学説判例研究~憲法~〔一票の格差〕定数不均衡訴訟

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定数不均衡訴訟まとめレジュメ
― 定数不均衡の経緯
― 訴訟形態
― 判例
  L  1972年総選挙定数訴訟(最大判S51.4.14)
  L  2009年総選挙定数訴訟(最大判H23.3.23)

定数不均衡の経緯

1946年、公職選挙法が制定された際に、国会議員の定数配分が定められた。この時点において、特定の地域を特別有利に扱う意図はなく、人口比に極めて忠実な定数配分が行われた。(衆議院議員においては、約15万人に1人の割合で配分された。)が、戦災復興および都市化現象の中で急激な人口異動が生じた。にもかかわらず、人口異動に適切に対処する定数配分の見直しが行われず、大きな定数不均衡をもたらしてきたことが問題。

訴訟形態

公選法204条は、国会議員の選挙についてその効力を争う訴訟(民衆訴訟)。

選挙管理委員会を被告としてこれを提起し、選挙が無効とされるときには、40日以内に再選挙を行うものと定められていることからすると、もともとは選挙管理委員会による選挙の管理執行上の瑕疵の是正を目的とした制度と解すべきである。つまり、公選法204条は、公選法自体が違憲であってやり直すことができない場合を想定していない。

公選法別表に定める議員定数配分規定が憲法違反であるから、これに基づいて施行された選挙は『選挙の規定に違反する(205条)』ので無効な選挙だ」と無効を求めることは、公選法204条の訴えとして適当ではないのではないか。という問題はある。

判例

最大判S51.4.14 1972年総選挙定数訴訟 上告審

1972年12月10日に実施された衆議院議員選挙の千葉1区の選挙人Xは公職選挙法204条に基づいて、Y(千葉県選挙管理委員会)を相手取り、本件選挙の議員定数を定めた公選法別表①の規定が、議員一人あたりの有権者数の最小を示す兵庫5区と同選挙区の間に4.81対1の較差をもたらしており、これは住所による国民の不平等な取扱であるとして、投票の価値の平等を要求する憲法14条に違反するとして選挙無効訴訟を提起した事件。

●公選法204条に基づく定数不均衡訴訟を(消極的に)認めた

公選法204条の選挙の効力に関する訴訟「は、公選法の規定に違反して執行された選挙の効果を失わせ、改めて同法に基づく適法な再選挙を行わせること(公選法109条4号)を目的とし、同法の下における適法な選挙の再実施の可能性を予定するものであるから、同法自体を改正しなければ適法に選挙を行うことができないような場合を予期するものではなく、したがつて、右訴訟において議員定数配分規定そのものの違憲を理由として選挙の効力を争うことはできないのではないか、との疑いがないではない。」

「しかし、右の訴訟は、現行法上選挙人が選挙の適否を争うことのできる唯一の訴訟であり、これを措いては他に訴訟上公選法の違憲を主張してその是正を求める機会はないのである。およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは、前記公選法の規定が、その定める訴訟において、同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは、決して当を得た解釈ということはできない。」

●無効は将来効(205Ⅰ)だと判断

「現行法上選挙を将来に向かつて形成的に無効とする訴訟として認められている公選法204条の選挙の効力に関する訴訟において、判決によって当該選挙を無効とする(同法205条1項)ことの可否」について、「この訴訟による場合には、選挙無効の判決があっても、これによっては当該特定の選挙が将来に向かつて失効するだけで、他の選挙の効力には影響がないから、前記のように選挙を当然に無効とする場合のような不都合な結果は、必ずしも生じない。」

※裁判官反対意見
「本件の如き議員定数配分規定の違憲無効を理由として選挙の効力を争う訴訟の形態については、実定法上明文の規定はない。」と言うが、”非常救済手段”によって、「本件の場合においても、また、憲法上国民の重要な基本的権利である選挙権の平等を争うについては何等かの途をひらくのが妥当であり、それには現行法上選挙の無効を争う点で類似している公選法204条の訴訟の形態を用いることができるとした多数意見は、そのまま同調しうる」とする。

「非常救済手段」… 実定法上明文の規定が無くとも、憲法の要請に応えるために裁判所が類似している手段を用いて救済を図るという手段。(高田事件/最大判S47・12・20)

●投票価値の平等が選挙権の平等に含まれるとした

「選挙権について15条1項、3項、44条但し書の規定を設けている。これらの規定を通覧し、かつ、右15条1項等の規定が前述のような選挙権の平等の原則の歴史的発展の成果の反映であることを考慮するときは、憲法14条1項に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向するものであり、右15条1項等の各規定の文言上は単に選挙人資格における差別の禁止が定められているにすぎないけれども、単にそれだけにとどまらず、選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところであると解する」

●立法裁量を認めた

選挙制度の決定については立法裁量が働く。投票の価値については、立法が考慮すべき唯一の要素ではないが、憲法上の要求としての意義と価値を考慮すべきと考えている。

「代表民主制の下における選挙制度は、選挙された代表者を通じて、国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし、他方、政治における安定の要請をも考慮しながら、それぞれの国において、その国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり、そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけのものではない。」

「投票価値の平等についても、これをそれらの選挙制度の決定について国会が考慮すべき唯一絶対の基準としているわけではなく、国会は、衆議院及び参議院それぞれについて他にしんしやくすることのできる事項をも考慮して、公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができるのであり、……原則として、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないしは理由との関連において調和的に実現されるべきもの」である。しかし、このことは、「平等選挙権の一要素としての投票価値の平等が、単に国会の裁量権の行使の際における考慮事項の一つであるにとどまり、憲法上の要求としての意義と価値を有しないことを意味するものではない」。

●違憲の判断基準① 裁量権外か

「具体的に決定された選挙区割と議員定数の配分の下における選挙人の投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきものであり、このような不平等を正当化すべき特段の理由が示されない限り、憲法違反と判断するほかはないというべきである。」

●違憲の判断基準② 合理的期間の考慮

合理的期間の法理:本判決ではじめて採用された法理
合理的期間の趣旨は、人口の変動状態に対する考慮など、新たな定数是正を行うために国会に与えられるべき時間が憲法上認められ、その期間内には違憲判決は下されないというもので、国会に与えられた「免責期間」。

「一般に、制定当時憲法に適合していた法律が、その後における事情の変化により、その合憲性の要件を欠くに至つたときは、原則として憲法違反の瑕疵を帯びることになるというべきであるが、右の要件の欠如が漸次的な事情の変化によるものである場合には、いかなる時点において当該法律が憲法に違反するに至ったものと断ずべきかについて慎重な考慮が払われなければならない。……人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。」

本件では、「公選法自身その別表第1の末尾において同表はその施行後5年ごとに直近に行われた国勢調査の結果によって更正するのを例とする旨を規定しているにもかかわらず、昭和39年の改正後本件選挙の時まで8年余にわたってこの点についての改正がなんら施されていないことをしんしやくするときは、前記規定は、憲法の要求するところに合致しない状態になっていたにもかかわらず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかつたものと認めざるをえない。それ故、本件議員定数配分規定は、本件選挙当時、憲法の選挙権の平等の要求に違反し、違憲と断ぜられるべきものであつたというべきである。」

●違憲の内容 区割の関係は不可分で、形式的無効と判断

「選挙区割及び議員定数の配分は、議員総数と関連させながら、前述のような複雑、微妙な考慮の下で決定されるのであって、一旦このようにして決定されたものは、一定の議員総数の各選挙区への配分として、相互に有機的に関連し、一の部分における変動は他の部分にも波動的に影響を及ぼすべき性質を有するものと認められ、その意味において不可分の一体をなすと考えられるから、右配分規定は、単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。」

※裁判官反対意見
違憲審査の基本態度は、合理的に解決がつくならば、その法規についてなるべく憲法違反の範囲を拡大しないようすることである。一部選挙区について投票価値不平等の違憲の瑕疵があるとしても、その瑕疵が多数意見の説くように、必然的に他の選挙区全部についての違憲の瑕疵をきたすものとは考えられない。

憲法98条により、違憲の法律は原則として当初から無効となり、これに基づいてされた行為の効力も否定される。しかし、本判決は、この原則を貫くと妥当でない場合も出てくるので、その場合は「総合的に視野に立つ合理的な解釈」を施す。

選挙を当然無効とした場合、選出された議員が遡及的に資格を失うこととなり、無資格の者による議院決議の効力は認められないため、違憲とされた公選法の規定を改正することすらできなくなる不都合が生じる。したがって、当然無効の解釈は妥当でない。

公選法204条の訴訟の効果(205条1項)として、形成的に無効とすれば、他の選挙の効力に影響がなくなり、問題は生じない

※裁判官反対意見
本件配分規定のうち、千葉県1区に関する部分はその定数配分が過少に限定されている点について、かつその限度で違憲である。したがって、同区の選挙は違憲な配分規定に基づく選挙として違法であり無効とされるべきものであるが、当選人4名の選挙に関する限りは、その結果としての当選の効力を維持すべきである。判決としては、本件千葉県第一区の選挙を無効とするとともに、選挙によって当選した当選人らは当選を失わない旨判決すべきである。

●事情判決の法理を採用

本判決は、形成的に無効だと解しても、当該選挙区の選出議員がいない状態で、公選法の改正をしなくてはならないが、同じ憲法違反の瑕疵を有する選挙について無効とされるものと有効として残るものが生まれ、無効とされた選挙区からの選出議員を得ることができない異常な状態で行われることは、憲法上望ましくないという。そこで、事情判決の法理を持ち出す。

※裁判官反対意見
当該選挙区については選出議員を欠くことになっても残余の議員で構成される衆議院において早急にその違憲の法律を憲法に適合するように改正するための審議をすれば足りる。そして平均的投票価値を持つ選挙区は全国的に見れば圧倒的に多いのであるから、選挙無効の判決によって衆議院が活動できなくなるほど多数の議員がその資格を失うことになるはずはなく、したがって、選挙を無効とすることに問題は無い。
さらに、その効力としては、選挙無効の効力は性質上いわゆる当然無効として過去にその効力が遡ると解するべきものはなく、将来に向かって形成的な効力をもつに過ぎないのであるから、法律的にもさほど困難な問題を生ずることはなく、社会的、政治的にも著しい混乱を来たすこととはならない。

行政事件訴訟法31条1項前段(事情判決)は、「法政策的考慮に基づいて定められたものではあるが、しかしそこには、行政処分の取消の場合に限られない一般的な法の基本原則に基づくものとして理解すべき要素も含まれている」。もっとも、「公選法の選挙の効力に関する訴訟についてはその準用を排除されているが(公選法219条)、これは「単なる公選法違反の個別的瑕疵を帯びるにすぎず、かつ、直ちに再選挙を行うことが可能な場合についてされた……立法府の判断」に基づくものである。

「本件のように、選挙が憲法に違反する公選法に基づいて行われた」場合、「前記の立法府の判断は、必ずしも拘束力を有するものとすべきではなく」、「前記行政事件訴訟法の規定に含まれる法の基本原則の適用により、選挙を無効とすることによる不当な結果を回避する裁判をする余地もありうるものと解するのが、相当である。もとより、明文の規定がないのに安易にこのような法理を適用することは許されず、殊に憲法違反という重大な瑕疵を有する行為については、憲法98条1項の法意に照らしても、一般にその効力を維持すべきものではないが、しかし、このような行為についても、高次の法的見地から、右の法理を適用すべき場合がないとはいいきれないのである。」

「本件選挙が憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われたものであることは上記のとおりであるが、そのことを理由としてこれを無効とする判決をしても、……かえって憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずることは、さきに述べたとおりである。これらの事情等を考慮するときは、本件においては、前記の法理にしたがい、本件選挙は憲法に違反する議員定数配分規定に基づいて行われた点において違法である旨を判示するにとどめ、選挙自体はこれを無効としないこととするのが、相当」。

※参考:将来効判決について(芦部憲法p379)
違憲判決の効力について、当該事件に限って適用が排除されると考える個別的効力説が妥当であるが、個別的効力説からすると、判決の効力を将来から発生させることは許されない。しかし、議員定数不均衡違憲判決が事情判決の法理に「一般的な法の基本原則に基づく」要素も含まれているとしてそれを適用した考え方を推し進めると、裁判所が選挙の違法を宣言するにとどまらず、選挙を無効とし、ただ、その効力を開会中の国会ないし近い将来開会される国会の会期終了末の時点から発生させる(その間に国会の自主的な是正を要求する)等の将来効判決を下すことも少なくとも定数不均衡訴訟においては例外的に可能である。

【合憲ではない程度のまとめ】

① 裁量権限外 → 違憲状態
② ①が認められる上、合理的期間の徒過 → 違憲
③ ①②がある上、事情判決の法理を用いない → 無効

最大判H23.3.23 2009年総選挙定数訴訟 上告審

平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙について、東京都の第2,5、6、8、11,12,18区の選挙人である原告が衆議院小選挙区選挙議員の選挙の選挙区割り及び選挙運動に関する公職選挙法の規定が憲法に違反し無効であると主張して選挙無効訴訟を起こした事件。※選挙制度の変化:1976年当時は一つの選挙区から3人ないし5人の議員を選出する中選挙区制だったが、平成6年の公選法改正の際に小選挙区比例代表並立制に変わった。

※「一人別枠方式」: 衆院の小選挙区300議席のうち、まず47都道府県に1議席ずつを「別枠」として割り当て、残り253議席を人口に比例して配分する方式。もともとは人口比例によって各都道府県に配分するものとされていたが、政府の要請で、投票価値の平等の確保の必要性がある一方で、①過疎地域に対する配慮、②具体的には人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点が重要であることから、人口の少ない県に居住する国民の意思をも十分に国政に反映させるために定数配分上配慮して同方式を採用された。

「区割りの基準については、区画審設置法3条が定めているが、同条1項は、選挙区の改定案の作成につき、選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとしており、投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができる。同条2項においては、……1人別枠方式が採用されて」いる。

●立法裁量については、昭和51年最判と同旨。

憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求している……しかしながら、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を有するものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、やむを得ないものと解される。」

具体的な選挙制度を定めるに当たって、衆議院議員においては、「都道府県を定数配分の第一次的な基盤とし、具体的な選挙区は、これを細分化した市町村、その他の行政区画などが想定され、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素が考慮されるものと考えられ、国会において、人口の変動する中で、これらの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するか否かによって判断されることになる。以上は、前掲各大法廷判決の趣旨とするところであって、これを変更する必要は認められない。」

●一人別枠方式についての当てはめ

「この選挙制度によって選出される議員は、……全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり、……地域性に係る問題(人口の少ない地域に対する配慮)のために、殊更にある地域(都道府県)の選挙人と他の地域(都道府県)の選挙人との間に投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとはいい難い。しかも、本件選挙時には、1人別枠方式の下でされた各都道府県への定数配分の段階で、既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差が生」じていて、一人別枠方式が選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていた。

そもそも、この方式がとられたのは、「直ちに人口比例のみに基づいて各都道府県への定数の配分を行った場合には、人口の少ない県における定数が急激かつ大幅に削減されることになるため、国政における安定性、連続性の確保を図る必要があると考えられたこと、何よりもこの点への配慮なくしては選挙制度の改革の実現自体が困難であったと認められる状況」にあったことによるものであった。とすれば、「1人別枠方式は、おのずからその合理性に時間的な限界があるものというべきであり、新しい選挙制度が定着し,安定した運用がされるようになった段階においては,その合理性は失われるものというほかはない。」

※裁判官反対意見
一人別枠方式は投票価値の平等に譲歩を迫るに足りるだけの合理性が認められないのみならず、立法経緯を踏まえてもその合理性を肯定すべき事由は全く存しなかったのであり、選挙人の投票価値の平等を害する者として、憲法14条に違反する。

◇人口過疎地域への配慮なる理由は、平成14年に区割り規定が改正されたことで人口が減少し過疎化が進展していた山形等で1人減員した結果、一人別枠方式の恩恵を受けられなくなっており、もはや人口過疎地域への配慮なる理由が既に破綻している。
激変緩和措置との理由は失われ、一人別枠方式を維持することによる弊害が一層進展している。そして、このような事情が平成11年及び平成19年最高裁大法廷判決の少数意見で指摘されており、国権の最高機関たる国会としては、すべからく一人別枠方式の果たしている意義の検証を含め、一人別枠方式それ自体の見直しに着手してしかるべきであったのに、検証作業すら開始していないことから、国会の怠慢は責められるべき。

◇過疎地域に対する配慮という非人口的要素、それも行政区画や地理的状況等の非人口的・技術的要素とは異質の、いわば恣意的ともいえる要素を優先させることは、国会の裁量権の行使として合理性を有しないことは明白。

本件の「選挙制度(1人別枠方式を含む小選挙区比例代表並立制)導入後の最初の総選挙が平成8年に実施されてから既に10年以上を経過しており、……本件選挙制度は定着し、安定した運用がされるようになっていたと評価することができるのであって、もはや1人別枠方式の上記のような合理性は失われていたものというべきである」。

しかし、「平成19年6月13日大法廷判決において、平成17年の総選挙の時点における1人別枠方式を含む本件区割基準及び本件選挙区割りについて、……憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていない旨の判断が示されていたことなどを考慮すると、本件選挙までの間に本件区割基準中の1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって、憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものということはできない。」

※3倍未満の較差を合憲とした先例を事実上変更している。

※裁判官反対意見
国会の立法不作為は憲法上要求される合理的是正期間を徒過したものといわざるを得ず、一人別枠方式に基づいて定められている区割規定は違憲である。
◇憲法適合性の審査におけて、現実への配慮により後退させるということは賛成できない。
◇立法府としては遅くとも平成14年7月に本件区割り規定に改定されたころまでに一人別枠方式を廃止すべきであった。