問題解答例~リーガルクエスト憲法2-9章

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憲法リークエ問題解答

人身の自由

問題1

強制処分法定主義と令状主義とは、どのような関係にあるとかんがえられるだろうか。憲法上どのようにいちづけられるだろうか。

31条の解釈について、文言から明らかな科刑手続の法定に加えて、手続の適正、実体の法定、実体の適正のうちどこまでであるか争われている。学説には、手続法定説、手続×(法定+適正)説、(手続+実体)×法定説、手続×(法定+適正)+実体法定説、手続×(法定+適正)+実体法定説、手続×(法定+適正)+実体×(法定+適正)説がある(リークエ291頁)。

この捉え方に応じて、手続の適正を要請する令状主義との関係が定められる。

上口59-60頁

「令状主義には法定主義を手続的に担保する意義がある。」そして、「令状主義も法定主義に制約され」る。

問題2

2000年より「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(通信傍受法)施行されている。憲法35条は「捜査する場所及び押収する物を明示する令状」を要求しているが、通信傍受法が定める傍受令状はこの要件を満たしていると言えるだろうか。また、通信傍受法14条は「警察官又は司法警察員は、傍受の実施をしている間に傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の犯罪であって、別表に掲げるもの又は死刑若しくは無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁固に当たるものを実行したこと、実行していること又は実行することを内容とするものと明らかに認められる通信が行われたときは、当該通信の傍受をすうことができる。」と定めて、一定の範囲で無令状の通信傍受を認めているが(なお、通信傍受法21条)、憲法35条との関係でどのように捉えられるだろうか。さらに、憲法31条の観点からも通信傍受法について検討しなさい。

通信傍受とは、「現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これをうけること」(通信傍受2条2項)をいう。

通信の秘密は憲法21条2項、会話の秘密は憲法13条によって保護される法益であり、通信傍受は、プライヴァシー権を侵害する強制処分である(上口162頁)。

通信傍受の要件としては、犯罪の嫌疑、犯罪関連通信の蓋然性、補充制がある(通信傍受法3条1項)。

犯罪の嫌疑とは、対象犯罪(別表に掲げる薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密行にかんする罪、組織的殺人の罪)が行われたと疑うに足りる十分な理由がある場合(通信傍受法3条1項1号)を言う。このほか、通信傍受法3条1項2号、同項3号では、対象犯罪または一定の重罪が行われたことを要件として、将来犯罪に関する傍受を定めている。

犯罪関連通信の蓋然性とは、3条1項各号の犯罪の「実行、準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信が行われると疑うに足りる状況」があることをいう。

補充性とは、「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難である」ことをいう。

以上の要件をもとに、傍受令状の請求権者(検事総長の指定する検事、司法警察員)から令状請求を受けた地方裁判所の裁判官は理由があるか判断し審査し(通信傍受法4条1項)、理由があるときは10日以内の期間を定めて傍受令状を発付する(通信傍受法5条1項)。

令状には、「被疑者の氏名」、「被疑事実の要旨」、「罪名、罰条」、「傍受すべき通信」、「傍受の実施とすべき通信手段」、「傍受の実施の方法及び場所」、「傍受ができる期間」、「傍受の実施に関する条件」、「有効期間」などが記載される(通信傍受法6条)。

傍受の形態について、①令状記載の「傍受すべき通信」について行う令状記載傍受(通信傍受法6条)、②令状記載の傍受すべき通信に該当するかどうか不明の通信について、該当性判断のために行う傍受(通信傍受法13条1項、スポット傍受)、③外国語・暗号などによる通信で、傍受の時に該当性を判断できない通信を全部傍受する外国語等傍受(通信傍受法13条2項)、④傍受の実施中に行われた令状記載の被疑事実以外の犯罪の実行に関する通信を傍受する他犯罪傍受(通信傍受法14条)がある。

まず、通信傍受令状の問題として、将来犯罪に関するものが憲法35条の要請する犯罪の特定性を満たすか問題となる。(この点に関して、刑事訴訟法学では、そもそも将来犯罪の捜査は、捜査概念に当てはまらないとの指摘がなされている(田口107-108頁))

次に、他犯罪傍受は、一応、犯罪の重大性による絞りがあり、事後的な司法審査の定め(通信傍受法21条2項)があるので、緊急逮捕の法理が類推されていると解されているが、要件と手続の不備が問題視されている(上口168頁)。

要件については、対象犯罪および「数人の共謀による」という限定がはずされ、将来犯罪にかかわる通信の傍受が過去犯罪と無関係に許される点で、広範な無令状傍受が可能となっている点について問題とされる。そこで、犯罪実行の明白性(犯罪の実行自体にかかわる、「明らかに認められる」という要件)の認定を厳格にする解釈がなされている(上口は、自白による緊急逮捕の議論をあてはめる)。

しかし、明白性の要件が法の文言から明らかではない以上、憲法31条のいう手続の法定さらに手続の適正が果たされているとは評価できない。

また、令状主義(憲法35条)との関係で、緊急逮捕の場合は逮捕後に令状請求手続が法定されているが、他犯罪傍受の場合はこれが予定されておらず、令状主義を補完する手続きを欠いている。この点から、憲法35条の趣旨にも反する法であると評価できる。

問題3

出入国管理及び難民認定法によれば、入国警備官は、退去強制事由(24条)に「該当すると思料する外国人があるとき」は違反調査をし(27条)、退去強制事由に該当すると「疑うに足りる相当の理由があるとき」はそのものを収容することができる(39条)。収容にあたっては、入国警備官は、その所属する入国者収容所または地方入国管理局の主任審査官(入国審査官のうち、法務大臣が指定する上級者)に請求して収容令書の発布を受けなければならない。収容された外国人は入国審査官に引き渡され、強制退去事由に該当するかの審査を受けることになる。

 ここでは、事前に司法が発する令状に基づかない身体的拘束が認められているが、憲法33条にしないだろうか、また、もし法が発する令状を必要としないと考えるならば、実質的に考えて、それは当該手続が33条の予定する刑事手続とどのような点で異なるか。

 他方で、司法が発する令状は必要とされていないが、入国審査官が発布する収容令状を必要としている。このような手続はなぜ求められているのがろうか。このように手続保障を緩和しても憲法に違反しないだろうか。また、逆に、しばしば入国審査官の中立性について問題が指摘されるが、憲法はより中立的な収容令状発布手続を要求していると考えるべきであろうか。

最決昭和49年4月30日

上告人は「出入国管理令三九条、四三条所定の収容手続が司法官憲の令状なく身体の拘束を定めているものとして憲法三三条違反をいうが、原判決及びその維持する第一審判決の確定する事実によると、入国警備官の本件収容行為は、被収容者が同令二四条二号所定の強制退去事由に該当する外国人として現認されている状況のもとで、しかも、収容令書の発付をまっていては逃亡の虞があると信ずるに足りる相当の理由があるものとして、執行されたものであつて、同令所定の収容が憲法三三条にいう逮捕に当たるか否かは別として、現行犯逮捕又はこれに類するものとして、司法官憲の令状を要しないことが明らかであるから、結局、所論は、被告人の本件行為の違法性の判断に影響がない事項に関する違憲の主張に帰し、上告適法の理由に当たらない。」

最高裁の理論によると、現行犯逮捕に類似するために令状が不要だという。

しかし、現行犯逮捕は、実行行為を現認するなど嫌疑が明白である場合に認められるが、入管法違反については外観だけでは分からず、審査が必要となるから、現行犯逮捕に類似するとはいえない。

そして、身体の拘束という重大な利益にかかわるため、憲法33条の保障の範囲内にあり、手続保障を緩和することは許されないと考える。

憲法33条は中立的な立場にある司法機関の審査を受けることを要請しているから、少なくとも、司法機関と同じように中立的な立場からの審査が保障されていなければならない。この点、入国審査官は、法務省職員に命じられる職であり、行政職員であるから中立性を欠いていて妥当ではない。

引用・参考文献 

リーガルクエスト憲法Ⅱ、第9章

上口裕『刑事訴訟法<2版>』成文堂、2011年

田口『刑事訴訟法<第4版補正版>』弘文堂、2007年

芦部信喜『憲法<第5版>』岩波書店、2011年