学説判例研究~民訴~証拠法総論

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証拠法総論

証明と訴明

証明=裁判官がある事実につき高度の蓋然性をもってその存在を確信した状態、または、裁判官の心証をその状態まで到達させるよう働きかける当事者の行為

訴明=裁判官がある事実が存在するらしいと一応推認しうる状態、または、裁判官の心証をその状態にまで到達させるよう働きかける当事者の行為

判決手続きにおける主要事実の認定 → 証明が必要
民事保全手続(民保13Ⅰ)、判決の基礎となる事実以外の迅速処理要する事項、派生的な手続事項の基礎となる事実の認定 → 訴明で足りる

厳格な証明・自由な証明

厳格な証明=180条から242条までの規定により行う証明
自由な証明=この法定手続きによらない証明
※民事訴訟において、事実・経験則につき、自由な証明を認める余地はない。


証拠方法・証拠資料・証拠原因

証拠方法=裁判官がその五感の作用により取り調べることができる有形物
※その内容は、人証(証人尋問、当事者尋問、鑑定)と物証(書証、検証)
証拠資料=証拠方法の取調べにより感得された内容(供述・鑑定意見・文書の記載内容等)
証拠原因=裁判官の心証形成の基礎となった資料・状況(証拠資料と弁論の全趣旨(247条)が含まれる)


証明を要しない事実

自白された事実 179条 弁論主義第2テーゼ
顕著な事実   179条 公知の事実と裁判所に顕著な事実


職権証拠調べの禁止

争いのある事実を証明する必要がある場合でも、裁判所は当事者がその取調べを申し出た証拠のみを取り調べることができる。(弁論主義の第3テーゼ)とはいえ、断片的に職権証拠調べも許容していることは要認識(管轄(14)、当事者尋問(207)、検証の際の鑑定(233)、証拠保全(237)


証拠共通の原則

原告被告間における証拠共通の原則

裁判所が証拠調べをした結果得られた証拠資料は、当該証拠調べを申し出た当事者の主張事実を認定するための証拠原因とすることができるだけでなく、相手方は、援用を必要としないで、自分の主張事実を認定するための証拠原因とすることができるということ。

共同訴訟人間の証拠共通の原則

共同訴訟人の1人が申し出た証拠方法から得られた証拠資料は、他の共同訴
訟人の格段の援用を要することなく、共同訴訟人間に共通の事実を認定する証拠原因として利用することができるということ。

理由:歴史的に1つしかない事実の認定判断も1つしかありえない。
証拠共通にしないなら、裁判官の自由心証の制約となる。


証拠能力・証明力

証拠能力=ある有形物を証拠調べの対象(証拠方法)として用いることのできる資格
※民事訴訟では一般的に証拠能力に制限がない。その例外は、忌避された鑑定人(214I)、手形訴訟での書証以外の証拠(352I)など

証明力=証拠調べによって得られた証拠資料が、要証事実の認定にどの程度役立つかの証拠評価
※裁判官の自由心証。例外は、文書の成立の真正推定規定(228Ⅱ・Ⅳ)


文書成立の真正

・形式的証拠力:文書が真正に作成されているか否かの問題

・実質的証拠力:形式的証拠力のある文書に記載された内容が係争事実の認定に役立ち得るか否かの問題

・本証:立証責任を負う事実についての立証活動。確信を抱かすせる程度の立証必要

・反証:相手方が立証責任を負う事実についての立証活動。心証を真偽不明にすれば足りる

・事実上の推定:事実認定に際し、裁判官の自由心証の作用として経験則によって事実上行われる推定のこと。

・法律上の推定(広義):経験則が法規化され、法適用という形で行われる推定

・法律上の事実推定:甲事実を立証することによって、これに推定規定を適用して、別の乙事実の存在を推定させること(効果:相手方に主張立証責任を転換できる。)

・法定証拠法則:一定の証拠方法に一定の証拠価値を付与することを裁判官に命じ、または禁止する法規


書証

文書に記載されている作成者の意思や認識を裁判所が閲読して、その意味内容を証拠資料とする証拠調べ

2タイプの文書がある:

処分文書: 法律行為が直接その書面によってなされているもの(契約書・手形・遺言書など)

報告文書: 作成者の意見・感想等を記載したものすべて(領収書・日記診断書など)


私文書成立の真正と二段の推定

二段の推定:私文書に存在する作成名義人の印影が同人の印章によって顕出された場合には、反証がない限り、その印影は作成名義人の意思に基づいて成立したものと推定され(1段目の推定)、その結果として、228条4項により文書全体が真正に成立したものと推定される(2段目の推定)ことをいう。


裁判所の訴訟指揮

文書の成立について否認した場合、裁判所は、否認理由を聴取(民訴規則145)

裁判所が、自分の署名ですかとの確認に、相手方が、「自分の署名であることを認める」と回答(①)

裁判所の聴取は終了。民訴法228Ⅳ推定規定が念頭におかれる。

相手方が「署名」を否認した場合、裁判所は「印影」は自己の印章によるかを確認し、相手方は「認める」と回答(②)

同様に、文書全体の真正が推定される(二段の推定の場面)。

手方が、「(署名のみならず)印影も自己の印鑑によるものではない」と回答(③)

書証申出をした当事者は、推定規定念頭に立証活動を展開