政治学レジュメ~デモクラシーの今後(Robert Dahl 『On Democracy』15章)

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政治学レジュメ

デモクラシーの今後

CHAPTER 15
The Unfinished Journey
15章 未完のたび

20世紀はデモクラシーの勝利になることがはっきりしてきた。21世紀も同じようにデモクラシーに好ましい時代になってくれるだろうと思うと元気づけられる。

しかし、歴史上、人類がデモクラシーを経験したことは稀なのである。すると、21世紀では再び非民主的なものになってしまうのではないだろうか。エリート政治家や官僚が支配する21世紀型のガードマンシップ支配が出現するのではないか。逆にデモクラシーが世界中に広がり続けることに伴って、ますます質が希薄なものになってしまわないか。

いずれにしても、将来のことを見通すことはできない。しかし、次のような予測を立てることはできる。デモクラシー国家が今直面している問題は、将来も未解決のまま残るだろうし、さらに解決の難しい問題になっていくかもしれない。

そこで、今後、努力して達成しなければならない課題を4つ示す。デモクラシーの活力とデモクラシーの質は、これから示す課題を、民主的な市民や指導者がどのくらいうまく処理できるか、ということに大きく依存している。

CHALLENGE 1 : THE ECONOMIC ORDER

デモクラシー国家において、資本主義市場経済が別の体制に移行することはおそらくありえない。13章、14章で述べたような対立するもの同士の共存は持続することができず、どちらかに収斂されざるを得ないだろう。

今のところ、市場経済よりもすぐれた選択肢は、はっきりとは見えない。しかし、20世紀が終わろうとしている今日、デモクラシーと政治的平等を促進させた上で、人びとに財とサービスを効率よく提供しそうな非市場経済を発見し、実施の可能性を信じる者らが現れてきている。この2世紀の間、社会主義者、経済計画プランナー、テクノクラート、その他多くの人びとが、市場経済に代わるもののビジョンを描き続けてきた。しかし、今ではそれらのビジョンは忘れ去られてしまった。したがって、市場経済には欠陥があるかもしれないが、21世紀のデモクラシー国家にとって、唯一の選択肢になるだろう。

そうは言っても、市場経済では、独裁者のように振る舞う経営者、企業の所有、その所有から得られる利益の不平等な配分など、市民の間の問題もある。そして、この不平等は、政治的資源の不平等拡大をもたらし、市民間の政治的平等性を害することにもなる。

市場経済はそれらの欠点があるにも関わらず、これに代わる選択肢として現れたものはほとんどが支持されなくなっている。労働党、社会党、社会民主党も、産業の国有化を目標にしなくなった。ユーゴスラビアは市場経済をとっていなかったが、ユーゴスラビア崩壊とともに完全に消滅した。

結論として、デモクラシーの目標と資本主義市場経済との緊張的な関係は、これからもなくなることはほぼありえない。政治的平等を害するマイナス面を減らしながら、プラス面を保持し続ける良い方法はないか。この答えによって、デモクラシーの性格と質が決定されることになろう。

CHALLENGE 2 : INTERNATIONALIZATION

国際化によって政治や行政の指導者たちが、なぜ民主的な統制を無視して自分たちの裁量を拡大する傾向になるのかはすでに述べてきたところである。9章ですでに指摘したが、デモクラシーの観点からいえば、意思決定が国際的なレベルに移るとき、デモクラシーを犠牲にすることがあるというのを考慮し、政治や行政の指導者たちの決定を説明可能なものにするための手段を強化しなければならない。しかし、これを行いうるのか、どうすれば行えるのか、ということは全く明らかではない。

CHALLENGE 3 : CULTURAL DIVERSITY

12章で述べたとおり、古くからのデモクラシー国家は、文化的同質性が高い国が多く、デモクラシーは発展し安定している。しかし、20世紀最後の10年間には、こうした国でも文化的多様性は増大してきている。

① 文化的なアイデンティティを求める運動の出現

例:有色人種、女性、同性愛者、イギリスに含まれているスコットランド人やウェールズ人、ケベックのフランス語を話す人々等の言語的マイノリティーまたはエスニックグループ

② 移住者の増加

例:貧困から逃れるために裕福な国への移住、自国内の脅威(暴力、抑圧、民族浄化、飢餓など)から逃れるための移住、内的要因(低賃金労働者の雇い入れ、難民の受け入れ)

文化的多様性と、それに伴う難問は21世紀になれば減少するどころか、増加するのではないかと思う。

これまで、デモクラシー国家が、常に、デモクラシーの方法や価値観と一致する形で文化的多様性を処理してきたとは言えないなか、将来うまくやっていけるだろうか。

12章とアペンディックスBの説明のとおり、さまざまな方法があるし、他の方法もあるかもしれない。いずれにせよ、デモクラシーの性格は、デモクラシー国家が自国に居住する人びとの文化的多様性にうまく対処するしくみを発展させられるかどうかとういう点に大きく左右される。

CHALLENGE 4 : CIVIC EDUCATION

デモクラシーがうまくいくには、市民の啓発された理解力が十分であるか否かによる。つまり、各市民が、採用できそうな政策、それが引き起こしそうな結果について知る機会を平等で効率的に確保できなければならない。

実際に、市民がどのようにして市民教育を受けているのか?

はじめに、市民の大部分が読み書きを十分にできるようになるまでformal educationを受ける。その後、広範でローコストなメディアによって、情報を手に入れ、政治についての理解を深めていく。そして、政党や候補者は、過去の実績やこれから行おうとすることを熱心に発信するので、情報としては入手しやすい。また、そもそも政党は有権者によく知られていてるのが通常であり、現在目指している方向や将来の予想について理解しやすい。

さらに、市民には、自らの特別な利害関係を保護し、促進するために組織した集団に加入している者も多い。このような利益団体をつくることで、資源や政治的スキルや専門知識を使うことができるならば、市民は政治の世界において大きな力を発揮することができる。政治家が政党公約を実施したり、努力したりする理由は、利益集団が影響力を行使し、政党や候補者が競い合うからである。

最後に、政府の重要な決定は、修正を加えながら成されるのが通常であるので、未知の世界に飛躍するものではないということを指摘しておく。修正を加えながら確実に進められていくので、すべてが台無しになるような失敗を回避することができる。市民も専門家も指導者も、過ちから学ばなければならないのである。付け加えながら試行錯誤を繰り返すことについては、不合理だとの批判もあるが、実は不確定性の高い世界に大きな変化をもたらす手法としてはかなり合理的な進め方である。民主的に制約された決定の手法を無視した権威主義的な支配者の決定は、明らかに20世紀最悪の不幸なものであった。

市民の能力を挙げる方法としては以上の方法が標準的なものである。欠点が多くあるが、将来も十分に機能する保証はないということを指摘したい。それは、次の三つの点が深刻な欠点になってしまうかもしれないからである。

① 規模の変化

国際化が進むことで各市民の生活が、きわめて大きな領域の中に住む、きわめて多数の人びとの動向によって影響を受けるようになってきている。

② 複雑さ

デモクラシー国家ではformal education の水準が上がってきているが、public affair が複雑化し、理解が難しくなってきてもいるので、教育が高度化しても追いつかなくなっている。(→専門知識、政策判断の不確実性、トレード・オフ)

③ コミュニケーション

20世紀に、社会的にも技術的にも、人類のコミュニケーションの枠組みは大きく変化した。 (→電話、ラジオ、テレビ、ファックス、双方向テレビ、インターネット、世論調査、特定の関心を頂く人びとの集団の出現)

これらのローコストなコミュニケーション手段によって、利用可能な情報が大きな量になってきている。しかし、情報が増大しているものの、政治的能力、政治的理解力を高めるものとはなっていない。つまり、規模、複雑さ、膨大な情報量は、市民に強い要求をしているのである。

こうしたことから、デモクラシー国家で緊急に必要なことは、市民が政治に関与できるように知的能力を向上させることである。21世紀にも役立つ手法やテクノロジーを創造的に利用し、市民教育、政治参加、情報伝達、審議などを新しくして、古い制度を向上させる必要があるということである。

新しいデモクラシー国家、古いデモクラシー国家、あるいはデモクラシーへの移行期にある国家は、これらの課題、そしてそれ以外の課題に、しっかりと立ち向かうだろうか?

もし、そうでなければ、デモクラシーの理念と現実との乖離は、ますます広がり、デモクラシーは悪化し、衰退するだろう。

20世紀を通して見ると、デモクラシー国家は、デモクラシーの危機だとか滅びるだとか言った批判を受けてきた。しかし、現在、死滅することはなかった。悲観主義者たちはデモクラシーに何とか見切りをつけようとしていただけだったのである。こうした中で分かったのは、民主的な制度が確立された国では、この制度は強固かつ柔軟性をも得るということである。デモクラシーというのは一度確立されれば、問題に直面した時には、立ち向かう力を発揮するのである。この力は完璧ではないかもしれないが、十分なものである。

もし、21世紀において、古い民主制が、課題に立ち向かい克服したのならば、真に進歩した民主制へ変わるだろう。この成功は、デモクラシーを信じる世界中の人びとにビーコンを提供してくれる。

Ch. 15
The Unfinished Journey
What lies ahead?
20th century -often appeared dark period for democracy
-Turned out to be an era of unparalleled triumph
Yet Democracy has been rare to human experience

Future is uncertain:
Will it be replaced by a non-democratic system? Guardianship in some form?
Will it continue its global expansion?
Will democracy become broader in reach and shallower in depth?

confidence to predict certain problems or challenges will remain, grow more daunting.

Nature and quality of democracy will depend on how well democratic citizens and leaders meet these challenges:

1. CHALLENGE 1: THE ECONOMIC ORDER

A. Market-capitalism unlikely to be displaced
1. labor/socialist parties abandoned nationalization as goal
communism collapsed
B. the “antagonistic cohabitation will persist

1) internal governments of capitalist firms are undemocratic, despotisms
profits distributed in highly unequal fashion
2) worker ownership and management “economic democracy?”
Only experiment ended with Yugoslavia
Trade Unions not pushing for internal democracy

2. CHALLENGE 2: INTERNATIONALISM
Internationalism, globalization likely to expand domain of decisions made by
political and bureaucratic elites

need is to find ways to hold bureaucratic elites accountable, and remember the
costs to democracy.

3. CHALLENGE 3: CULTURAL DIVERSITY
Moderate level of cultural homogeneity favorable to democracy
Older democracies dealt with diversity in undemocratic ways in the past.
Diversity seems likely to increase

A. Increasing Demands
Those who had been discriminated against joined movements of cultural
identity that sought to protect their rights and interests

Women, color, language minorities, immigrants, homosexuals, ethnic
minorities in historic regions

B. Immigration
from poorer countries to older democracies
business needs for cheap labor
impossibility of sealing off border

4. CHALLENGE 4: CIVIC EDUCATION
recall one basic criterion for democracy: enlightened understanding

A. How do citizens acquire civic education in older democracies?

1. Formal education
Dahl: for literacy
I add: direct socialization
indirect socialization

2. Mass Media
widespread info available cheaply
I add: What about infotainment, popular culture, cynicism and incivility?
does extra info lead to declining party Id?

2. Political Parties
competition between office seekers and parties
parties also as low cost voting cue
reduce need for much political information

4. Interest Groups
associations seeking particular concerns
special kind of representation
I’d add internal communication and mobilization

5. Incrementalism
step by step policy changes, rational in uncertain environment
How does this relate to civic education?

B. Three interrelated developments
likely to render these standard solutions deficient

1. Changes in Scale
internationalization
decisions are being made that cover more and more people over larger and
larger areas

2. Complexity
while formal education levels has risen
complexity of issues has increased even more

3. Communications
sheer amount of information available has increased
But may not lead to greater competence or understanding