学説判例研究~商法~外観主義(権利外観法理)

学説判例研究~商法~外観主義(権利外観法理)

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商法レジュメ

外観主義 権利外観法理

外観主義とは

真実に反する外観が存在する場合に、その外観を作り出した者は、これを信頼した者に対して責任を負わなければならないとの考え。

具体例

不実登記による責任

参考文献:弥永29頁、Sシリーズ116頁、双書57頁、近藤49頁、服部55頁。

不実登記は、ある事実があって、これを登記して公示するもの。

→ 本来、真実以外のことを登記してものなんの効果も発生しないはず。
※言い換えれば、「本来、登記事項は、真実であるとの事実上の推定力を有するに過ぎず、法律上の推定力を有する物ではない。」

→ しかし、登記官は形式的審査権しか有さないので、事実でなくても登記される危険性は高い。さらに第三者は登記事項を信頼する蓋然性が高い。

→ このような第三者が、登記が不実であることを知らないために不測の損害を被ることを無視することは適当ではなく、保護しなければ登記制度全体の信頼が損なわれることにもなりかねない。一方でこのような不実登記を行った者に何の制裁もないのは適当でない

英米法の禁反言の法理(一度した表示に反する主張は許されない)あるいはドイツ法の外観法理に基づいて不実の登記を信頼した第三者を保護したのが、商法9条2項。

会社の登記については、会社法908条2項が、9条2項と同趣旨を定めている。

これを、商業登記の公信力という。

参考:「一般公衆は登記を信頼することができ」なくなってしまい「いちいち事実の探索をしなければならず、取引の迅速・安全を害する」。「そこで商法は、登記を信頼した者の保護のために登記申請者の利益をも考慮に入れつつ、故意または過失により不実の事項を登記した者は、その事項が真実に反することを善意の第三者に対抗できないものとされた(9Ⅱ、会社908)」(弥永リーガルマインド29頁)

【要件】

①故意または過失による不実の登記
(不実を知り、または不注意で知らずに登記したこと。)
②第三者の善意
(過失の有無は問わない。)

【責任主体】

不実の登記をした者=登記申請者

登記申請者でなくても、当該登記につき承諾を与えたものについては、類推適用により責任が認められる場合がある。

●不実の登記の放置
不実の登記を放置した場合においても、その不実の登記の残存に明示的な承諾を与えていたなどの特段の事情があれば、14条類推により責任を負うこととなる(最判昭和62.4.16)。

●退任取締役の登記の残存
退任した取締役の登記が残存している場合については、退任した旨の登記をしていないのなら、登記及び広告の効力の問題とすることもできるし、現在、未だに退任した者の登記を放置しているという点では、不実の登記ということもできる。

名板貸人の責任

参考文献:弥永41頁、Sシリーズ67頁、双書72頁、近藤62頁、服部43頁、百選34頁。

名板貸とは、自己の商号を使用して営業を成すことを他人に許諾することをいう。(商号選定の自由の原則から、名板貸も原則自由と解される。)

名板貸人は、自己を営業主であると誤信して取引した相手方に対して、その取引により生じた債務につき名義借受人と連帯して弁済責任を負う(14条。会社9条)。

理由:名板貸が行われた場合、一般公衆は名板貸人が営業主であると過信することになるので、そのような信頼を保護する必要がある。

「禁反言(一度した表示に反する主張は許されない)または外観法理のあらわれの1つである」(弥永41頁)

判例:最判昭和43.6.13(百選16事件)

表見支配人

弥永76頁、Sシリーズ97頁、双書105頁

ある者が支配人か否かは、その物が営業に関する包括的代理権を有するか否かにより決定される(実質説)。→支店長など通常支配人に付される名称を使用している者でも、包括的代理権を有していなければ支配人ではない。

取引の相手方は、支店長などの名称が付されていれば、その物に包括的代理権があると信じて取引してしまうこともあり得る。

この信頼を保護するために、「営業の主任者であることを示す名称」を付した使用人については、支配人と同一の権限を有するものとみなす(24条)

表見代表取締役(会社法の領域で問題となる)

参考:会社法リーガルクエスト178頁、弥永会社法170頁

代表権のない取締役に会社が、社長や副社長その他会社の代表権を有すると認められる名称を付した場合には、その取締役のした行為は、本来は、会社には帰属しないはずであるが、会社は善意の第三者に対して責任を負う(会社354条)。

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