喪、変更、消滅などを証明する文書をいう。事実証明に関する文書は含まない。

他人の文書とは、他人の所有する文書の意味で他人名義の文書ではない。自己名義でも、他人所有のときは本罪が成立する。なお、自己所有の文書でも、差押をうけ、質権などの物権を負担し、または賃貸したものは、他人の所有する文書と同様に扱われ、本罪の客体となる。

私用文書とは、私文書と異なり公文書も含む。要するに公用文書以外の文書である。

手形や小切手を毀損する行為も本条に該当するというのが判例である。

<行為>

行為は毀棄である。

毀棄とは、文書の本来の効用を失わせるためになされる一切の行為をいう。判例は、隠匿も毀棄罪にあたるとしている。電磁的記録の場合は、テープやフロッピーディスク等を損壊する他、データの消去、読み取り不能の状態にすることも含む。

私用文書等毀棄罪は親告罪である。

●物件損壊罪(260条・261条)

建造物等損壊罪と器物損壊等罪とを合わせて物件損壊罪という。

<客体>

(1)建造物等損壊罪の客体は、他人の建造物又は艦船である。「他人の」とは、他人の所有に属する意味である。ただし、自己の物でも差押を受け、地上権、抵当権などの物権を負担し、または賃貸した物は、他人の物と同じに扱われ、本罪の客体となりうる。

建造物とは、家屋その他これに類似する工作物であって、屋根を有し、壁や柱によって支持され、土地に定着し、少なくとも、その内部に人の出入りしうべきものをいう。

建造物の一部を構成するか否かは、毀損しなければ取りはずしえない状態にあるか否かにより決せられる。例えば、屋根瓦、天井板、敷居などは建造物の一部である。

(2)器物損壊等罪の客体は、文書等毀棄罪及び建造物等損壊罪の客体以外の他人の物である。ここでいう物とは、他人の所有に属する物の意味であり、動物や土地をも含む。また自己の所有物でも差押を受けたり、抵当権等物権を負担したり又は賃貸した物は、器物損壊等罪の客体となる。

<行為>

(1)建造物等損壊罪の場合は「損壊」である。
損壊とは、物の本来の効用を害する一切の行為をいう。つまり、建造物・艦船の実質を毀損し、又はその他の方法によって、それらのものの使用価値もしくは減損することである。一部の損壊でも足りるし、又主要な部分の毀損に限るものでもない。ただし、建造物の
効用に影響を及ぼさない程度の軽微な毀損は損壊とはいえない。

(2)器物損壊罪の場合は「損壊又は傷害」である。
「損壊」とは、物理的に客体の形態を変更又は滅失させる行為のほか、広く物の本来の効用失わせる行為をいう。「傷害」とは、動物を客体とする点で損壊と表現を異にするだけで、本質的には損壊と同じである。効用を失わせる行為には、事実上あるいは感情上その物を再び本来の目的に供することのできない状態にさせる場合も含む。例えば、他人の養殖する魚を流出させることや、他人の飲食器に放尿することも含まれる。

ビラ貼り行為が損壊にあたるかどうかは程度問題であるが、判例は、①原状回復が容易か否か、②美観の侵害が大きいか否かを判断の基準にしているようである。

器物損壊等罪は親告罪である。

●境界毀損罪(262条の2)

境界毀損罪とは、土地の境界標を損壊、移動、除去等によりその境界を認識できなくする犯罪である。

客体は「土地の境界標」である。

土地の境界とは、権利者を異にする土地の境界であり、土地に対する権利の場所的範囲を画する線をいう。権利は、所有権に限らず、地上権、永小作権、抵当権などの物権でも、賃借権のような債権でもよい。また、私法上の権利のほか、県境のような公法上の関係にもとづくものも含まれる。

境界標とは、権利者を異にする土地の境界を定めるために土地に設置された、もしくは植えられた標識・工作物・立木である。

境界標は、他人の物であることを要しない。自己所有のものでも無主物でもよい。

行為は、既存の土地の境界を認識できなくする一切の行為であり、法はその手段として、境界標の損壊・移動・除去を例示した。

その他の方法としては、境界の溝を埋める、高低のある境を平らにならす、河川の流れを変えるなどがある。

境界標を損壊しても、土地の境界がいまだ認識しうるなら、本罪は不成立であり、器物損壊罪の成立のみ問題となる。

●信書隠匿罪(263条)

信書隠匿罪とは、他人の信書を隠匿する犯罪である。

客体は、「他人の信書」である。

「信書」とは、特定人から特定人にあてられた意思伝達文書である。信書開披罪と違い、葉書も含む。

目的を完全に達したものは、信書としての性質を失い、一般の文書と同様に扱われる。

他人の信書とは、他人の所有に属する信書で、発信人が他人であることを要しない。

行為は「隠匿」である。
隠匿とは、信書の発見を妨げる行為をいう。信書の本来の効用を失わせる文書毀棄、器物損壊の程度に至らない比較的軽微なものを指す。

信書隠匿罪は親告罪である。