学説判例研究~会社法~レジュメ~設立

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会社法学説判例研究

設立

1.発起設立と募集設立

募集設立は、発起人以外の株式引受人には発起人を監視する意志や能力に欠ける場合があり、投資公衆の保護のため、発起設立よりも厳格な手続が必要とされている
ex.払込金の保管証明(64条)、創立総会の招集(65条1項)、発起人の責任(103条・52条2項)
そのため、公衆の投資を募るのであれば設立後に新株の発行をすればよいのもあって、募集設立はほとんど行われず発起設立がほとんどとなっていると考えられる。また、発起設立と比べ日数が多くかかることも一因か。
募集設立が制度として残されているのは、出資者の中に発起人としての責任を負うことを避けたい者がいたり外国法人が出資者となる場合に発起人としての必要書類をそろえることが面倒な場合があったりする場合に活用できると考えられたためである。

募集設立は、手間・コストがかかる。発起設立は、発起人のみが設立時株式を引き受けるので、仲間内のみで終わる。募集設立は、募集をしなければならない、創立総会も開かなければならない(払込取扱機関に対する手数料、創立総会の費用の発生)。→定款に記載することなく設立後の会社に帰属させることができる→これによって募集設立は敬遠されている。
改正前商法では、発起設立と募集設立では、この点では違いがなかった→募集設立のほうがむしろ多かった[一人会社を容認する関係上、発起設立の手続が簡略化された]。

にもかかわらず、募集設立が存置されたのは、実務界からの要請→発起人としての責任を負いたくはないが、設立について一定の関与はしたいというニーズがある。
※外国企業が出資者となる場合に、発起人になるには事務処理が煩雑である。

2.変態設立事項

変態設立事項とは、現物出資、財産引受け、発起人の報酬・特別利益、設立費用について、会社財産の形成を妨げるおそれの高い行為であることから、28条で定款記載を要求されている事項のことをいう。
現物出資、財産引受けは、目的物を過大に評価することによって不当に多くの株式が与えられると株主間の公平を害し、会社債権者に損害を与えることになるおそれがある。
発起人の報酬・特別利益、設立費用については、過剰報酬や濫費を防ぐため。

変態設立事項
28条により規制されている事項、相対的定款記載事項

会社の財産的基盤が害されないようにするために規制されている
現物出資→当該現物出資財産の過大評価、株式の有利発行と同様の状況が生じる
資本金=払込金額の総額
二分の一以下を資本に組み入れないこともできる→資本準備金

3.財産引受け

財産引受けとは、発起人が会社のため、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約のことをいう。開業準備行為の一種であり、法によって例外的に認められている。
開業準備行為とは、会社が事業を始める準備として行う行為をいう。例えば土地・建物と購入ないし賃借契約など。

財産引受け→発起人が会社の為、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約の事をいう。
開業準備行為:商人が、営業開始前の段階で、営業を開始するために必要な行為(広義)
→発起人が、会社が成立後すぐに事業を開始することができるようにするために行う行為
個人商人と会社の場合には、開業準備行為の論点が異なる
商法4条 → 商人=自己の名をもって商行為をすることを業とする者
→ここでいう商行為=基本的商行為=絶対的商行為(商501)+営業的商行為(商502)
開業準備行為は営業行為と密接に関連しているのであるから、その時点で商人資格を得ていないとして商法が不適用・民法が適用されるのは、不合理である(ex.法定利率)
→開業準備行為のどの段階で商人資格を得るのかという論点
商法と会社法では論点が異なる

4.現物出資と財産引受け

現物出資とは金銭以外の財産による「出資」であり、財産引受けは財産を譲り受ける契約である点で相違する。

現物出資→出資契約。対価は株式。株主となる権利を得る契約。出資されなければ設立無効事由となることもありうる。
財産引受け→取引契約。発起人が第三者との間で行う売買・賃貸・交換。対価は金銭。

発起人が一株も引き受けられない(出資できない)場合
発起人は27条により絶対的定款記載事項、30条2項により定款の変更ができない、
したがって25条2項に違反するので、設立無効となる
また、発行可能株式総数の4倍規制があるが、この場合の変更は可能

発起人が定められた出資額の一部のみ出資した場合
定款に最低出資金額が定められており、それに満たないことになるならば設立無効
→定款の作成をやり直す必要がある(法律上は会社の設立を最初からやり直すことになる)

5.財産引受けと事後設立

財産引受けは会社の成立を条件として会社成立前に結ばれる、財産を譲り受ける契約であるが、事後設立は会社成立後2年間に行われる多額の財産の譲り受けのことをいう。
どちらも財産の譲り受けだが、契約締結時が異なる。

事後設立:会社成立後2年以内で行われる、会社成立前に存在した財産を譲り受ける契約。
検査役の調査も必要とする規制も考えられたが、例えば不動産会社や投資ファンドは事業開始時にこの規制がかかり調査に時間がとられることで事実上事業が開始できないことになるおそれから、調査は不要とされた。
現物出資の脱法行為として財産引受け、財産引受けの脱法行為として事後設立
しかし、事後設立の規制は緩和されている。

6.設立中の会社、発起人組合

設立の登記前であればいまだ法人格を有しておらず権利能力を持たない。しかし、発起人が会社設立の過程で取得・負担した権利義務は会社成立後に当該会社に帰属させるべきである。これを理論づけるために、権利義務は形式的には発起人に帰属するが、実質的には設立中の会社に帰属し、設立中の会社と成立後の会社は同一性を有する存在であるから、当該権利義務は会社成立後に会社に帰属すると説明する。設立中の会社はこの説明のための概念。
発起人組合は、発起人が複数いる場合に、会社設立を目的とする発起人組合という組合が形成されたとみる。そして、発起人の権限外であるが発起人組合の目的の範囲内であると解される行為の効力を発起人組合に帰属させるとする。この場合には発起人全員に対して責任を負わせることができる。

設立中の会社は、定款が作成され発起人が一株以上引き受けたときに成立する(判例・通説)。
発起人は、設立中の会社の機関(執行機関)として行動する。
設立中の会社とは、発起人がその権限の範囲内で行った法律行為の効力を成立後の会社に何らの移転手続もなく帰属することを説明するための法技術的概念。設立中の会社は権利能力を持たないので、発起人の法律行為の効力を当然に会社に帰属させることができない。
設立中の会社と成立後の会社は、同一性を持つから、何らの移転手続きもなく権利義務関係が引き継がれると説明する。

発起人組合とは、発起人が複数いる場合に、会社の設立を目的として発起人間で形成される民法上の組合。発起人組合が存在する場合、発起人の行為は、発起人の執行機関としての行為であると同時に発起人組合の組合契約の履行行為でもある。

7.発起人の開業準備行為

発起人は開業準備行為を行うことができない。発起人の権限は、会社の設立に関する行為に限定されるのであって、開業準備行為はそれに含まれないからである。この場合には、無権代理と類似した状況にあることから、民法117条1項を類推適用し、発起人が責任を負うことになる。

発起人が開業準備行為を為した場合、発起人の権限外であることから、会社には帰属しない。判例は、発起人が代表取締役と称して開業準備行為をなした場合、本人が存在していない以上民法117条1項を直接適用できないが、類似することから発起人の責任を認めるとする。 発起人が代表取締役と称さなかった場合この理由づけで発起人の責任を認められるかは検討すべき。

8.発起人組合の開業準備行為・営業行為

開業準備行為・営業行為は発起人の権限の範囲外の行為であるが、当該行為が発起人組合の目的の範囲内であれば、その効力は発起人組合に帰属することになる。

発起人組合に開業準備行為や営業行為を行う旨の合意があるならば開業準備行為・営業行為ができ、責任は発起人組合が負う(民法上、分割債務)。

9.設立費用

設立費用が会社成立までに支払われなかった場合、定款記載額の範囲内であれば設立費用の債権者は会社に対してのみ請求でき、発起人に対しては請求できない。範囲外の部分については発起人に対して請求する事になる。

原始定款に記載があれば、設立費用は成立後の会社に帰属する。
設立費用とは、会社の設立のために株式会社が必要とする費用。
原始定款に記載がなくとも、会社に帰属させることのできる費用もある。
→定款の認証手数料、定款に係る印紙税、検査役に対する報酬、登録免許税、払込取扱機関に支払う報酬(28条4号括弧書き及び会社規則5条)
∵金額が確定しており、会社に損害を与えるおそれがない。これらは会社の設立を直接目的とする行為から生じる費用。
設立費用については、定款には総額を記載するのが多い。費用項目ごとに記載されていない場合に、定款記載総額以上に設立費用がかかり、かつ設立までに支払われていない場合、問題となる。

10.見せ金、預合い

預合いとは、発起人が払込取扱機関の役職員と通謀し、払込取扱機関から借り入れをしてそれを払込みに充てるが、借り入れを返済するまでは引き出さないという不返還の合意をする行為をいう。
見せ金とは、発起人が払込取扱機関外の者から借りた金銭を株式の払込みに充て、会社の成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てることをいう。
どちらも仮装の払込みの形態であって、会社財産の形成を阻害する行為であって会社債権者を害することになることから規制が必要であるといえる。

見せ金は、一個一個の行為はそれ自体ではすべて適法な行為。
一連の行為としてとらえると、問題が生じる。
したがって、見せ金となるかどうかについて、判例は基準を策定している。
会社成立後借入金を返済するまでの期間の長短、引き出された金銭の会社の財産状態に与える影響の有無、引き出された金銭が会社資金として運用された事実の有無で判断する。

見せ金は払込取扱銀行以外の第三者から借り入れをすると定義づけられるが、同一銀行のA支店から借り入れB支店に払い込んだとした場合、預合いの場合は通謀が必要であり、預合いは刑罰法規であるから、類推適用はできない。
他支店であっても仮装払込みであることに違いはない。見せ金の定義がややこしくなるので、仮装払込みであって見せ金類似の行為であるからといってしまえば足りる。

刑法上、見せ金により登記した場合には公正証書原本不実記載罪に該当するが、刑法上違法であるからといって私法上も当然に無効というわけではない。
旧商法には引受け担保責任、払込み担保責任の規定があったが、会社法では削除された。これは、会社法が打ち切り発行(引受人に払い込みをしない者がいた場合には、その引受人が失権するにとどまり、他の引受人との間では株式発行が有効であるとする)を認めたから。だとすれば、払込み担保責任の規定がないのだから、会社財産を確保するためには見せ金も有効であるとすべきであるという有力説もある(見せ金有効説)。通説は見せ金無効説。判例もおそらく無効説をとると思われる。

見せ金による払込みが無効であったとしても、設立の無効をきたすわけではないことに注意。例えば、発起人が引受け株式をすべて見せ金で払い込んで引き受けたとするならば設立無効事由になるが、一部のみ見せ金で払い込んでいるならば、1株以上引き受けているのだから発起人の資格の問題で設立無効事由とはならない。設立時の最低出資金額を下回れば設立無効となるが、そうでないなら見せ金があったとしても設立が無効になることはない。