学説判例研究~民法~レジュメ~債権の目的

学説判例研究~民法~レジュメ~債権の目的

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民法学説判例研究

債権の目的

●債権の目的(債権の内容)は,請求の対象(客体)である債務者のなすべき一定の行為をいう。

●債権の目的と債権の目的物は区別されなければならない。債権の目的物は,債務者のなすべき行為が物の引渡行為である場合におけるその引き渡すべき物をいう。民法典も,条文上債権の目的と債権の目的物を区別している(例えば402条1項本文とただし書)。

債権の発生原因

<民法典第3編「債権」の第2章以下の各章で規定されている>

●法律行為
・債権は,法律行為とくに契約によって発生する。
・契約によって発生する債権(約定債権)の内容は契約の解釈によって定まる。

●法律の規定
・債権は,法律の規定によっても発生する。不法行為(709条以下)による損害賠償請求権(債権)や,事務管理(697条以下)や不当利得(703条以下)による債権。
・法律の規定によって発生する債権(法定債権)の内容は,法律の規定の解釈によって定まる。

契約関係にはないが,一定の社会的接触関係にある者の間で信義則上の義務が発生し,それに違反した場合に,損害賠償請求権が発生することがある。例えば,国と公務員のような契約関係にない者の間でも,一方が他方の安全を配慮すべき義務(安全配慮義務)が認められ,この義務に違反した場合には損害賠償義務が肯定され(最判昭50・2・25民集29巻2号143頁),また,契約の交渉を開始した後に,その交渉を一方的に破棄した者に対して,「契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任」が肯定されることがある(最判昭59・9・18判時1137号51頁)。

債権の目的の要件

●債権が有効に発生するためには,債権の目的である給付(債権の内容)が一定の要件を満たしていることが必要。①給付の適法性,②実現可能性,③特定性の3つ。

(1) 給付の適法性
給付の内容は法律上適法であり,社会的に妥当なものでなければならない。
(2) 給付の実現可能性
給付の内容は,実現可能なものでなければならない。

不能態様
①原始的不能・後発的不能
・原始的不能:法律行為時に既に給付が実現不可能であること
・後発的不能:法律行為後に給付が実現不可能になること
②客観的不能・主観的不能
・客観的不能:すべての人にとって給付の実現が不可能なこと
・主観的不能:当該債務者にとって給付の実現が不可能なこと
③全部不能・一部不能
・全部不能:給付の全部が実現不可能な場合
・一部不能:給付の一部だけが実現不可能な場合

(3) 給付の確定性
給付の内容は,確定していなければならない。(給付の内容が確定していなければ,債務者はどのような給付をすべきか判断できないし,裁判所も債権の強制的実現に助力できないから。)
※給付の内容は契約成立時に確定している必要はなく,後に何らかの方法で確定できればよい。民法の中にはそのための補充規定が設けられている(401条・406条・416条・417条など)。
(4) 給付の経済的価値
給付の内容が金銭的価値のないものであっても,債権の目的にすることができる(399条)。法律上保護を受けるに値するものであれば,金銭的価値を有しないものでも債権の目的になることができる。このような債権であっても,任意に履行されないときには,裁判所によって強制的に実現できるし(414条),また,被った損害を金銭に評価して賠償の支払いを命じることができるからである(417条)。

●債権が契約によって生じる場合には,契約に応じて債権の内容は様々であるので,これらの要件の充足を検討する必要性が出てくる。

●債権が事務管理・不当利得・不法行為によって生じる場合には,通常は金銭債権であるので,これらの要件の充足はとくに問題にならない。