試験前暗記用レジュメ~民法~債権の目的

試験前暗記用レジュメ~民法~債権の目的

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債権の目的

債権の目的の意義

・債権→特定の人(債権者)が特定の人(債務者)に対して一定の行為(給付または給付行為)を請求できる権利⇒債権の目的(債権の内容)は,請求の対象(客体)である債務者のなすべき一定の行為をいう。

債権の発生原因

・債権の発生原因→民法典第3編「債権」の第2章以下の各章で規定されている→大きくは次のものに分けることができる。

法律行為
・債権は,法律行為とくに契約によって発生する。
・契約によって発生する債権(約定債権)の内容は契約の解釈によって定まる。

法律の規定
・債権は,法律の規定によっても発生する。
・法律の規定によって発生する債権(法定債権)の内容は,法律の規定の解釈によって定まる。

*契約関係にはないが,一定の社会的接触関係にある者の間で信義則上の義務が発生し,それに違反した場合に,損害賠償請求権が発生することがある。例えば,国と公務員のような契約関係にない者の間でも,一方が他方の安全を配慮すべき義務(安全配慮義務)が認められ,この義務に違反した場合には損害賠償義務が肯定され(最判昭50・2・25民集29巻2号143頁),また,契約の交渉を開始した後に,その交渉を一方的に破棄した者に対して,「契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任」が肯定されることがある(最判昭59・9・18判時1137号51頁)。

債権の目的の要件

・債権が有効に発生するためには,債権の目的である給付(債権の内容)が一定の要件を満たしていることが必要→①給付の適法性,②実現可能性,③特定性の3つ。
・債権が契約によって生じる場合には,契約に応じて債権の内容は様々であるので,これらの要件の充足を検討する必要性が出てくる。
・債権が事務管理・不当利得・不法行為によって生じる場合には,通常は金銭債権であるので,これらの要件の充足はとくに問題にならない。

*これら3つの要件は,民法総則で法律行為の有効要件として論じられるものと同じであり,また,契約法で契約の有効要件として論じられるものと同じ。
(1)給付の適法性

・給付の内容は法律上適法であり,社会的に妥当なものでなければならない。
*例えば,売買による麻薬の引渡しのように,給付の内容が違法であったり,公序良俗(90条)に反する場合→そのような売買は無効であり,麻薬を引き渡すという内容の債権も生じない。
(2) 給付の実現可能性

不能の態様
・給付の内容は,実現可能なものでなければならない。
・主な給付の不能態様には次のようなものがある。

<原始的不能・後発的不能>
・原始的不能→法律行為(契約締結)時においてすでに給付が実現不可能であること。
・後発的不能→法律行為(契約締結)後に給付が実現不可能になること。

<客観的不能・主観的不能>
・客観的不能→すべての人にとって給付の実現が不可能なこと。
・主観的不能→当該債務者にとって給付の実現が不可能なこと。

<全部不能・一部不能>
・全部不能→給付の全部が実現不可能な場合。
・一部不能→給付の一部だけが実現不可能な場合。
・一部不能→それによって給付全体が価値を失う場合を除いて,残部について債権が有効に成立する。

<原始的不能と後発的不能の効果>
・給付の不能について,とくに議論のあるのが原始的不能と後発的不能の場合。
(3)給付の確定性

・給付の内容は,確定していなければならない←給付の内容が確定していなければ,債務者はどのような給付をすべきか判断できないし,裁判所も債権の強制的実現に助力できないからである。
・給付の内容は契約成立時に確定している必要はなく,後に何らかの方法で確定できればよい。民法の中にはそのための補充規定が設けられている(401条・406条・416条・417条など)。

(4)給付の経済的価値

・給付の内容が金銭的価値のないものであっても,債権の目的にすることができる(399条)→法律上保護を受けるに値するものであれば,金銭的価値を有しないものでも債権の目的になることができる。
・このような債権であっても,任意に履行されないときには,裁判所によって強制的に実現できるし(414条),また,被った損害を金銭に評価して賠償の支払いを命じることができるからである(417条)。

*裁判例の中には,寺の僧侶が依頼者のために念仏供養をする旨の契約の効力について,念仏供養を一心に行う旨の契約は,内心の作用に関わるものであるから法律上の効力は生じないが,称名念仏(仏の名を唱えること)をして故人を供養する旨の契約は,外形上の行為に関するものであるから法律上有効であるとしたものがある(東京地判大2頃新聞986号25頁-称名念仏事件)。

債権の種類

・民法典第3編「債権」第1章「総則」の第1節「債権の目的」→給付の内容に着目して①特定物債権,②種類債権,③金銭債権,④利息債権および⑤選択債権の5つを定めている(400条~411条)。
・債権の種類はこれに尽きるものではなく,さらにある。
作為債務・不作為債務

・作為債務→債務者の積極的な行為(作為)を給付の内容とする債務→債務者がある行為を積極的に行うことを内容とする債務である。
・作為債務→物の引渡しを内容とする「与える債務」と依頼人の肖像画を描く画家の債務などのような労務の提供を内容とする「為す債務」に分けられる。
・不作為債務→債務者の消極的な行為(不作為)を給付の内容とする債務。
・両者の違いは不履行の場合の履行強制の方法(414条2項・3項)において現れる。
与える債務・為す債務

・作為債務の内容による区別。
・与える債務→売主の目的物移転債務や買主の代金支払債務などのような物の引渡しを内容とする債務。
・物の引渡しには,占有だけを移転する場合と財産権と占有を移転する場合が含まれる。
・為す債務→物の引渡し以外の作為を内容とする債務。
・与える債務では,物の引渡し自体が重要であり,債務者の引渡行為自体にはあまり重点が置かれていないのに対し,為す債務では,債務者の行為自体が重要であるとされている。
・両者の違いも履行強制の方法において現れる。
可分債務・不可分債務

・給付の本質や価値を損なわずに,給付を分割して実現できるかどうかによる区別である。
・例えば,100万円の金額の支払いや米10キログラムの引渡しなどは可分給付→このような可分給付を内容とする債務が可分債務である。
・1頭の競走馬や1台の自動車の引渡しなどは不可分給付→不可分債務→このような不可分給付を内容とする債務をいう。
・給付が可分か不可分かは,給付の性質または当事者の意思によって決まる(なお,上の例はいずれも,給付の性質による可分または不可分に当たる)。
・可分債務と不可分債務の区別は,債権者または債務者が複数いる場合に問題となる(427条以下)。
結果債務・手段債務

・結果債務・手段債務という分類は,フランスの判例・学説に由来するもの。
・結果債務→例えば売主の目的物引渡債務や建築請負人の建物を建てて引き渡す債務などのような,一定の結果の実現を内容とする債務→結果が実現されなければ,債務者は,原則として債務不履行責任を負う。
・手段債務→一定の結果の実現に向けて最善を尽くすことを内容とする債務→この債務においては結果が実現されることは必ずしも重要ではない。
・医者の診療債務がその例→医者は,必要な注意を払って患者を診察し治療に努めなければならないが,患者の病気が治らなかったからといって直ちに責任を負うわけではない。
・両者を区別する意義は,債務不履行による損害賠償を請求する際の主張立証責任の負担に違いが生じると解されている。