学説判例研究~憲法~政党と選挙制度

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憲法学説判例研究

政党と選挙制度

トリーペルの4段階説

トリーペルは、議会と政党の歴史的関係を整理して、政党に対して国法は、① 敵視無視承認及び合法化という段階を経て、最終的には ④ 憲法編入という段階にいたるという説を唱えた。

わが国において、憲法には政党の地位に関する規定がないが、政治資金規正法と政党助成法に規定を有する。したがって、4段階中の3段階目にある。

政党助成法は違憲か

合憲論 ⇒ 政党を規制するのではなく助成するのだから違憲ではないと説明される。

違憲論 ⇒ ①政党の自立的存在や運営の阻害、②大政党のみの優遇、③政党の多様性の阻害、④憲法上の根拠無しの政党助成法の立法化、⑤国費の負担の範囲、⑥政党の国家依存度の助長と国民との関係の希薄化、⑦政党の官僚主義化、等を理由に違憲だと言う。

政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体として存在すること、政治助成法の趣旨が、各政党の財政難を税金の分配によって救済し、政治腐敗を防止することにあることを考え併せると、憲法21条の結社の自由を妨げない範囲において、同法は合憲と考えることが出来る

※「政党は国民の政治意思を形成するもっとも有力な媒体である」八幡製鉄事件上告審(最大判S.45.6.24)

政党と政治団体、政党と会派の違い

会派とは、国会の議院内で活動をともにする議員の団体(院内団体)である。
これに対し、政党は、議員外で活動をともにする議員および議員以外の者の団体(院外団体)である。

通常、各政党に所属する議員は国会内で政党毎に会派を結成する。しかし、会派は2人以上の議員によらなければ結成できず、しかも会派は、常任委員会・特別委員会等の各種委員の選任、会議・委員会等の質問等の基本単位となる(国会法46条1項)から、院内活動において大会派に対抗するため、無所属の議員や小政党が集まって統一会派を結成することもある。

除名処分と日本新党繰上補充事件

最一判H7.5.25

通常の除名処分では、政党に所属している議員は除名により党籍は失うが、議員資格は失わない日本新党繰上補充事件では、拘束名簿式比例代表選挙後の除名である点が問題となった。(参議院議員比例代表選挙で日本新党の候補者名簿に登載され、次点で落選した者が、選挙後政党から除名され、その後の同政党での2人の欠員に際し、次点者より下位の名簿搭載順位の者が繰上当選とされたため、その決定を争った。)

日本新党繰上補充事件 確認メモ
拘束名簿式比例代表選挙で、次点で落選 → 党から除名 → 次点で落選した選挙について欠員が発生 → 自分より下位の者が繰上当選とされた。

東京高裁 名簿登載者の選定は公的性質を有し、投票後の名簿登載者の除名は、名簿を考慮して投票した選挙人の意思を無視することになり、民主的かつ公正な適正手続によらない除名処分は無効である。

最高裁 政党の自律性を尊重し、除名処分の当否につき行政権や司法権は介入できないとして当該繰上当選の決定は有効である。

東京高裁は、拘束名簿式比例代表選挙に参加する政党がなす名簿搭載者の選定は公的性質を有し、選挙の最も重要な一部を構成するから、投票後の名簿搭載者の除名は、名簿を考慮して政党に投票した選挙人の意思を無視することになるとして、民主的かつ公正な適正手続によらない除名処分は無効であると判断した。

これに対し、最高裁は、政党は、憲法21 条1 項の「結社」にあたり、「自主性」を保障されているから、政党内の「自律的運営」としてなされた除名等の処分は、原則として政党の「自律的解決」にゆだねられている。したがって,「行政権」や司法権の「介入」は控えるべきだ、というと判断した。

いわゆる部分社会に関する最高裁の論理に従っても、「自律的解決」にゆだねられるのは、「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り」(富山大学事件、最判S52・3・15)においてであるが、本件は無関係ではない。憲法は、公務員の「選定」を「国民固有の権利」(15 条1 項)とし、国会議員を国民により「選挙された議員」である(43 条1 項)としている。
したがって、憲法は国民が直接議員を選ぶことを当然の前提としており、比例代表制が政党本位の選挙であるといっても、選挙の対象は候補者個人であると考えるべきである。拘束名簿式では、政党の定めた順位を国民が承知した上で投票するから、直接選挙という憲法上の要請が満たされるが、選挙後、政党が除名によって自由にその繰上補充の対象者を変えうるのであれば、議員を国民ではなく政党が選ぶ結果となってしまい、憲法上の要請に反し許されないというべきである。

普通選挙と平等選挙の違い

普通選挙とは、「納税又は財産の所有を選挙権の要件としていない選挙」である。「さらに教育や信仰、性別などを選挙権の要件としない選挙までも含めて普通選挙という場合もある」(法律学小辞典、1999,p.996)。制限選挙に対する概念である。狭い意味では、日本では1925年に普通選挙になり、25歳以上の男子に選挙権が与えられた。広い意味では、20歳以上の男女の普通選挙は、1945年になって初めて認められるようになった。日本国憲法では、15条3項、44条で普通選挙の原則を保障している。

平等選挙とは、「各選挙人の選挙権の価値が平等である選挙制度」(法律学小辞典、1999,p.975)である。不平等選挙に対する概念である。現在は選挙権の数的平等の原則のみならず、投票の価値的平等の要請をも含むものと解されるようになっている。普通選挙と平等選挙の違いとして、普通選挙は選挙権の要件・資格を問題にしているのに対して、平等選挙は、選挙権の価値の平等を問題にしているという点で異なるといえる。しかしながら、前述のように1925年に日本でも普通選挙は実施されているが、女性は除外されていた。このように普通選挙といわれるものでも選挙権の不平等は存在する。平等選挙の範囲を広く捉えると、普通選挙と平等選挙というのは異なる概念のようで実は重なる部分があるのではないだろうか。また、これらの概念は、時代や国、あるいは地域社会の価値感によって捉え方が違ってくる概念であるといえる。

衆議院の選挙制度の経過

戦後の衆議院の選挙制度は、中選挙区といわれ各都道府県を区割りし、定員を3~5人に設定した。死票が少なく比例代表制に近い長所があった。反面、同一政党から複数候補の立候補が可能で、競争激化をもたらし、派閥政治、金権政治につながった。
そこで1994年に300人の小選挙区と200人の比例代表制との並立制が導入された。その後、2000年の法改正で比例代表は180人になった。

小選挙区制と比例代表制の長所短所

一般的に小選挙区制の長所は①有権者が候補者の人物をよく知ることができる。②選挙区が狭いため選挙費用を節約できる。③2大政党化を促進し選挙区を安定できる、といわれている。これに対して、短所は①候補者の選択幅が少なく、投票が死票になる。②競争が激しく、買収等の腐敗選挙が起こりやすい。③議員が地域的利益代表になりやすい。

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